男性死神協会の悲劇
七緒の霊圧がじわじわと上昇する。
そして、戦闘モードに入った。
「使わせてもらいますッ!!!破道の三十一!赤火砲!!!」
「うわあ!?」
七緒の放った鬼道は檜佐木と恋次の足元に直撃し、二人を吹き飛ばした。
ブースに空間ができる。
「乱菊さん、今のうちに荷物を!」
「ええ、わかったわ!」
隙を見て乱菊は自分たちの荷物のもとへ向かった。
乱菊は、荷物の取っ手を掴み持ち上げようとした。
「!?どうして……」
荷物が重すぎて持ち上がらない。
(おかしい……荷物を詰めたときは確かに持てたのに……)
すると、後ろから声がした。
「その荷物、最早あなたの力じゃ運べませんよ。」
「……ッ!吉良!」
吉良は始解していた。よく見ると、乱菊たちの荷物には小さな傷がついていた。
乱菊が吠える。
「ちょっと!こんなの卑怯よ!」
「先に手を上げたのはそちらです。射場さん!」
吉良は、七緒の攻撃で壊れた壁のガレキを無造作に放り上げると、『侘助』をバットのように振り回してガレキを射場へ撃った。
「おうよ!」
射場はそのガレキの方向を微妙に変えて乱菊に攻撃した。
「松本!悪く思わんでくれ!これも男性死神協会のためなんじゃあ!!」
「くっ……こうなったらもう容赦しないわ!『唸れ、灰猫!』」
乱菊は始解すると、『灰猫』に自分のまわりを周回させて防御した。
「はあっ!」
そしてその勢いを保ったまま射場に襲いかかる。
「ぐわあああ!」
「射場さん!」
射場は吹っ飛ばされた。
あとには吉良と乱菊が残る。
「久しぶりね、この感じ……」
「……」
吉良は『侘助』を握り直した。
一方、初めの攻撃で吹っ飛ばされた檜佐木と恋次はそのまま七緒と『交戦』していた。
「くそっ……!」
「うわあ!?」
二人は七緒の連続攻撃になす術もなく逃げ回りながら反撃の機会を伺っていた。
すると---
「きゃあ!!」
七緒のもとに、乱菊の攻撃を受けて吹っ飛ばされた射場が落ちてきた。
すかさず檜佐木が動いた。
「よし、今のうちに……!」
「ッ!させません!」
七緒が鬼道を撃つ。
しかし、射場が邪魔で狙いが大きく逸れた。
「きゃあ!!」
七緒の放った鬼道は乱菊にあたった。
そして、吹っ飛ばされた乱菊は宙を舞い---
「うわっ!?」
荷物の元へ駆けていた檜佐木の上に落ちた。
檜佐木は慌てて乱菊をキャッチしたが、
「大丈夫ですか、乱菊さ……ッ!?!?」
乱菊のはだけた死覇装姿を見るや否や昏倒した。
「ったーい……ちょっと七緒!?」
「すみません!狙いが逸れて……っていうか、お互い様でしょう!?」
二人は言い合いながら、それぞれ障害となっている檜佐木と射場を踏みつけて立ち上がった。
「まあいいわ。七緒、いくわよ!」
「はい!」
そして再び攻撃が始まった。
圧倒的な差に吉良と恋次は苦戦を強いられた。
二人で逃げながら吉良が呟く。
「くっ……!射場さんも檜佐木さんも戦闘不能……卑怯だぞ!」
「いや、射場さんはともかく、檜佐木さんは自爆しただけじゃねえか?」
「それは……ッ!後ろだッ!」
「うおお!?」
恋次のすぐ横を乱菊の灰猫が掠め、恋次の死覇装を破った。
「くそっ!あんまりこういうの好きじゃねえが、もう加減してらんねえ!『吠えろ、蛇尾丸!』」
恋次は始解すると『蛇尾丸』を大きく振り回した。
「くっ……!」
その守備範囲の広さに二人はなかなか近づくことができない。
「よし!吉良、今のうちに行け!」
「わかった!」
吉良が走り出した。その間も恋次は振り続けている。
すると、恋次の『蛇尾丸』が女性死神協会側の荷物のひとつを捉え、まっぷたつに引き裂いた。中身が散乱する。
「わっ、バカッ……!」
「あ……!!!」
恋次には、乱菊と七緒の声が異様なほどクリアに聞こえた。
荷物の中身--それは、砕蜂自作の『黒猫ぬいぐるみ』だった。
恋次の攻撃によって無惨に引き裂かれたぬいぐるみが砕蜂の足元に転がった。
今まで無関心だった砕蜂の様子が変わっていく。
どす黒い殺気が辺りを覆いつくした。
「貴様……許さん!!」
砕蜂の霊圧が跳ね上がる。
最早、逃げ場など無かった。
『卍解--雀蜂雷公鞭--!!!』
凄まじい爆発と爆風が起こり、辺り一面の景色を変え、すべてが灰と化した。
-報告-
・立冬祭ハ『負傷者多数』及ビ『会場不全』ノ為、中止トス。
・全責任ハ、七番隊副隊長、射場鉄左衛門ガ負フモノトス。
立冬祭実行委員会 会長 卯ノ花烈
-end-