【APH】Ringwanderung【ルーギル】※offサン
────冒頭────
お前は俺が守るから。
震える手を、溢れそうな涙を必死で堪えて兄は笑う。
お前は俺が守るから。だから、心配しなくて良い。
自分より大きかったはずの人が、初めて小さく見えた。
だから決めた。俺がこの人を守るんだ、と。
「兄さん! さっさと起きてくれ! 俺はもう学校へ行く時間だ!」
「んー……起きる。起きてるよ」
あふ、とあくびを噛み殺しつつギルベルトはごろりと寝返りを打つ。ドアの方に顔を向ければ、ドタバタと走り回る弟の姿が見える。
「だったら早くベッドから出てくれ。朝食はテーブルの上にあるからちゃんと温めて食べてくれ。それじゃあ俺はもう行くから」
「あ、ちょい待った」
ひょい、と顔を覗かせた後、すぐに出て行こうとする弟を引き止め手招きをする。ムッとしながらもちゃんと従う弟に満足しながら、ギルベルトは最愛の弟の顔を引き寄せその額にキスをしてやる。
「おはよう、ルッツ。それから行ってらっしゃい。気をつけてな」
「……ああ。おはよう兄さん。行ってきます」
お返しのように頬にキスをしてルートヴィヒは玄関から出て行く。中にはまだ自分が残っているが、律儀な弟はちゃんと鍵も閉めて行った。放っておくとギルベルトが鍵も閉めずに一日過ごしてしまう事を知っているからだ。
ふあぁ、と今度こそ大きなあくびをしてベッドから立ち上がる。そのままの服装でいると怒られてしまうので、弟が用意して行った服に着替え、まだ眠たい目を擦る。まずは顔を洗わなければ、と洗面所に向かい、歯も磨く。
毎日きちんと取り替えられるタオルで水分を拭き取り、台所へ向かう。テーブルの上にはラップがかけられた朝食がきちんと準備されていて、弟の忠告通りちゃんとレンジで温めてから頂くことにした。
作品名:【APH】Ringwanderung【ルーギル】※offサン 作家名:やよい