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【APH】Ringwanderung【ルーギル】※offサン

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────中盤────


「ルッツ、お前な、家計のこと心配して言ってるんだろ。怒るぞ」
「……それがない、とは言わない。が、兄さんだって俺を大学に行かせたいだけなんだろう」
「お前は行けるだけの頭を持ってる。だったら行かないのは損だぜ」
「それは兄さんの見解だろう。俺にしてみれば社会に出て働く方が有意義だ」
「はッ、そういう台詞は自分が行きたい企業を見つけてから言うんだな。働くってことをきちんと理解して、俺を説得できる言葉を用意して出直してこい」
「だったら兄さんも同じ事だ。俺が是非大学へ行きたいと思うような話をしてみせてくれ」
 売り言葉に買い言葉。二人ともが睨み合ったまま黙り込み、やがて同時に視線を逸らした。
「……とにかくルッツ、家のこと心配して就職するつもりなら俺は認めねぇからな」
 捨て台詞のような言葉を残して兄が部屋から出て行く。兄が座っていた向かいのソファに腰を下ろし、ルートヴィヒは溜息を吐いた。今更後悔しても遅いが、やってしまった、と思ったのだ。
 図星を指されて焦ってしまったのが原因だろう。家計の事だけだとは言わないが、就職を考えた理由は確かにそこが大きい。
 大学に行かせたいという兄の気持ちも分かる。自分が大学で良い経験をしたからこそ、弟にもそんな経験を積んで欲しいのだろう。
 けれどルートヴィヒは早く兄に追いつきたいのだ。大人と認められたい。自立したい、と言えば語弊があるが、一番近い。離れたいわけではないけれど、兄を守る立場にいたいのだ。早く兄の隣に立つためには社会に出て働くのが一番早い。少なくともルートヴィヒはそう思う。
 正直に話した所で兄はやはり反対するだろう。馬鹿にするなと怒鳴るかもしれない。だとしたら今のルートヴィヒにどうして兄を説得する事ができるのだろう。わからない。気持ちばかりが焦って、思考はぐるぐると空回る。
「……くそっ」
 ドンッ、と壁を叩いてみたところで八つ当たりにしかならず、ルートヴィヒは溜息を吐いた。おそらく兄はしばらく降りて来ないだろう。
 兄の消えた扉を見つめ、ルートヴィヒは再び溜息を吐いた。