艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くと:ケッコン
時雨に指輪を渡したのは、昨晩の事だった。
指輪を渡すという事。渡す男にとって、また渡される女にとって、それは大きな事件だ。
その小さなリングには「いつまでも一緒にいさせて欲しい」という願いが込められ、受け取る事で「いつまでも一緒にいよう」という誓いが刻まれる。渡す方も受け取る方も、気軽ではいられない。人によっては無上に喜び、人によっては涙を流し、人によっては狼狽える。そうした反応はいずれも、大事件のそれと同じだ。
僕が指輪を渡した事に、下心が全く無いと言ったら嘘だろう。時雨は魅力的な女性で、可愛らしい女の子で、それでいて頼りになる艦だ。男なら誰だって惹かれる…と僕は思う。
だから、僕の心も「時雨といつまでも一緒にいたい」とか「時雨の愛情を独り占めしたい」とか思ったのだ。それは最終的に、「つまり時雨が欲しい」というたった一言に集約されて、僕のその純粋な愛情と下心を混ぜた塊となった指輪は…時雨に受け取ってもらえた。
今までの人生で、一番。そんな言葉を本気で使えるほど、時雨を呼び出した時、僕は勇気を振り絞った。
危険な交戦を艦の皆に任せ、指示だけを発する臆病な提督の、なけなしの勇気。それは振り絞らなければ愛する人に愛している事さえ伝えられないほど、ちっぽけだった。
そんな小さな僕だからこそ、不安も大きかった。恐怖と言ってもいい。時雨に指輪を受け取ってもらえなかったら、僕は…しばらく職務を放棄するほどの無責任な放心状態に陥ったかもしれない。
だが拒絶に対する恐怖は、相手を想う気持ちの大きさに比例する。それだけ時雨を想っていたのは確かな事だ。
ところで、ひとつの疑問がある。
提督の贔屓というか、特定の艦だけに愛情を注ぐという事についてだ。
例えば、画家を考えてみる。彼らは様々な筆を使った末に、ひとつの筆を愛用する。「弘法は筆を選ばず」とは言うが、誰しも使い易いものや気に入ったものを使いたいに違いない。
それについて誰も文句を付けないのは、選ばれなかった筆達に感情が無いから。もっと言えば、誰も筆達の感情を考えないからだ。
提督が兵器を選ぶ際に、性能や好みで選ぶのもいいだろう。兵器は悲しみも恨みも妬みもしない。
…兵器に感情が無ければ。
僕が選んだのは、
僕が選ばなかったのは、
僕に選ばれたのは、
僕に選ばれなかったのは、
全て感情を持つ女の子だ。
僕は、選んだり選ばなかったりする権利を確かに持っていた。
僕を慕ってくれる時雨を選び、僕を慕ってくれる夕立を選ばない。そう選択したのは、確かに僕なのだ。
けれど、何故。
そんな疑問がある。
何故、時雨でなければならなかったのか。
魅力的で可愛らしく、頼りになり、男なら誰だって惹かれる。その言葉が他の子達に当てはまらないわけはない。
穏やかな笑みで雨を見つめる時雨だけが特別に可愛いわけではない。元気に飛び付いてくる夕立も、好奇心旺盛な子犬のような雷も、気弱にこちらを窺う子犬のような電も、静かに寄り添う大人しい子猫のような響も、近付けば離れ離れれば近付く気の強い子猫のような暁も、…挙げればキリが無い。とにかく第三者から見て、時雨だけが特別に愛らしいという事はないはずだ。
にもかかわらず、提督である僕が、彼女達を平等に扱って然るべき僕が、時雨だけを特別な目で見るというのは…どういうわけだろうか。
こんな事を思うのは、他の子らに対する後ろめたさからではない。彼女達の僕に対する信頼を裏切るように、時雨にだけ指輪を渡したからでもない。
僕が抱く時雨への特別な愛情の根源を、僕は知りたかった。
時雨の何が僕を惹きつけるのか。時雨と他の子達と、何が違うのか。
何故、時雨を選んだのか…。
白状すると、それは時雨自身に問われた事なのだ。
