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ゴーストハント 車椅子麻衣シリーズ 始まりの時 3

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夕食は奏が腕によりをかけるといっただけあって、いつも以上に華やかだった。
彼女は努力することを惜しまない。
平たく言うと凝り性だ。
一度はまるととまらない。
洋食を極めた彼女は、いつの間にか中華にも手を出して、野菜だけで満漢全席を作ってしまいそうな勢いであらかたの料理をマスターしてしまった。
それでも飽き足らず、和食にも手を出して、今ではきっとどの国の料理人に会っても負けないだろう、プロ顔負けの料理人と化した。
彼女自身が血の通ったものを食べられないので、奏は野菜料理のみでどんな料理でもつくってしまうのだ。
昔誰かが言っていたが、料理上手の妻を持つと幸せだという。
私もそのとおりだと思う。
奏と一緒に居ると二人の食事の時間が楽しくて仕方がない。
谷山さんたちも満足してくれたらしく、谷山さんは散々ベンたちと遊び倒した後、ソファーで眠ってしまった。
タオルケットをそっとかけて、ナルが谷山さんの頭を撫でる。
ふにゃりと緩む頬に、様子を見ていた私たち3人は思わず笑ってしまった。
これから彼女はどんな世界をつくっていくのだろう。
奏がそうであったように、きっと辛い道のりだろう。
それでも・・・
「大丈夫。麻衣にはナルがいるから」
いつの間にかソファーの背に寄りかかって眠ってしまったナルを見て、奏はそう言って微笑んだ。
「ボクたちが二人を守ってあげればいいんだよ。ボクはこっちでバックアップする。興徐は近くで二人を見守る。大丈夫だよ、興徐」
ふわりと奏に抱きしめられて、花の香りに包まれる。
そうだ。私は自分のできることで、彼らをバックアップする。
「貴女と一緒になれて、本当によかった」
「いまさら?」
「再確認したんですよ」
私たちはナルたちにタオルケットをかけると、二人で寝室へと向かった。


イギリス最終日。あたしはまどかさん達に拉致られていた。
《ま、まどかさん?!》
「ふふふっ、麻衣ちゃんにはこれからお着替えしてもらうわ。髪もちゃんとセットしてあげる。楽しみね~」
「マイの晴れ姿、楽しみだわ」
嬉しそうなルエラ。
あたしは朝から仕組まれたかのように、ナルとリンさんに車に乗せられて、大きなお屋敷につれてこられた。
ドアを開けると、一面に敷き詰められた真っ赤な絨毯が最初に目に入った。
そして、まどかさんと朝から姿の見えなかったルエラがいて、満面の笑顔のまどかさんに車椅子を押されて、大きなドアの前に連れてこられて・・・今に至る。
《き、着替えるって、あたし何も・・・》
「だーいじょうぶ♪こっちでちゃんと用意してるから。着付けは奏ちゃんが手伝ってくれるって♪」
着付け?じゃあ着物なんだ。
あたしは少し安心した。
まどかさんはおしゃれな人だからへんな服は選ばないと思うけど、ドレスとかだったらどうしようって正直思っていたから。・・・ん?
《奏って着付けできるんですか?》
「できるよ。付け焼刃だけど」
ドアが開き、奏が中で微笑む。
窓際の着物掛けにかけられた着物は、あたしが今まで見た中で一番豪華なものだった。
《これ・・・あたしが?》
「そうだよ。麻衣は今日のパーティーの主役だから」
いつの間にか車椅子の後ろに奏が回って、ふわりと花の香りに包まれた。
《パーティー?主役?》
「うん。君の運命の日だよ」
あたしは奏に連れられて、部屋の奥へと進んでいった。


パーティーは、サー・ドリーの挨拶で幕を開けた。プライベートな、といっても、サー・ドリーの関係者はとんでもない人数だ。
いつもの僕なら、こんなパーディーには出席したくないし、出席しない。
ジーンがいたころは代役をやらせていた。
あいつがいなくなって、僕は一人になった。
寂しい?
考えたこともなかった。
いるのが当たり前だった奴が、突然いなくなるなんて。
それも、遠く離れた異国の地でなんて。
けれど、周りの人間は、僕を腫れ物扱いした。
可哀想と、ことあるごとに言った。
僕がジーンを探しに日本にいったのも、あいつを探すためだけじゃなくて、そんな周りの人間から逃げたかったからかもしれない。
日本のメンバーたちは、僕がオリヴァー・デイヴィスであることを知らない、渋谷一也という一人の人間として扱ってくれた。そして、すべてを知ってからも、それは変わらなかった。
そして――僕は麻衣という唯一無二のものを手に入れた。
ドアが開き、ヴァイオレットのドレスを着た奏に車椅子を押されて、鶯色で御所車の柄の着物を着た麻衣が入ってくる。
髪はきれいに結い上げられて、簪が揺れる。
驚いた表情の麻衣。僕はスポットライトの中、麻衣の車椅子に近づき、奏から麻衣を受け取った。
「紹介しよう。マイ・タニヤマ博士だ」
大きな拍手で迎えられる麻衣。
僕は車椅子を押して、サー・ドリーの横に並んだ。
「今日は、皆さんにサプライズを用意したのだよ」
ドリー卿が、僕に合図する。僕はポケットに入れていた小さな箱を麻衣の前に差し出す。
中身は・・・ダイヤの指輪。
麻衣に贈る、婚約指輪。
「麻衣、これからもずっと僕のそばにいてほしい」
「オリヴァー、そんな回りくどい言い方では、彼女が困ってしまうよ」
ドリー卿に言われ、もう一度言い直す。
麻衣に、永遠を。


「Congratulations!」
沸きあがる歓声。拍手。
何が起こったのかわからなかった。
ただ、ナルがあたしに永遠をくれたことだけが現実だった。
触れる唇。指にある確かな重さ。
ああ・・・あたし、幸せになれるんだ。
《ナル》
「なんだ?」
テレパシーなのにちょっと身をかがめてナルが聞く。
《あたし、いつでもあなたのそばにいるよ》
「安心しろ。嫌でも引っ張っていくから覚悟しろ」
ナルらしい答え。
いつでもナルらしくいて。あたしは、いつでもあなたのそばにいる。

婚約を盛大に祝われて、次の日、あたしたちは日本へと帰国した。
婚約指輪を見せて、ナルと婚約したことを日本のみんなに伝えたら、ぼーさん以外のみんなに喜んでもらえた。
ぼーさんには泣かれたけど。
でも、最後にはお祝いしてくれた。
お父さん、お母さん、ジーン。
麻衣は、幸せです。