艦これ知らない人がwikiの情報だけで雷電書くとこうなる。
元々仲のいい艦たちというのが、何組かある。
第六駆逐隊もそのひとつだ。雷(いかずち)、電(いなづま)、響(ひびき)、暁(あかつき)…以上で構成されている。
今回はその中でも雷と電、第六駆逐隊の中の姉妹艦が中心となる話をしよう。
「司令官さん、質問があるのです。」
電が執務室へ来て僕に言った。
仕事中だった僕は、資料を閉じて「どうしたんだい」と彼女の言葉を受ける。
「あ…お仕事中に、ごめんなさい…。」
電はすぐに頭を下げて、退室するか否か、僕へ扉へと視線を往復させた。
提督としては毅然とした態度が相応しいのだろうけれど、彼女にはどうも甘くなってしまう。理由は多分、電の容姿を見てもらえば分かるだろう。例えば僕なんかは、彼女に対して「気弱な妹か娘」のような印象を持つ。とても叱れまい。
大丈夫だよ、と笑んでみせる。電は申し訳なさそうな俯き加減のままで僕の座る椅子のそばに来て、上目遣いで僕を見た。
「…ごめんなさい…でも、司令官さんは最近お忙しそうで…その…お話する機会が…。」
フェードアウトしていく声を聞き逃さないように、しっかりと彼女の言葉に耳を傾ける。油断したら、外から聞こえる波の音にさえ負けてしまいそうだ。
結局黙り込んでしまった電をフォローする言葉を探した。そして、「今は話せるよ」と告げる。「質問というのは何だい?」と彼女に言葉を促す。
電は少し躊躇いがちに、しかし確実に、言葉を紡いだ。
「あの…牛乳を、信じてもいいのでしょうか?」
………。
…牛乳?と言ったのだろうか?
少々面食らいつつ、何と聞き間違えたのかを考えていると、電が更に続ける。
「最近、牛乳の効果が疑わしく思えてしまって…だって、電は毎日牛乳を飲んでいるのです。でも、大きくなったとは思えないのです…。司令官さん、牛乳は本当に、電を大きくしてくれるのでしょうか?」
ああ、牛乳で合ってたのか。思わず笑うと、電の俯きは更に深くなり、頭の位置は謝っているかのようになってしまった。
それにしても、何故牛乳の事を僕に訊くんだろうか。鎮守府には栄養士だっている。牛乳の成分が成長に寄与するかどうか知りたいなら、専門家に訊ねた方がよかろう。
そこを訊いてみると、電は顔を上げて、ふるふると首を横に振った。
「…電は、司令官さんを一番信じているのです。なので、司令官さんが言ってくれたら…電はそれが一番信じられるのです。」
それは嬉しい言葉だった。提督にとっては艦の皆からの信頼が何より嬉しい。もちろん普段の態度からも信頼は受け取れるが、言葉にしてくれると、こちらもその信頼を尚更信じられるというものだ。
満悦している僕はさておき、電はと言えば…。
「はわ…ご、ごめんなさい!司令官さんに責任を押し付けるような事を言ってしまったのです…。」
僕の無言を、悩んでいるとでも思ったのだろうか。慌てて「あの、その、ちがくて」とあっちを見たりこっちを見たりしながら、言葉を探している。
「電は司令官さんを、その…。えっと、お慕いしているからこそ…あっ、ちが…信頼して…。」
面白いので見ていると、最終的には「…なのです。」と俯いてしまった。
これ以上は可哀想か。俯いたせいでちょうどいい位置にある頭を撫でながら、「牛乳はすごいから信じていいよ」と慰める。
「ほ…本当ですか?では、電はこれからも毎朝牛乳を飲むのです。」
嬉しそうに言いながら、しかし顔は上げない。僕が撫でているせいだろうか。すると、このまま撫で続けたらどうなるだろう…。
その答えを知る前に、邪魔が入った。
「司令官!雷が来ましたよ!」
バァンと元気に扉を開けて、雷が姿を現す。
