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モンストマスター・サトシ

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「おお、サートシくん!」
 モンスト研究所の扉を開けると、不意にしわがれた独特な声に名を呼ばれた。
 俺――勇崎サトシは半瞬遅れて声の主を見やる。
 そこには、いつもモンストのことを教えてくれるオーキド博士が手を振っていた。

「博士っ! 今日もモンストのこといっぱい教えてくれ! もう頭の中モンストのことばっかりで、ほら、これ見てくれよ!」

 そう言って、俺は背負っていたリュックサックから一冊のノートを取り出した。
 見せつけるようにぱらぱらとページをめくる。
 絵や文章でびっしり書き込まれたノートに、博士は満足げに頷いてくれた。

「素晴らしいっ! 素晴らしいぞサートシくん! まだモンスターを持っていないのに様々なモンスターの特徴、スキル、ストライクショットを十分勉強しているようじゃな。わしも教えがいがあるというものだ、うむうむ!」
「へへっ、博士の教え方がいいからだよ」
「嬉しいのぅ。弟子が師を越える気持ちというのは今この瞬間のことかもしれんな」
「やだなぁ、弟子だなんて……俺、照れちゃうよ」

 鼻の頭を人差し指でこすりつつ、けれど嬉しさを隠せない俺は博士の腰を何気なくばしっとはたいた。
 が、その瞬間、博士は「うぉぉぉぉ!」と呻き声を上げて床に両膝をついた。

「は、博士っ!? ど、どどどうしたの! もしかして――妖怪のせいっ!?」
「ヨーデルヨーデルって違うわい! ここ最近、腰痛がひどくてちょっと当たっただけでも痛くてたまらん」
「ごめん、博士。俺、知らなくて……」
「謝ることはない。サートシくんが入ってきたときに『わしは腰痛持ちじゃ!』と叫べば良かったのじゃ」
「え、あ、ああ、うん。なんかごめん、博士」

 とにもかくにも、俺は腰が弱った博士を近くの椅子に座らせ、近くの給湯器でお茶を入れ、なぜか近くにいた小型のモンスター『ブルーリドラ』を捕まえた。
 実に良いタイミングで存在してくれたと思う。
 ブルーリドラは体力と攻撃力こそないものの、スピードを生かしてヒット数を増やすことができる。更にそのスピードを手助けするように、ぶつかったら何度も跳ね返る――反射タイプのため、相手の体力を根こそぎ奪ってくれる可能性があるのだ。
 さて、その狙いはもちろん、博士の腰。
 ブルーリドラは水属性だから冷えたアタックは腰痛にはもってこい。すぐに博士も元気になるはずだ。もしかしたら、俺のこともっと褒めてくれるかもしんない。
 想像し始めると、俺はブルーリドラを引っ張り、叫ばずにはいられなかった。

「ストライクショットッ!!!!!」
「ふんがぁっ!?」

 刹那、ブルーリドラの突撃を受けた博士は勢いよく顔から床に落ちた。
 そのまま数メートル研究所の床を滑っていく。途中で「ぶぬぉ!」とか「あべし!」とか聞こえたけど、きっと効いてる証拠なんだろう。
 そしてブルーリドラの猛攻が終わったときには、博士は屍のように床に転がっていた。
 俺はどのくらいの効力があったか確かめるために近づくと、

「素晴らしいっ! 素晴らしいぞサートシくん!!」

 驚愕。
 唐突に博士が立ち上がって、俺を強く強く抱きしめた。

「まさかモンスターを持っていない君が、ブルーリドラのストライクショットを放てるとは思いもしなかった。実に才能に溢れた引っ張りぶりだった!」
「は、博士くるしぃ」
「おお、すまんすまん。サートシくんの成長ぶりについ嬉しくなってしまった」

 博士の笑顔を見ると、不思議と心の奥底から元気がわき出てくる。モンストを好きになったのも、博士の人柄に影響されているからだろうなぁ。
 俺は博士のハグから解放された後に、気になってることを尋ねてみた。

「そういえば博士、腰は?」
「はっはっは! この通り、ぜーんぜん大丈夫じゃ! サートシくんのおかげじゃよ!」
「おお! やったぜ!」
「うむ。サートシくん。わしは決めたぞ。君にはモンスターを引っ張る技術『モンスターストライク』略してモンストのモンストマスターを目指してもらおうではないか」
「モンスト……マスター……?」

 大好きなモンストという言葉の後ろに『マスター』がついた。
 一体どういうことなのか。
 顎に手を添え、首を傾げている俺に博士はびしっと人差し指を突きつけてきた。

「これからサートシくんには数多のモンスターがいる世界へ飛びこんでもらう! 今日からモンスターを弾く者『モンスレイヤー』としてモンスターを研究し、共に戦い、モンスレイヤーの中でも頂点を極める『モンストマスター』を目指すのじゃ!!」
「そ、それって……俺もついにモンスターをもらえるってこと!?」
「うむ、もちろんじゃ」
「や、やぁったぜ!」

 あまりの嬉しさにガッツポーズをしてしまう。
 街でモンスターを連れてる人を見かけて何度羨ましいと思ったことか。何度、自分だけのモンスターがほしいと願ったことか。
 俺もついにモンストの技術を使える人間になるんだ!
 
「さて、初心者モンスレイヤーのサートシくんには貴重なモンスターをあげるわけだが、三匹の中から一体選んでもらおうかのぅ。今後のパートナーとなるモンスターじゃ、大事に決めるんじゃぞ」
「分かったよ博士!」
「では、選んでもらうのはこの三体じゃ」

 そう言って博士が研究室の奥から呼んできたのは、火属性のレッドリドラ、さきほど引っ張った水属性のブルーリドラ、顔がちょっとアレな木属性のグリーンリドラと属性的にバランスがとれていた。

「レッドリドラは体力と攻撃力とスピード、どれをとってもバランスが良いんだっけ」
「うむ。友情コンボのことは知っておるかな?」
「もちろんさ! 例えば、他のモンスターをレッドリドラにぶつけるとレッドリドラ固有の『爆発』っていう技が炸裂するんだぜ! 爆発はぶつけた側のモンスターの友情コンボが発動するから、試しにブルーリドラをぶつけると――」

 俺は眠たそうにしていたブルーリドラを捕まえて、レッドリドラへ引っ張る。
 途端にレッドリドラはブルーリドラに弾かれてあらぬ方向へ弾かれるが、それと同時にブルーリドラの友情コンボ『バーティカルレーザーS』という青白い光線が俺と博士のいる間を貫いた。
 あ、危ねえ……。

「ま、まぁそういうことじゃな。ちなみにSは上下二方向にレーザーを飛ばすわけじゃが、その上にMやLといった強力レーザーもある。今後現れるモンスレイヤーの対策として、属性や友情コンボを考えてみるのも一興かもしれんぞ」
「うーん、グリーンリドラもいいんだけど顔がなぁ……」
「見た目で判断してはいかんぞ。モンスターはレベルが上がれば進化できることを忘れてはならん。進化すると能力アップに加え、覚えていた友情コンボやスキルが強化されることもあるのじゃ!」
「へぇ! じゃあこの三体の中で進化した後、能力が一番強くて、友情コンボも必ず強化されて、スキルがめっちゃ強いやつってどれ!?」
「………………」
「……博士?」
「サートシくん。わしは、モンスターとは強いだけが全てではないと思っとる。モンスレイヤーがモンスターと絆を深めるのも、戦うことだけを目的としていないのじゃ」
「それじゃ、何のために?」