指輪を渡すという事。渡す男にとって、また渡される女にとって、それは大きな事件だ。
その小さなリングには「いつまでも一緒にいさせて欲しい」という願いが込められ、受け取る事で「いつまでも一緒にいよう」という誓いが刻まれる。渡す方も受け取る方も、気軽ではいられない。人によっては無上に喜び、人によっては涙を流し、人によっては狼狽える。そうした反応はいずれも、大事件のそれと同じだ。
僕が指輪を渡した事に、下心が全く無いと言ったら嘘だろう。時雨は魅力的な女性で、可愛らしい女の子で、それでいて頼りになる艦だ。男なら誰だって惹かれる…と僕は思う。
だから、僕の心も「時雨といつまでも一緒にいたい」とか「時雨の愛情を独り占めしたい」とか思ったのだ。それは最終的に、「つまり時雨が欲しい」というたった一言に集約されて、僕のその純粋な愛情と下心を混ぜた塊となった指輪は…時雨に受け取ってもらえた。
今までの人生で、一番。そんな言葉を本気で使えるほど、時雨を呼び出した時、僕は勇気を振り絞った。
危険な交戦を艦の皆に任せ、指示だけを発する臆病な提督の、なけなしの勇気。それは振り絞らなければ愛する人に愛している事さえ伝えられないほど、ちっぽけだった。
そんな小さな僕だからこそ、不安も大きかった。恐怖と言ってもいい。時雨に指輪を受け取ってもらえなかったら、僕は…しばらく職務を放棄するほどの無責任な放心状態に陥ったかもしれない。
だが拒絶に対する恐怖は、相手を想う気持ちの大きさに比例する。それだけ時雨を想っていたのは確かな事だ。
ところで、ひとつの疑問がある。
提督の贔屓というか、特定の艦だけに愛情を注ぐという事についてだ。
例えば、画家を考えてみる。彼らは様々な筆を使った末に、ひとつの筆を愛用する。「弘法は筆を選ばず」とは言うが、誰しも使い易いものや気に入ったものを使いたいに違いない。
それについて誰も文句を付けないのは、選ばれなかった筆達に感情が無いから。もっと言えば、誰も筆達の感情を考えないからだ。
提督が兵器を選ぶ際に、性能や好みで選ぶのもいいだろう。兵器は悲しみも恨みも妬みもしない。
…兵器に感情が無ければ。
僕が選んだのは、
僕が選ばなかったのは、
僕に選ばれたのは、
僕に選ばれなかったのは、
全て感情を持つ女の子だ。
僕は、選んだり選ばなかったりする権利を確かに持っていた。
僕を慕ってくれる時雨を選び、僕を慕ってくれる夕立を選ばない。そう選択したのは、確かに僕なのだ。
けれど、何故。
そんな疑問がある。
何故、時雨でなければならなかったのか。
魅力的で可愛らしく、頼りになり、男なら誰だって惹かれる。その言葉が他の子達に当てはまらないわけはない。
穏やかな笑みで雨を見つめる時雨だけが特別に可愛いわけではない。元気に飛び付いてくる夕立も、好奇心旺盛な子犬のような雷も、気弱にこちらを窺う子犬のような電も、静かに寄り添う大人しい子猫のような響も、近付けば離れ離れれば近付く気の強い子猫のような暁も、…挙げればキリが無い。とにかく第三者から見て、時雨だけが特別に愛らしいという事はないはずだ。
にもかかわらず、提督である僕が、彼女達を平等に扱って然るべき僕が、時雨だけを特別な目で見るというのは…どういうわけだろうか。
こんな事を思うのは、他の子らに対する後ろめたさからではない。彼女達の僕に対する信頼を裏切るように、時雨にだけ指輪を渡したからでもない。
僕が抱く時雨への特別な愛情の根源を、僕は知りたかった。
時雨の何が僕を惹きつけるのか。時雨と他の子達と、何が違うのか。
何故、時雨を選んだのか…。
白状すると、それは時雨自身に問われた事なのだ。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くと:ケッコン 作家名:エルオブノス