艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くとこうなる。
昨晩から降り始めた雨は、朝になっても止んでいなかった。それが僕と僕の周囲にどんな変化をもたらすのか、僕はよく知っている。
一般的な例。雨の最中は、人は屋根の下に隠れ、蛙の鳴き声を聞きながら晴天を待つだろう。雨が上がれば、ぬかるむ地面の感触に嫌な顔をしながらも、水をよく吸った草木の青々とした美しさを見るだろう。これが、誰しもが経験する雨にまつわる情景だ。
それも確かに雨のもたらす姿で、僕の目にも映る情景なのだけれど…もっと個人的で身近で、少し面白い変化を僕は知っている。
「いい雨だね。」
窓から外を眺める時雨の傍らに立つと、時雨は挨拶代わりにそう言った。
提督の身からすると、雨はあまり嬉しいものではない。風が混じれば波が立って艦が不安定になるし、雲が深ければ敵襲の察知に支障をきたす。基本的には仕事の妨げになる。
しかし、のんびり蛙の鳴き声を聴く風情のように、雨上がりの草木の美しさのように、雨の嬉しい側面というものもある。それは提督として、また僕個人として。
「雨は天の恵みだよ。今でこそ科学が何処へでも水を供給するけれど、昔は違った。草木も動物も人間も、乾いたら雨を待ったんだ。」
窓の外を見つめたまま、時雨は雨の素晴らしさをしみじみと語る。
「だけど、悪い面もある。長雨は湿度を上げて、物を腐らせ、人に病気をもたらす。あるいは山では地盤が緩んで、土砂災害が起きたりする。水嵩の増した川が氾濫して、洪水が起こったりもする。」
負の側面。雨の凶暴性だ。
要するに生き物は皆、「自分にちょうどいいくらいの雨」を求めるのだ。勝手な話だけれど、仕方ない。渇いたら死んでしまうし、溺れたら死んでしまうのだから。
「生き物にとって雨は、少しでいいんだよね。だから、つまり…。」
時雨はそこで言葉を切った。
次に繋げる言葉が見つからないのではない。それを僕は知っている。
窓の外から視線を外さないまま黙った時雨の代わりに、僕は少し笑って、言った。「通り雨くらいで、ちょうどいいね」。
ちらりと僕を見て、僕と同じように少し笑って、時雨は…通り雨を意味する名前のその子は、また窓へ目をやった。「そうなんだよ」と満足げに。
そういう時雨を見ていると、雨もたまにはいいかもしれないと思う。
提督としては彼女の精神衛生的な面で、僕個人としては彼女が嬉しそうにするという点で。
その後もしばらく一緒に窓の外を眺めていると、雨足が徐々に弱まっていくのが見て取れた。
時雨はと見れば、その雨の最後の一滴まで見届けようと、雨の最期を看取るかのように、まだ一生懸命に窓の外を見つめている。一意専心の心構えだ。
「…ああ、止んだ。提督。」
完全に雨が上がったのを確認すると、時雨は不意に僕の方を向いた。僕と目が合った。
一瞬、互いに動きが止まった。心も。
突然相手と目が合うと、気まずさの前にそれが来る。鼓動が早まる直前、その静止した時間が覚悟をさせる。
さて、一瞬後。
どうやら僕がずっと見つめていたのが、窓ではなく彼女だったという事に気付いたらしく、時雨は少し恥ずかしそうに俯いた。「人が悪いよ」と小さく呟く。
謝るのもおかしいが、かと言って自分の正当性を主張するのはもっとおかしい。どうしたもんかと悩んでいると、時雨が時計を見て言った。
「マルハチマルマル。提督、そろそろ出撃しよう。」
雨も上がったし、その提案を拒否する理由も無い。
行こうか。そう時雨に告げて、その場を離れた。
時雨と二人見つめた窓を、少し名残惜しく思った。…大半の時間、僕は窓ではなく時雨を見つめていたにしても。
その窓と雨が無ければ、今の僕のこの感情も無かったのだ。一言で表すのは難しい。時雨に対して、様々な感情が幾つも混じったような、全く筆舌に尽くしがたい想いがある。
