彼の望み、彼女の覚悟
色恋沙汰の話は何時の時代も、たとえ明日の命が危うい生活の中でも花咲もの。
「それでね、徹がね…」
好きな異性の話をする鏡華の表情も花が咲いたように明るい。
(恋する乙女は可愛いおすなー。)
そんな鏡華の話を微笑みながら聞いていた凛は、ふと真面目な表情になった鏡華と目があう。
「ねぇ、凛、どこからが付き合ってるってるって…言えるのかな。」
彼女の言葉に強い気持ちを感じた凛は、少し間をおいて答えた。
「そうでありんすね、気持ちの問題もありんすが好きな者同士であれば接吻、したときからでないでありんしょうか。」
「そっか、そうだね、うん私もいつかともすれば徹と…」
凛の言葉を自分の想い人と行ってる姿を想像して、鏡華は恥ずかしそうにそれでいて幸せそうに微笑む。
「鏡華様はほんに可愛いでありんすね。」
二人の恋の話はしばらく続いた。
そんな二人を物陰から見つめる一つの影。
(せっ、せっ、拙者も凛殿と。)
そう興奮しながら声なき声で叫んでいるのは凛に想いを寄せている虎之丞。
彼の名誉の為に言うが決して盗み聞きしようとしてこの場にいるのではない、たまたま通りがかりに聞こえてきた会話が気になり立ち止まっただけである。…まぁ、聞くために立ち止まったのだが。
すっかり興奮していた虎之丞であるも、ふと我にかえり自らを冷笑する。
(なにを拙者は考えていることやら、凛殿は拙者にとって高嶺すぎる花…無理な望みは己を滅ぼすというもの…)
「今は、近くで微笑んで下さるだけで満足。拙者が凛殿をお慕い出来ていればそれでいい。」
誰に言うでもなく、諦めたように肩を落として虎之丞はその場を去る。
しかし
一度望んだものはなかなか落ち着かないもので、虎之丞は凛と会うたびに己の願望を思い出し挙動不審な様子をみせる。
「あら、虎様。」
ある時、前から歩いてきた虎之丞になにか気付いた凛がその顔を近づける。
「えっ、凛殿?」
いきなりのことに動揺する虎之丞ににこりと笑いかける凛。
「ふふ、虎様、口になにかついてんすよ。」
「……あっえっ、く、く、く、口にでごさるかっ。」
考えていた以上の反応に疑問を抱くも、凛は笑みを崩さずにその手をのばす。
「取ってあげんす。」
しかしその手が虎之丞に届くことはなかった。
「いや、いやいやいやいや大丈夫ぜよ。ははっ、今から出かける所でお弁当代わりにつけてたんぜよ。あははっ、では凛殿、また。」
そう言うと虎之丞はいまきた道を駆け出す。
残されたのは手を差し出している凛のみ。
「……変な虎様。」
一度であれば、なにか不都合があっただけだろうと思うことも出来る。
だが、それが続くとなると話は変わってくる。
凛が痺れをきらしたのは数日後のことだった。
「虎様、何なんでありんすか。わっち、なにか気にさわるような事をしんしたか?それなら言っておくんなんし。」
「えっ、あの、それは。」
「虎様を不快にさせたのなら、謝りんす。でも何より、そんな態度が寂しいでありんす。」
普段あまり見せない不安そうな表情をみせる凛。そんな彼女の様子にかなう虎之丞ではなかった。
「そうではないぜよ。拙者が凛殿に不快な感情を持つなど…。拙者が変な事ばかり考えているだけぜよ。」
「変な事とはなんなんし?」
「そ、それは、き、き…」
「き?…なんでありんすか?」
もう正直にいってしまおう、それで彼女が満足するなら。そう、虎之丞が決意した瞬間、
「時空越境作戦を開始します。」
そう、久美の声が響いた。
「それでね、徹がね…」
好きな異性の話をする鏡華の表情も花が咲いたように明るい。
(恋する乙女は可愛いおすなー。)
そんな鏡華の話を微笑みながら聞いていた凛は、ふと真面目な表情になった鏡華と目があう。
「ねぇ、凛、どこからが付き合ってるってるって…言えるのかな。」
彼女の言葉に強い気持ちを感じた凛は、少し間をおいて答えた。
「そうでありんすね、気持ちの問題もありんすが好きな者同士であれば接吻、したときからでないでありんしょうか。」
「そっか、そうだね、うん私もいつかともすれば徹と…」
凛の言葉を自分の想い人と行ってる姿を想像して、鏡華は恥ずかしそうにそれでいて幸せそうに微笑む。
「鏡華様はほんに可愛いでありんすね。」
二人の恋の話はしばらく続いた。
そんな二人を物陰から見つめる一つの影。
(せっ、せっ、拙者も凛殿と。)
そう興奮しながら声なき声で叫んでいるのは凛に想いを寄せている虎之丞。
彼の名誉の為に言うが決して盗み聞きしようとしてこの場にいるのではない、たまたま通りがかりに聞こえてきた会話が気になり立ち止まっただけである。…まぁ、聞くために立ち止まったのだが。
すっかり興奮していた虎之丞であるも、ふと我にかえり自らを冷笑する。
(なにを拙者は考えていることやら、凛殿は拙者にとって高嶺すぎる花…無理な望みは己を滅ぼすというもの…)
「今は、近くで微笑んで下さるだけで満足。拙者が凛殿をお慕い出来ていればそれでいい。」
誰に言うでもなく、諦めたように肩を落として虎之丞はその場を去る。
しかし
一度望んだものはなかなか落ち着かないもので、虎之丞は凛と会うたびに己の願望を思い出し挙動不審な様子をみせる。
「あら、虎様。」
ある時、前から歩いてきた虎之丞になにか気付いた凛がその顔を近づける。
「えっ、凛殿?」
いきなりのことに動揺する虎之丞ににこりと笑いかける凛。
「ふふ、虎様、口になにかついてんすよ。」
「……あっえっ、く、く、く、口にでごさるかっ。」
考えていた以上の反応に疑問を抱くも、凛は笑みを崩さずにその手をのばす。
「取ってあげんす。」
しかしその手が虎之丞に届くことはなかった。
「いや、いやいやいやいや大丈夫ぜよ。ははっ、今から出かける所でお弁当代わりにつけてたんぜよ。あははっ、では凛殿、また。」
そう言うと虎之丞はいまきた道を駆け出す。
残されたのは手を差し出している凛のみ。
「……変な虎様。」
一度であれば、なにか不都合があっただけだろうと思うことも出来る。
だが、それが続くとなると話は変わってくる。
凛が痺れをきらしたのは数日後のことだった。
「虎様、何なんでありんすか。わっち、なにか気にさわるような事をしんしたか?それなら言っておくんなんし。」
「えっ、あの、それは。」
「虎様を不快にさせたのなら、謝りんす。でも何より、そんな態度が寂しいでありんす。」
普段あまり見せない不安そうな表情をみせる凛。そんな彼女の様子にかなう虎之丞ではなかった。
「そうではないぜよ。拙者が凛殿に不快な感情を持つなど…。拙者が変な事ばかり考えているだけぜよ。」
「変な事とはなんなんし?」
「そ、それは、き、き…」
「き?…なんでありんすか?」
もう正直にいってしまおう、それで彼女が満足するなら。そう、虎之丞が決意した瞬間、
「時空越境作戦を開始します。」
そう、久美の声が響いた。
作品名:彼の望み、彼女の覚悟 作家名:りんごあめ