ノックくらいして欲しいが…今に始まった事でもなければ、言って直る事でもない。寛大な心で雷を許しつつ、放っておいて電を撫でた。
「…あれ?聞いてるー?」
両手を掲げてわさわさと振る姿が、視界の端に入ってくる。
大丈夫、聞いてるし見えてるよ。でも放っておいて電を撫でた。
「あ…あのう…司令官さん、雷ちゃんが…。」
「そう!雷が来ましたよ!」
電にそのように言及されては仕方がないので、撫で心地のいい頭から手を離す。
雷は満面の笑みで僕に両手を振っている。大丈夫、見えてるよ。
「いやー、気付いてもらえなかったらどうしようかと思ったわ!ときに司令官、今って暇かしら?」
残念ながら仕事がある。…と答えるべきところだが、そうすると電を撫でていた言い訳が立たない。
雷に付き合えない事を残念に思っているのは本当だ。
雷が近くにいると、その元気が感染するように僕にも元気が湧いてくる。最近は忙しさからあまり一緒にいられないが、疲れを感じると僕は雷を思い出して凌いだりするのだ。
しかし、そろそろ会議に向けて資料に目を通しておかなければならないのも事実である。とりあえず「仕事は残ってるけど」と曖昧に返しておいた。
「そう。じゃあ手短に済ませるから、ひとつだけお話を聞いてくださいな。」
扉を開けた位置のまま、雷は仁王立ちして僕に言った。
…また、話を聞いてくれ、か。
雷電共に、同じような事を考えるんだなあ。やっぱり姉妹だから…。
ぼんやりそう思ってから、ふと気付く。
違う。
気付いた瞬間、一瞬凍りついたように全身が冷えた。まるで心臓に氷を当てられたかのように…あるいは稲妻に打たれたように、ぎくりとした。
電が言っていたじゃないか。最近の僕は忙しくて、皆と話も出来なかった。だから電がわざわざ執務室まで訪ねて来たのだ。
雷だって同じかもしれない。
姉妹だからじゃない。雷だって、僕と話がしたくて来たのかもしれない。
…いや、しかし、本当にそうだろうか。そこまで疎遠だっただろうか。忙しかったのは確かだけれど、そんなに皆と話をしていなかっただろうか。
最近、出撃以外で彼女たちに掛けた言葉は…何があっただろうか。
「また後で」。
「ごめん、今ちょっと」。
「会議があるんだ」。
「ごめん」。
………。
第六駆逐隊もそのひとつだ。雷(いかずち)、電(いなづま)、響(ひびき)、暁(あかつき)…以上で構成されている。
今回はその中でも雷と電、第六駆逐隊の中の姉妹艦が中心となる話をしよう。
「司令官さん、質問があるのです。」
電が執務室へ来て僕に言った。
仕事中だった僕は、資料を閉じて「どうしたんだい」と彼女の言葉を受ける。
「あ…お仕事中に、ごめんなさい…。」
電はすぐに頭を下げて、退室するか否か、僕へ扉へと視線を往復させた。
提督としては毅然とした態度が相応しいのだろうけれど、彼女にはどうも甘くなってしまう。理由は多分、電の容姿を見てもらえば分かるだろう。例えば僕なんかは、彼女に対して「気弱な妹か娘」のような印象を持つ。とても叱れまい。
大丈夫だよ、と笑んでみせる。電は申し訳なさそうな俯き加減のままで僕の座る椅子のそばに来て、上目遣いで僕を見た。
「…ごめんなさい…でも、司令官さんは最近お忙しそうで…その…お話する機会が…。」
フェードアウトしていく声を聞き逃さないように、しっかりと彼女の言葉に耳を傾ける。油断したら、外から聞こえる波の音にさえ負けてしまいそうだ。
結局黙り込んでしまった電をフォローする言葉を探した。そして、「今は話せるよ」と告げる。「質問というのは何だい?」と彼女に言葉を促す。
電は少し躊躇いがちに、しかし確実に、言葉を紡いだ。
「あの…牛乳を、信じてもいいのでしょうか?」
………。
…牛乳?と言ったのだろうか?
