艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くとこうなる。
余談。
全艦帰投後、僕は執務室にいた。日誌を付けたりと仕事をしていたのだが、ふと思い立って部屋を出る。
朝方とは別の窓から外を眺めてみた。
もちろん景色は違う。窓が違うのだから当然と言えば当然だが…それ以上に決定的な違いを、僕は知っている。
隣を見ても、外を見つめる時雨がいない景色。その景色は、まるで色を失ったようだった。雨音もなく静かで、一人この場にいる事がとてつもなく寂しい事のように思えた。
なんだか堪らない気持ちで、けれど他にどうしようもなく、僕は外を見つめ続ける。何の変哲も無く、時さえ変化をやめたような景色。距離以上に外を遠くに感じるのは何故だろうか…。
「あっ。」
声が聞こえた。
その瞬間、世界が色を取り戻す。
どうやら僕が無関心すぎただけで、景色はちゃんと変化していた。最初より確かに薄暗く、外には雨が降っていて、聞けば雨音もしっかり聞こえるのだ。
それにしても突然な雨だ。数分の内に降り始め、結構な勢いで雨粒が窓を叩いている。
しかし、今日は昼以降そういう天候ではなかったはずだ。すぐに止むに違いない。
こういう雨を何と言うのか、僕は知っている。
突然降り出して、すぐに止む…通り雨。あるいは。
僕は声のした方を振り返った。
まるで、雨と共に現れたような。または、雨を察知して現れたような、そんな彼女を。
僕を見て、それから窓を叩く雨を見て、彼女は嬉しそうに窓のそばへ駆けてきた。
楽しそうに、窓の外を見つめて言った。
「わあー!提督さん提督さん、すごい雨っぽい!」
…まあ。
確かに、外の天気は夕立なんだけれど。
なお、夕立は夏の午後の通り雨、時雨は秋から冬にかけての通り雨を指す。
今はそういえば、夏だ。蛙の鳴き声も風情である。
夕立、だなぁ。思わず呟くと、隣から声が返った。
「お呼びっぽい?」
不思議そうな夕立の顔を見て、思わず笑う。「そうじゃないよ」。しかし説明する間もなく、雨は上がった。
「あー、終わっちゃったっぽい。」
つまらなそうに言って、夕立は僕を見る。
「提督さんは、最初っから見てた?」
ああ、うん、多分。
曖昧な返事に夕立は「ふーん」とまた窓に視線を向ける。
僕の景色には、また色が戻っていた。色も音も、全てがまともになっていた。
誰でもいいのだろうか、僕は。そばにいてさえくれたら。
ただの寂しがりなのだろうか、僕は。こんなに艦の皆に囲まれていながら。
「…雨は、苦手だな。暗くなる。」
僕の言葉に、夕立がまた不思議そうな顔を向けてきた。
多分僕は、無理に笑顔を作っていたと思う。
その笑顔は、誰に向けたのだろうか。夕立を不安がらせないためなのか、時雨に対する言い訳なのか。
執務室に帰って日誌の続きに手を着けた。
雨の事ばかりが頭に浮かび、進まない。いっそ雨の事ばかり詳細に書いてやろうか。時雨の事、夕立の事…。
気付くと僕は、また笑みを浮かべていた。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くとこうなる。 作家名:エルオブノス