闇を紡ぐ雨
出逢ったときから、あなただけを見つめて来たんだ。
あなたさえ、こうしてぼくの腕の中にいてくれれば、他にはもう、なにもいらない。
だから、いいんだよ。
引き寄せられるように、どちらからともなく、唇を重ねる。触れ合った瞬間、たまらなくなって、ぼくは、小さな頭を掻き抱く。
白い喉が、切なそうにのけ反った。
肩に縋り付いた華奢な手が、密やかに腕を辿って床に落ちる。
瑠璃さん、瑠璃さん・・・
やっと、あなたに辿り着いたよ。
やっと・・・・
・・・水面に融けた薄布をそっと拾い上げるように、ゆっくりと唇を離す。
目の前の、月の雫のようにきらめく瞳に、目が離せない。
ぼくはもう一度、深く口づけると、名残惜しさを断ち切って、瑠璃さんを抱き上げた。
「-行こう」
耳元でそっと囁くと、ぎゅうっ、と、瑠璃さんはぼくの首にしがみついた。
「-後悔なんかしたら、承知しないわよ」
言葉とは裏腹に、どこか心細そうな声が夜の闇に零れ落ちる。
気が強いわりに、臆病だね、瑠璃さん。
「瑠璃さんこそ」
ぼくたちは、そっと目交ぜをして、密やかに笑い合った。
瑠璃さんは、ぼくの首筋に腕を回したまま、切ないほどに白い頬を寄せた。
ぼくは、もう一度、瑠璃さんを抱く腕に力を込めると、そっと妻戸を抜け出し、部屋を後にした――
※原作二巻の青蓮華寺での高彬を見て、完全に鷹男から瑠璃を奪う覚悟を決めているな、と改めて思いました。
そこで、「もし、あのタイミングで本当に瑠璃をさらいに行っていたら」と想像して書き始めたシリーズです。
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興味を持たれた方は、ぜひ覗いてみて下さいませ。