艦これ知らない人がwikiの情報だけで金剛書くと:改二
金剛の悩みとは、こうだった。
「金剛は、いつも明るく過ごしてるヨ。それで皆明るくなったらいいと思ってるからネ。…でも、それが迷惑になる事、あるデショ?真面目な時、私をうるさいと思う事…提督も、あるはずネ?」
ギクリと身体が強張る。
戦いの日々の中、金剛の明るさは貴重だ。特に僕のように暗くなりがちな提督のいる鎮守府では、その明るさに救われる事が本当に多い。
確かに、金剛の空気の読めない明るさに閉口する事はある。それも事実だ。しかしそれを差し引いても、彼女の救いは大きくて…。
金剛の真っ直ぐな目を見つめ返して、僕は真摯に答える。
「君はそれでいいんだよ。皆、明るい金剛が好きなんだ。真剣な場で真剣に考えるのは、僕の役割だから…うるさくたって、金剛はそうじゃないと。」
「…ホントですカー?」
「本当さ。鎮守府の誰に聞いたって、同じ風に思ってる。」
自信を持って答えた。
金剛が嫌いな子なんていない。僕だって金剛が好きだ。時に度を超してうるさくても、それは金剛だから皆「仕方ないな」と笑うのだ。
すると、金剛の顔にいつもの笑顔が戻った。子供のように無邪気な、つられてしまうような笑顔。
安心してくれたのかな。…そう思った時、金剛が勝ち誇るように胸を張った。
「じゃあ提督だって同じネー!優しくて考えすぎてすぐ落ち込む軟弱な提督が、皆好きデース!」
「え…あれ、悪口?」
「悪口じゃないヨ!明るいけどうるさいのが金剛なら、優しいけどすぐ落ち込むのが提督デショ!悪いところがあったって変える必要ないネ!」
「…そう、かな?」
そう言われてみると、自分の事を棚に上げていたような気もする。金剛には「そのままでいい」なんて言いながら、自分は「直さなきゃ」と躍起になるというのは、不公平といえば不公平だ。
自然体でいいのか。金剛がそうしているように、僕も僕のままで。
「…でも、男らしくしろって金剛は言ったけど?」
「それはそれネ。金剛は提督なら何でも好きヨー?男らしくても素敵だし、すぐ落ち込むのもかわいいデース。」
「かわいいって…。」
どうも基本的には馬鹿にされている気がする。僕の不甲斐なさが原因とはいえ、だ。
否定したければ、男らしくなれ。金剛にそんな意図があるかどうかは別にして、僕はそういう挑戦的な発言だと勝手に受け取った。
ここで男らしさを見せられなければ僕の負けだ。どうするか。
…自然体でいい。思ったようにすればいい。その考え方が頭に浮かんで、僕は自分の本当の悩みを思い出した。
僕は金剛が好きだ。だけど、提督として彼女だけを恋人のように愛するわけにはいかない…。
金剛なら、そんな風には考えないだろう。
好きだから好き。それでいい。金剛なら、そう考えるだろう。
すると僕には欲が生まれる。金剛のように、自由に、思ったままを伝えたい。出来れば、男らしく!
「提督、どうしましたカー?また何か考えすぎてますネー?」
紅茶を飲みながら困ったように笑う金剛を見て、僕は自分の想いを認める。
彼女が好きだ。
いつだって笑っていて、その笑顔だけで僕は慰められる。彼女の笑顔は全てを持っている。母のような優しさを、娘のような愛らしさを、姉のような頼もしさを、妹のような明るさを。その笑顔が、僕はどうしようもなく好きなのだ。
彼女の方に少し身を乗り出して、彼女の頬に口づけた。
親愛を感じてほしい。僕は君が好きなのだと知ってほしい。それを言葉よりも行動で示す事が、男らしさだと僕は思ったのだ。
「…提督…。」
突然の事に金剛は驚いたようだった。少し頬を赤らめているのが嬉しい…が、僕はそれ以上に赤くなっているに違いない。男らしさなんて僕には無縁と思い知った。
照れくささから顔をどこか遠くへ向ける。秋の空に映えるうろこ雲を、見るともなく眺めた。空が青いなあ。
クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「提督…やっぱりかわいいネー。」
ひどい。僕はこれでも勇気を振り絞って、男らしくやったつもりなのだ。そこのところは金剛には伝わらなかったらしい。
僕の頬に金剛の手が添えられ、顔を自分の方に向けさせようとするのを感じた。抵抗できない。されるがまま、「こうやるんだ」と言わんばかりに唇を奪われる。…金剛は、本当に米国生まれじゃないんだろうか。
唇を重ねている間、身じろぎひとつできなかった。起こっている事を、ただただ受動的に感じ取るばかり。
例えば、金剛の唇の湿り…紅茶で潤っているのが分かる。なんてどうでもいい事を感じ取っているんだろうか。金剛の愛でも何でも感じ取ればいいのに、混乱しているのか。
僕から顔を離し、金剛は少し赤らんだ顔で…少ししか赤くない顔で、僕を見つめる。
「言葉は、譲ってあげるヨ。…男らしくネ?」
今更男らしさも無いもんだ。女の子よりも真っ赤な顔で、女の子の方が行動的で、まったく情けない。
けれど、情けなくとも…僕らしい。男らしくない僕らしさがはっきり出ていると思う。それが少し嬉しいのは、男らしくない僕を、変われないそのままを、金剛に好きだと思ってもらえたからなのだろう。
…でも、やっぱり男らしい方が格好いいので、ここだけ頑張ろう。
「もう自分に嘘はつかない。好きだよ、金剛。」
ちょっと淡白すぎるかとも思ったが、まあ男らしくという事ならこれでいいんだ。伝える事に意味がある。無理に飾る必要は無い。
事実、金剛は喜んでくれた。
「…嬉しいヨ。」
そこまではいい。
「提督、よく出来ましたネー!かっこいいデース!」
「うん、ありがとう。…馬鹿にしてるよね?」
「褒めてマース。」
なぜ男らしさに磨きが掛かったはずの僕が、撫でられているのか。納得がいかない。…これも日頃の行いというものだろうか。
今はそれでも仕方ない。僕が自分の想いを認め、金剛のように自分に正直になったのは、まだ今日の事なのだ。
いずれ僕は僕なりに立場と想いを両立し、金剛を正面から愛するに足る男になろうと思う。それまでは、考えすぎてすぐ落ち込む提督でも許してほしい。
「提督、Tea Timeの続きにしまショー?恋人たちの昼下がり、海を眺めながら紅茶を嗜むひと時…Wow!素敵なSituationデース!」
…人が真面目に考えてるのに、うるさいなあ。いいけど。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで金剛書くと:改二 作家名:エルオブノス