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エルオブノス
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艦これ知らない人がwikiの情報だけで時津風書くとこうなる。

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大抵の場合、人に対するイメージは第一印象で決まる。外見、声質、口調、仕草などの要因を自分の中で統合して、「相手の印象」として作り上げる。
 長く付き合う中でそれが次第に変わっていく事も多いが、まずは相手をそのような人物として付き合っていく事になるのだ。


「はじめまして!第十六駆逐隊第1小隊、陽炎型十番艦の時津風だよ!」

 元気の良い子だなあ、と思わず笑みが零れた。


 誰しも、それぞれ自然に「雰囲気を作る」という事が出来る。
 大人しい子は落ち着いた雰囲気、真面目な子は引き締まった雰囲気、元気な子は明るい雰囲気。その場の中心に誰がいるかによって、雰囲気が変わる。
 その雰囲気のどれだって僕は心地良く感じる。時雨達とのんびり雨を眺める落ち着いた雰囲気も、那智達としっかり作戦会議をする引き締まった雰囲気も、金剛達とワイワイ騒ぐ明るい雰囲気も。どれも、彼女達それぞれの良いところが出た結果として生まれた雰囲気であると僕は思うのだ。

 さて、新しくこの鎮守府にやって来た時津風はどうだろう。
 …どうって、考えるまでもなく見ているだけで分かる。どうやったって明るい雰囲気を作ってくれる、そんな子だ。

「あなたが司令官だね!よろしくよろしくー!」

 笑顔で敬礼し、それから握手を求めてくる。快く応じると、時津風は握った僕の手を嬉しげにぶんぶん振った。

 小さな手だ。それに見合って、身体も小さい。こんなに小さな身体のどこからこんな元気が出てくるのだろうか。
 そう思った僕が想像したのは、犬だった。小さな犬ほど落ち着き無く遊び回り、大きな犬ほどのんびり横になっている。そんなイメージが浮かんだ。時津風自身の見た目にも、頭頂部付近から側頭部へ垂れた髪が耳のように見えて…まあ何にせよ、元気な小犬という第一印象だ。


 僕の手を離し、時津風は僕をもう一度笑顔で見上げてから、くるりと後ろを向く。

「さて。そんじゃあ、ちょっと探検してこようかな!」

 探検?僕が聞き返すと、またくるりと半回転して僕の方を向いて答える。

「初めての場所に来たら、まずは探検。そうしなきゃ何も分からないもんね。」

 なるほど。犬をイメージしたのは、あながち間違っていなかったか。
 普通は誰かに案内を頼むところだが、時津風は自力で探索するのが楽しいようなのでやめておこう。誰かに連れ回されるよりも、一人で気ままにうろつく方が好きそうだ。

 分からない事があったり、迷ったりしたら、誰かに聞いてね。…と、それだけ伝えた。
 犬なら迷ったら自力で歩いて帰ってくる羽目になるが、時津風は犬ではないので、誰かに道を訊ねるという事が出来る。単独行動をさせても大丈夫だろう。

「了解!またね、しれー!」

 再び短い敬礼を見せて時津風は素早く出て行った。それはまるで、綱から解き放たれた犬の如く…ああ、いや、ちょっと待って。まだ今後の予定を伝えていない。でも既にいない。

「ふふ…元気な子ですね。」

 がっかりしている僕に、秘書官の榛名の笑う声が聞こえた。胸に書類の束を抱えているところを見ると、整理を終わらせてくれたようだ。

「ああいう子が増えてくれると、榛名は嬉しいです。」

 何故だろう?真面目でまとめ役を買う事の多い榛名からすれば、元気に駆け回るタイプが増えるのは面倒の種ではないだろうか。

 …いや、僕だって別に「うるさくなりそう」とか「面倒が増えた」とか思っているわけではない。明るい雰囲気になるのは嬉しい。
 ただ、榛名が喜ぶというのが予想外だったのだ。真面目な子が増えて、自分を補佐してくれる方が喜びそうな気がしていた。

「真面目な子が増えるのだって、もちろん嬉しいですよ。いえ…どんな子でも、仲間が増えたら嬉しいです。頼もしいお姉さんでも、楽しい友達でも、可愛い妹でも。」

 僕もそうだ。どんな子にも良いところがあるというのは、雰囲気の話で言った通り。大人しい子、真面目な子、元気な子…色々な子がいるこの鎮守府を、僕が本当に居心地良く思っているという事が、その証拠だ。

 ならばこそ、榛名が「元気な子が増えると嬉しい」というのは何故だろうか。どんな子でも嬉しいはずなのに、元気な子だけを殊更嬉しく思うような言い方は、他のタイプの子とは違うベクトルの良い点があるから…ではなかろうか。

 そこのところを訊ねてみると、榛名は全く意外な反応を見せた。
 何かを言いあぐねて、困ったように書類を抱え直しながら、少し俯く。それが照れているのだと僕には分かった。

 それこそ不思議な話だ。何故照れるのか。

「…榛名。」

「はい、何でしょう。」

「先の発言の理由を、提督に報告しなさい。報告は明解かつ的確にする事。」

「…えっ。」

 別に作戦行動中でもないのに自分の気持ちなんて報告する義務は無いのだが、命令してやれば榛名が素直に従うという事を僕は知っている。
 時津風が気ままな小犬なら、榛名はまさに忠犬だ。いつも傍に寄り添い、指示を待ち、場合によっては黙っていても僕の助けになってくれる。
 そんな榛名の事を、何だって知りたいと思うのは当然だろう。大切なパートナーの事で、知らない事を無くしたいと思うのは自然だろう。

「えー…っと。」

「榛名、提督に報告は?」

 穏やかな笑みと共に再び告げられた、僕の命令。
 榛名の表情に不安の色は無い。少し言いにくそうにはしていたが、結局照れたように笑いながら話してくれた。

「だって、元気な子がいると…提督は楽しそうに笑うじゃないですか。」

「ん?…うん、まあ、そうだね。楽しいよ。」

「榛名は、楽しそうな提督を見るのが好きですから。」

 言いにくそうに照れていた榛名はどこへやら、吹っ切れたように明るく言い放った。そうはっきり言われては、今度は僕が照れる。
 しかし最近気付いたのだが、照れ隠しにわざと図に乗るというやり方があるようだ。隙を見つけて、今ちょっとやってみようか。