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ゴーストハント 車椅子麻衣シリーズ 始まりの時 2

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「いいですが、資料室のモノには触れないでくださいね。私はよく分からないのですが、着物というのは少し大きめに作られているように見受けられます。松崎さんもいかがですか?」
綾子が目をキラキラさせてあたしを見る。
《いいよ?襦袢も何もかも一揃いそろってるから、使って?綾子は青龍と玄武どっちがいい?》
「そーね、玄武かしら」
《じゃあ帯と帯締めはこれかな?襦袢と帯枕は新しいやつ開けていいからね。なんなら髪飾りも選ぶ?》
真砂子と綾子はあたしが差し出した髪飾りの箱を覗き込む。
「こんなのも買ったの?」
《もらったの。呉服屋さんがあたしにって》
「初めてで当たり引いたのね、あんた。じゃあ、あたしはこれにしようかしら」
綾子は赤いほうの簪を手に取る。
真砂子は随分考えていたようだけど、髪留めに赤い組み紐がついてて、小花が揺れる物を選んだ。
確かに華美ではないけど、さりげない飾りが可愛い。
「あたくしはこちらをお借りしますわ。とても繊細で可愛らしいですわ」
2人が着替えに行ってすぐ、ナルが所長室から出てきた。
「どうしたんだ?騒がしいが」
《真砂子と綾子が着物に着替えてるの。袖を通してみたいっていうから。二人がどんなふうに着こなすのかも見てみたいし》
それから数分して資料室から二人が出てくる。
「素晴らしいですわ。着心地もとてもよろしいですし、黒地なのに重く感じない。刺繍があるからですわね」
嬉しそうにその場でくるんと回る真砂子。よく似合ってる。
「麻衣、この着物最高級品よ?お嬢のあたしでさえ、めったに着れないわ」
そう言ったのは綾子。
リンさんの言うとおり、着物は少々余裕を持って作られている。
だから綾子でもあたしの着物が着れるってわけ。
《お金、SPRの経費で落ちてるから、どのくらいなのかわからない。でもとっても気に入ってるよ》
「麻衣、今度お店を教えてくださいな。こんな堅実なお仕事をされているお店でしたら、安心して着物を新調できますわ」
「あたしも!そーいえば、あの蛍の着物もそこだったのよね?一度行ってみたいわ」
そしてワイワイと話は盛り上がって、日が落ちかけたころ、名残惜しそうに着物を畳んで畳紙に包んで、それをソファーに重ねて、二人は帰っていった。
「二人であのにぎやかさか……ぼーさんたちが加わったらすごいことになるだろうな」
《ごめんね?騒がしくして》
ナルはソファーから立ち上がって背を向けると、ボソッと
「麻衣が楽しいならそれでいい」
そう言って所長室に入っていった。
「照れているんですよ」
リンさんが縁起のいい微笑みで言う。
「私も谷山さんの着物姿は、とても似合っていると思います。ナルは谷山さんが着飾って、それも自分が貴女にあつらえたということが、とても嬉しいんです。男はみんなそうですよ?思いを寄せている女性に、自分がプレゼントしたものを、身に着けてもらうことがうれしいんです。他の人間が褒めれば褒めるほど、貴女を引き立てているのは自分だと自慢しているようなものですから」
そういうものなんだ。
そう思って、はっと気づく。
『思いを寄せている女性?』顔が熱くなる。
それって、ナルがあたしのこと……?
両手で赤くなった頬を隠して、リンさんの目から隠す。
……気づかれてるみたいだけど。
でも、呉服店で最初に着た着物を、めったにない優しい笑顔で
「似合っている」
って言ってくれた時のナルの顔、絶対に忘れない。