二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゴーストハント 車椅子麻衣シリーズ 始まりの時 3

INDEX|1ページ/8ページ|

次のページ
 
レセプション二日前にあたしたちはロンドンに飛んだ。
イギリスSPRは、あたしの体調を考えて、乗り換えなしの直通便、それもファーストクラスを手配してくれた。
ロンドンについた当日と、次の日はホテルに泊まることになった。
わざわざスイートを取る必要なんてないと思うのに、ナルは頑として譲らないで、結局スイートルームにエキストラベッドを入れて3人で休むことになった。
そしてレセプション当日の朝。
あたしは青龍の絵柄を選んだ。
帯は勿忘草色。
帯締めを雄黄にして、京都から帰って来た時に付けていた晴明桔梗印の帯留めをわざわざ選んで付けた。
髪をとかして、呉服店でもらった黒に金箔で桜と川が描かれてる髪留めをつける。
《おはようございます》
着替えを終えて広いリビングに出ると、そこにはすでに食事を終えて着替えた二人の姿。
リンさんはダークグレーのツーピースのスーツ。
ネクタイがあたしの帯と同じ勿忘草色に、梔子色のストライプだ。
ナルは遠くから見ると黒だけど、近くに寄ってみると分かる、ダークブルーのダブルブレストのスーツに、勿忘草色に、卵色の細い糸でさりげなく幾何学模様が織り込まれているネクタイ。
うわー、あれって趣味よくないと着こなせないよねー。
カフスボタンが金色にきらりと光る。
よくよく見てみるとリンさんのカフスボタンは銀色だ。
そう言えば昨日、帯は何色にするかって聞かれてたっけ。
あれってネクタイの色を合わせるためだったんだ。
これって、もしかしなくてもお揃い?

「おはようございます、谷山さん。朝ご飯はミルク粥です。そんなに急ぐことはありませんからゆっくり食べてくださいね」
このスイートはちょっとした料理が作れるようになっている。
今日もリンさんが朝ご飯を作ってくれたらしい。
「おはよう麻衣。よく眠れたか?」
ナルがさりげなく車椅子を押してくれる。
テーブルについて、あたしの顔を覗き込むナル。
あたしは笑顔で返事をした。
《うん!》
「今日使う式神は?」
《青龍を使おうと思ってる。見た目的にも迫力あるし、今日のレセプションにとっても相性がいいの。もちろんみんな良い子なんだけどね》
あたしはナルを見上げて返事をすると、美味しそうなミルク粥をいただくことにした。


「キャーっ、麻衣ちゃん!調査中の事故とはいえ、うちの責任だわ。どんなことでも言ってね。今の生活は辛くない?リンからの報告じゃ、ナルの家に一緒に住んでるっていうじゃない。どうしても嫌なら言ってね。オフィスの近くにバリアフリーの社宅を用意してもいいんだから!」
谷山さんに勢いよく抱きついたまどか。
私が押さえていなかったら、確実に車椅子ごとひっくり返っていただろう。
彼女こそ、もう少し落ち着きを持ったほうがいいのではないだろうかと、私は思った。
《生活は辛くありません。ナルと同じ家に住んでますが、部屋は別だし、電動のベッドも入れてもらって、朝も起きやすくなりました。他の所もバリアフリー化されてますから、全然不自由じゃありません。お心遣いありがとうございます》
谷山さんの言葉にまどかは瞠目する。
「麻衣ちゃん、貴女変ったわ。前は向日葵みたいだったのに、今は白百合って感じ。おしとやかで、礼儀正しくて、すっごい落ち着いてる。陰陽道の修行したって聞いたけど、こんなに変わるものなのね」
「彼女は優秀な陰陽師です。谷山さんは一人前と認められ、陰陽道の秘伝書の写しをいただいています。ナルは集中力不足でおまけで合格しましたが」
「え?あのナルが集中力不足で?」
まどかが驚いている。
無理もない。
あのナルが集中力不足を指摘されたのだから。
「ええ。そのせいで、この話題を振ると子供のようになってしまいまして……」
「リン!その話は余計だ」
少しむくれたナルが返事を返す。
それをなだめるのは谷山さん。
昔のように大声で言い合いをしなくなった二人。
それはそれで少し寂しい気がした。
レセプション会場に入ると視線が谷山さんへと向いた。
がやがやと噂に揺れる会場。
谷山さんは毅然とした態度で車椅子が上れるように用意されたスロープ側に回った。
「Ms.マイ・タニヤマでよろしいかな?」
《――サー・ドリーでございますね。わたくしSPRの末席に名を連ねさせていただきます、マイ・タニヤマと申します。どうぞマイとお呼びくださいませ》
膝の上で手を重ね、すぅっと美しい所作でお辞儀をする谷山さんに、サー・ドリーは嬉しそうに頷くと、ナルのほうを向いた。
「オリヴァー、よい子を見つけてきたね。とても礼儀正しいし、英語も完璧じゃないか。それに何より美しい。彼女こそ、オリエンタルビューティーだね。それに陰陽師だって?彼女を伴侶にしたらさぞかし幸せだろう。なぁ、オリヴァー。彼女と一緒になるつもりはないのかい?」
谷山さんは顔を真っ赤にしてうつむく。
ナルは反対に随分と自信たっぷりにサー・ドリーにこう返した。
「すでに捕まえていますよ。後は彼女次第です」
サー・ドリーは満足そうに頷く。
「おお、そうか。いい話を期待しているよ。マイ、楽しんで行ってくれたまえ。下の馬鹿連中が、君に式神を使わせようとしているから、気を付けるんだよ?」
《お心遣い、痛み入ります》
その後、主要な人物に挨拶して回った谷山さんだったが、いつの間にこんなに英語がうまくなったのだろうと思うほど美しい発音で、その上、前日に渡したにもかかわらず、主要人物の名前とパーソナルデータを完全に覚えているらしい彼女は、礼儀正しく、そして、たまに笑いのおきるような会話をしている。
谷山さんの着物もとても目立っており、ドレス姿の来客たちは、ため息をつく。
それほどまでに似合っていた。
少し強引だが着物を新調させてよかったと思う。
レセプションが始まり、少々酒の入った進行役が何とか進行していく。
これがSPRのレセプションかと思うと、SPRも落ちたものだと思う。
サー・ドリーの挨拶が終わり、上層部のメンバーが挨拶をしていく。
毎度毎度思うが、この意味のない挨拶をカットしていけば、レセプションはもっと良くなるのではないだろうか。
やがて、新人紹介が始まる。
《後ろの方までテレパシーは届いておりますでしょうか》
谷山さんの車椅子はナルに任せ、私は一番後ろでテレパシーの確認をする。
そして改めて思う。
彼女は素晴らしい能力者だ。
このレセプション会場はかなり広い。
それをカバーしてしまうほど強いテレパシーを使っているのだ。
「あの少女はいったい」
そんな言葉があちこちから聞こえる。
SPR日本支部としても誇らしいことだ。
《初めまして、マイ・タニヤマと申します。先日、所属しておりますSPR日本支部のオリヴァー・デイビス博士より、正式にSPRへの登録証書をいただきました。至らぬところもございますが、どうか末席に名を連ねさせていただきたく存じます》
すぅ……と綺麗に頭を下げる谷山さん。
すると、会場の人間たちが盛大に拍手をした。
こんなことは私がSPRに入って以来初めてだ。
谷山さんが壇上から降りようとしたとき、壇上から見て右の一番奥のテーブルから火の手が上がった。
慌てて駆け寄ろうとしたとき、ふいに呪を読むテレパシーが聞こえた。