それが、昨夜から降り続いた雨のおかげだと思えばこそ…。
一般的な例。雨の最中は、人は屋根の下に隠れ、蛙の鳴き声を聞きながら晴天を待つだろう。雨が上がれば、ぬかるむ地面の感触に嫌な顔をしながらも、水をよく吸った草木の青々とした美しさを見るだろう。これが、誰しもが経験する雨にまつわる情景だ。
それも確かに雨のもたらす姿で、僕の目にも映る情景なのだけれど…もっと個人的で身近で、少し面白い変化を僕は知っている。
「いい雨だね。」
窓から外を眺める時雨の傍らに立つと、時雨は挨拶代わりにそう言った。
提督の身からすると、雨はあまり嬉しいものではない。風が混じれば波が立って艦が不安定になるし、雲が深ければ敵襲の察知に支障をきたす。基本的には仕事の妨げになる。
しかし、のんびり蛙の鳴き声を聴く風情のように、雨上がりの草木の美しさのように、雨の嬉しい側面というものもある。それは提督として、また僕個人として。
「雨は天の恵みだよ。今でこそ科学が何処へでも水を供給するけれど、昔は違った。草木も動物も人間も、乾いたら雨を待ったんだ。」
窓の外を見つめたまま、時雨は雨の素晴らしさをしみじみと語る。
「だけど、悪い面もある。長雨は湿度を上げて、物を腐らせ、人に病気をもたらす。あるいは山では地盤が緩んで、土砂災害が起きたりする。水嵩の増した川が氾濫して、洪水が起こったりもする。」
負の側面。雨の凶暴性だ。
要するに生き物は皆、「自分にちょうどいいくらいの雨」を求めるのだ。勝手な話だけれど、仕方ない。渇いたら死んでしまうし、溺れたら死んでしまうのだから。
「生き物にとって雨は、少しでいいんだよね。だから、つまり…。」
時雨はそこで言葉を切った。
次に繋げる言葉が見つからないのではない。それを僕は知っている。
窓の外から視線を外さないまま黙った時雨の代わりに、僕は少し笑って、言った。「通り雨くらいで、ちょうどいいね」。
ちらりと僕を見て、僕と同じように少し笑って、時雨は…通り雨を意味する名前のその子は、また窓へ目をやった。「そうなんだよ」と満足げに。
そういう時雨を見ていると、雨もたまにはいいかもしれないと思う。
提督としては彼女の精神衛生的な面で、僕個人としては彼女が嬉しそうにするという点で。
その後もしばらく一緒に窓の外を眺めていると、雨足が徐々に弱まっていくのが見て取れた。
時雨はと見れば、その雨の最後の一滴まで見届けようと、雨の最期を看取るかのように、まだ一生懸命に窓の外を見つめている。一意専心の心構えだ。
「…ああ、止んだ。提督。」
完全に雨が上がったのを確認すると、時雨は不意に僕の方を向いた。僕と目が合った。
一瞬、互いに動きが止まった。心も。
突然相手と目が合うと、気まずさの前にそれが来る。鼓動が早まる直前、その静止した時間が覚悟をさせる。
さて、一瞬後。
どうやら僕がずっと見つめていたのが、窓ではなく彼女だったという事に気付いたらしく、時雨は少し恥ずかしそうに俯いた。「人が悪いよ」と小さく呟く。
謝るのもおかしいが、かと言って自分の正当性を主張するのはもっとおかしい。どうしたもんかと悩んでいると、時雨が時計を見て言った。
「マルハチマルマル。提督、そろそろ出撃しよう。」
雨も上がったし、その提案を拒否する理由も無い。
行こうか。そう時雨に告げて、その場を離れた。
時雨と二人見つめた窓を、少し名残惜しく思った。…大半の時間、僕は窓ではなく時雨を見つめていたにしても。
その窓と雨が無ければ、今の僕のこの感情も無かったのだ。一言で表すのは難しい。時雨に対して、様々な感情が幾つも混じったような、全く筆舌に尽くしがたい想いがある。
それが、昨夜から降り続いた雨のおかげだと思えばこそ…。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くとこうなる。 作家名:エルオブノス