艦これ知らない人がwikiの情報だけで雷電書くとこうなる。
…いつか、自分自身に問いかけた事がある。
それは「仕事と艦、どっちが大事なのか」という質問。もしも誰かにそれを訊ねられた時、どう答えれば角が立たないかを考えた。仕事に忙殺される中、答えは出なかった。
かつての自分に対する後悔が、僕の体中を駆け巡る。どうして答えを出さずにいたのだろう。どうして答えを出せずにいたのだろうか。
擦り傷だらけのようになった頭の中に、扉のそばに立つ雷の声が聞こえてきた。
「じゃあ、お忙しい司令官には悪いけどひとつ。どうも最近の司令官は、忙しさから…。」
「雷。こっちにおいで。」
雷の言葉を遮って呼ぶ。
言いかけで止められた雷が、頬を膨らして「もう、何よ」と歩み寄ってきた。
電にそうしたように、僕は雷の頭を撫でる。最初は驚いた表情だった雷だが、すぐに嬉しそうな顔になって、大人しく撫でられた。
「うー、何だろう。雷は、何か褒められる事をしたかしら?」
偽りの言葉。
本当は雷にとって、撫でてもらえる理由なんてどうでもいいのだろう。ただ、嬉しくて黙っていられなくて、そう言ってみた…そういう言葉である事は、鈍い僕にも確かに伝わった。
けれど僕は、「うん」と雷の言葉に頷く。
「僕が忙しい間…寂しかっただろうに、よく我慢したね。偉かったよ。」
雷の驚いた顔が、僕をまっすぐ見上げた。
「雷、きっと君が頑張って明るく振る舞うから、電も響も暁も我慢できたんだろう。…ごめんね。ありがとう。」
「そんなこと」
言いかけた雷の言葉が、言いかけでまた止まる。今度は僕ではない。雷の言葉は、自分自身の涙に遮られていた。
何か言いたそうに口を動かすが、今の彼女には難しいようだ。涙を拭い、鼻をすするので精一杯らしい。
「そうなのです。」
代わりに、雷に寄り添った電が言う。
「雷ちゃんが元気だから、電たちも元気にしないとって。…そう思って、寂しくっても司令官さんのお仕事を応援するって、決めたのです。響ちゃんも、暁ちゃんも、きっとそうなのです。皆、本当は司令官さんと…。」
終いには電もぽろぽろと涙を零していたが、それでも懸命に言葉を紡いだ。
「…電だけじゃないのに…電は、どうしても…どうしても我慢できなかったのです。司令官さんと、お話がしたかったのです…。牛乳のことでも、なんでもよくて…。」
黙って聞きながら、僕は考えた。
何故言ってくれなかったんだろう。どうしても寂しくて、どうしても話したいなら、そう言ってくれたらよかったのに。
いや…本当は、言っていたんじゃないだろうか。
僕を見つけるたび、急いで駆け寄ってきた彼女たちは。
僕の卑怯な「ごめん」にあしらわれた彼女たちは。
「じゃあお仕事が終わったら、絶対だよ」と笑った雷は。
「お仕事頑張ってくださいです」と俯いた電は。
「仕事なら仕方ないさ」と諦めた響は。
「仕事なんてさっさと片づけなさいよ」と膨れた暁は。
言っていたんじゃないだろうか。
心の一番奥の方で。
『仕事と艦、どっちが大事なの?』
僕は、それに答えずにいたんじゃないだろうか。
あるいは、彼女たちは…僕が仕事を選んでいると感じたんじゃないだろうか。
それがどんなに残酷な仕打ちか、僕は知らずに…「ごめん」で済んだ気になっていた。
「…電は、司令官さんと、もっとお話したいのです。皆と一緒に、司令官さんと…電には、それが一番嬉しいこと、なのです…。」
いつからか、僕の手は雷の頭を撫でていなかった。
僕の一番大事なものたちを、両腕で包み込んでいた。
一緒になって涙を零しながら、相変わらず「ごめん」ばかりを繰り返す僕は、雷と電の目にどんなに情けなく映っただろうか。
…けれど、情けなくとも、僕が君たちを想う強さだけは知っていてほしい。この手から、どうか伝わってほしい。
こんなに強く、強く、想っているのだと。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで雷電書くとこうなる。 作家名:エルオブノス