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エルオブノス
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艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くと:ケッコン

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 ノックの音。

「提督、呼んだ?」

 夜、昨日と同じ時間に時雨を呼び出した。

 実は那智に酒を誘われたのだが、「お察しの事情で」と断ってあった。呆れたように「明日に差し支えるから程々にしておけ」と言われた。…何を想定しているんだろう?


 ドアを開けると嬉しそうな笑顔の時雨が待っていて、それだけで嬉しくなる。僕と会う事にそれ程の価値を感じてくれているのだ。
 しかし、情けない事に、僕はなぜ時雨が好きなのかさえ分からないままだ。

「時雨。ごめん、答えが出ない。」

 昨日と同じように二人で座る姿勢に落ち着いた後、僕は正直に言った。
 時雨は背中越しに体重を僕の胸に預け、僕は時雨の頭に頬を付けて頭の重さを預ける。支えてもらわずにいられないくらい、僕の頭は思考の重みに負けていた。

「だから、そんなに悩まなくていいのに。」

 僕の頭を撫でながら時雨が笑う。重みが和らぐ気がして、時雨の頭に重みを預けるのはやめた。
 時雨も安心したように、また僕の腕をゆっくり撫でる。

「いきなり完璧に全部解明しようなんて、無理だよ。僕は提督が好きで、提督に好きでいてもらって、それで十分だと思ってる。」

「だけど、訳も分からず好きだなんて…。」

「ねえ、提督?」

 時雨は急に僕の上からぴょんと降りて、座ったままの僕を正面から見つめた。真面目な顔だった。

「提督は、僕を可愛いと思う?」

「もちろん、可愛いよ。」

「好き?」

「好きさ。」

「嬉しいよ。」

 抱きついてきて、僕の背中に回した手にギュッと力を込めた。
 …何だったんだろう、今の質問は。そう思っていると、時雨が僕を見上げた。

「これでいいんだ。」

「時雨、どういう事?」

「僕が間違ってた。夕立が先に提督と…だったら、どうなってたのかな、とか。考えなくていいんだよね。僕と提督の事だけ考えていたらいいんだ。だって、こうしてる時は二人しかいないんだから。」

 時雨の頭を撫でながら、「そんなものかなあ」と首を傾げる。時雨は「少なくとも僕はこうしていたら満足さ」とまた僕に座る。

 ところで…今回の疑問が解けたわけではないが、それはそれとして。
 解けない疑問よりも、解ける疑問を先に解こう。

「そういえば、時雨?」

「なに?」

「昨日はどうして叱られると思ったんだい?」

 時雨の体が強張る。答えづらい質問なのだろう。昨日もそうだった。
 しかし、僕には答えが分からない。この疑問も頭の隅にずっとあった。

 時雨は「忘れてたらよかったのに」とぶつぶつ言いながら…けれど、諦めたように答えを言った。

「…一昨日、提督に…急にきっ…キ…スした、からさ。それ、やっぱり怒ってるのかな…って。」

 一瞬、意味が分からなかった。それは本当に僕にとって、怒るような事でも何でもなかったのだ。

「…ええ?怒ってないって言ったじゃないか。」

「だ、だって…他に呼び出されるような事思いつかなくて、昨日は本当にそれだと思ったんだよ。」

 思わず笑った。答えが分かった安心と、純粋すぎる時雨の可愛らしさに。

「笑わないでよ…本当に不安だったんだから。あんなことして、嫌われたらどうしようって…。」

「でも、僕が好きだからしたんだろう?驚いたけど、嬉しかったよ。」

 その言葉に時雨は何も返さなかった。照れたのか、拗ねたのか。
 ただ僕に寄り添って、服をそっと掴んで…しばらくすると、寝息が聞こえてきた。疲れていたんだろうか。座り心地の良い椅子で良かった。このままずっと座っていても、身じろぎして時雨を起こしてしまう事は無さそうだ。


 考えなくてもいい、と言われても、気になるものは気になる。
 僕はなぜ時雨を好きなのか。

 時雨の安心しきった寝顔を見ながら考えた。
 きっと僕は、この先もっともっと時雨に惹かれていくだろう。
 寝顔を見たり、笑顔を見たり、それらを何度も重ねて…今よりもっと、時雨は他の子達より特別になってしまうに違いない。そうして結局、時雨がそんなに特別な理由の根源はいつまでも分からないのだ。

 いつまでも。
 どうしてこんなに愛しいのか…時雨を想うたび、考えよう。考えれば考えるほど分からなくて、でもなぜだか時雨じゃないと駄目だと何度も再確認する。

 それも、いいだろう。



 起こさないように優しく時雨を撫でると、はっきりしない声で「提督、いたずらしないでよ」と寝言が返ってきた。何の夢を見ているのか…あるいは半分起きているような状態なのかもしれない。

 こんな風な事を、いつまでも続けていきたい。
 時雨に触れて、時雨と話して、時雨を感じて、そんな幸福を、いつまでも…。

「…んー、提督…もう、朝だよ…。」

 寝ながら何を言ってんだ。笑いそうになったが、まだ夜なので起こしてしまうわけにもいかない。

 笑うのは、明日にしよう。起きた時雨に「昨日寝言を言ってたよ」と言って、からかって笑おうか。どんな表情を見せてくれるのだろう。照れるだろうか。照れ隠しに笑うだろうか。
 そもそも、起きた時にはどんな反応をするだろうか。慌てるか、謝るか。想像するのも楽しい。

 そうやって時雨と過ごす明日を、未来を、永遠を思って、僕もいつしか眠っていた。
 時雨を胸に抱く幸福を感じながら。



                            (時雨:終)