少々面食らいつつ、何と聞き間違えたのかを考えていると、電が更に続ける。
「最近、牛乳の効果が疑わしく思えてしまって…だって、電は毎日牛乳を飲んでいるのです。でも、大きくなったとは思えないのです…。司令官さん、牛乳は本当に、電を大きくしてくれるのでしょうか?」
ああ、牛乳で合ってたのか。思わず笑うと、電の俯きは更に深くなり、頭の位置は謝っているかのようになってしまった。
それにしても、何故牛乳の事を僕に訊くんだろうか。鎮守府には栄養士だっている。牛乳の成分が成長に寄与するかどうか知りたいなら、専門家に訊ねた方がよかろう。
そこを訊いてみると、電は顔を上げて、ふるふると首を横に振った。
「…電は、司令官さんを一番信じているのです。なので、司令官さんが言ってくれたら…電はそれが一番信じられるのです。」
それは嬉しい言葉だった。提督にとっては艦の皆からの信頼が何より嬉しい。もちろん普段の態度からも信頼は受け取れるが、言葉にしてくれると、こちらもその信頼を尚更信じられるというものだ。
満悦している僕はさておき、電はと言えば…。
「はわ…ご、ごめんなさい!司令官さんに責任を押し付けるような事を言ってしまったのです…。」
僕の無言を、悩んでいるとでも思ったのだろうか。慌てて「あの、その、ちがくて」とあっちを見たりこっちを見たりしながら、言葉を探している。
「電は司令官さんを、その…。えっと、お慕いしているからこそ…あっ、ちが…信頼して…。」
面白いので見ていると、最終的には「…なのです。」と俯いてしまった。
これ以上は可哀想か。俯いたせいでちょうどいい位置にある頭を撫でながら、「牛乳はすごいから信じていいよ」と慰める。
「ほ…本当ですか?では、電はこれからも毎朝牛乳を飲むのです。」
嬉しそうに言いながら、しかし顔は上げない。僕が撫でているせいだろうか。すると、このまま撫で続けたらどうなるだろう…。
その答えを知る前に、邪魔が入った。
「司令官!雷が来ましたよ!」
バァンと元気に扉を開けて、雷が姿を現す。
ノックくらいして欲しいが…今に始まった事でもなければ、言って直る事でもない。寛大な心で雷を許しつつ、放っておいて電を撫でた。
「…あれ?聞いてるー?」
両手を掲げてわさわさと振る姿が、視界の端に入ってくる。
大丈夫、聞いてるし見えてるよ。でも放っておいて電を撫でた。
「あ…あのう…司令官さん、雷ちゃんが…。」
「そう!雷が来ましたよ!」
電にそのように言及されては仕方がないので、撫で心地のいい頭から手を離す。
雷は満面の笑みで僕に両手を振っている。大丈夫、見えてるよ。
「いやー、気付いてもらえなかったらどうしようかと思ったわ!ときに司令官、今って暇かしら?」
残念ながら仕事がある。…と答えるべきところだが、そうすると電を撫でていた言い訳が立たない。
雷に付き合えない事を残念に思っているのは本当だ。
雷が近くにいると、その元気が感染するように僕にも元気が湧いてくる。最近は忙しさからあまり一緒にいられないが、疲れを感じると僕は雷を思い出して凌いだりするのだ。
しかし、そろそろ会議に向けて資料に目を通しておかなければならないのも事実である。とりあえず「仕事は残ってるけど」と曖昧に返しておいた。
「そう。じゃあ手短に済ませるから、ひとつだけお話を聞いてくださいな。」
扉を開けた位置のまま、雷は仁王立ちして僕に言った。
…また、話を聞いてくれ、か。
雷電共に、同じような事を考えるんだなあ。やっぱり姉妹だから…。
ぼんやりそう思ってから、ふと気付く。
違う。
気付いた瞬間、一瞬凍りついたように全身が冷えた。まるで心臓に氷を当てられたかのように…あるいは稲妻に打たれたように、ぎくりとした。
電が言っていたじゃないか。最近の僕は忙しくて、皆と話も出来なかった。だから電がわざわざ執務室まで訪ねて来たのだ。
雷だって同じかもしれない。
姉妹だからじゃない。雷だって、僕と話がしたくて来たのかもしれない。
…いや、しかし、本当にそうだろうか。そこまで疎遠だっただろうか。忙しかったのは確かだけれど、そんなに皆と話をしていなかっただろうか。
最近、出撃以外で彼女たちに掛けた言葉は…何があっただろうか。
「また後で」。
「ごめん、今ちょっと」。
「会議があるんだ」。
「ごめん」。
………。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで雷電書くとこうなる。 作家名:エルオブノス