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【腐向け】歓喜の日【普独】

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「20年が過ぎて、でも俺達はまだ…そういう問題を抱えたままだよな。特に東側の失業率は低いままだし。なんかどっかの調査でさ、国民の七人に一人が、ベルリンの壁の再構築を望んでるって話も聞いた」
一拍。
「我侭だけどさ、頼むわ。それだけは止めてくれ。また国を、ベルリンを分割するとなったら…俺と弟は多分また引き離される。せっかく今…昔一緒に暮らしてたベルリンの家で、また一緒に暮らせるようになったってのに。それだけは勘弁してくれ。…どこの経済も冷え込んでるこの頃だ、劇的には、すぐにはきっと…経済状態が回復したりはしない。でも、俺もドイツも、上司も…身を粉にして働く。国民の幸せだけを考えて、一生懸命働くからよ」
問題は山積み過ぎて、正しい道も分からない。それでも、とプロイセンは思う。
己が歩んできた苦難の日々、戦いで身を立てて来た時代。
自分の身を滅ぼすかもしれないと、かの宰相に止められても進めたドイツ帝国統一。
それを平和の見えてきた今振りかえる事が出来るというのは、幸いなことだと思う。
全てはこの時の為に、ドイツがヨーロッパの一大国としてあるこの時代の為にあったのだと…今は思う。
だから今を、弟と共に大事によりよくして行きたいと、そう思った。
「俺と弟は国だ。でも、手が届く範囲は…お前達と変わらない。俺達より頭良くて才能あってって奴もきっとここに…一杯いるだろうし。だからお願いだ。もう少しだけ、俺達を信じて力を貸して欲しい。『ドイツ連邦』を、より良い国にしていく為に、より多くの力が必要なんだ」
国民達を、まるで息子や娘のように愛おしく思う。
そんな自分を自覚し、プロイセンは己を年寄りだよなと再確認した。
もう現役の国の座からは退いた。でももう少し手を出させてくれよなと思いながら。
「…大戦の時代、俺達は大きな罪を犯した。でも、世界の中で…国々は等しく己の罪を認め、償いの道を歩むことになった。それは俺と弟も同じだ。今も償いの途中で…一度と言わず誤った国だからこそ、世界平和を考えていかなきゃならないと思ってる」
な、と兄弟を見やれば、もちろんとドイツは頷いた。
「だから、『東西ベルリン』が無くなって20周年の今日改めて頼むわ。皆で一緒に、頑張って行こうぜ!東ドイツを忘れろとか、西に馴染めとか言わねぇし言う権利もねぇ。だけど、俺が求めたのは東西ドイツじゃねぇ。弟の『ドイツ』だ。俺をもう、『東ドイツ』にしないでくれよ。なにより」
ぎゅ、と握った腕をもう一度上げた。指を絡め、きつく握って。
笑えよとマイクに入らない声で弟に囁けば、ドイツは顔を薄く朱に染めながらもjaと一言返して。
ゆっくりと不器用な笑みを作り、国民達に正対する。
…ああ、幸せだなあとプロイセンは実感し、晴れやかに笑った。
大きな声で、告げていく。
「俺様とドイツは、世界一の仲良し兄弟だからな!俺達兄弟に不可能な事なんて何もねぇよ!きっとこれからも『ここ』を素晴らしい場所へと、ゆっくりではあるだろうが変えていけると信じるし、実際に行動もしていく。ちょっともたついたり失敗もするかもしれねーけど、いっちょ寛大な気持ちで…これからもよろしくなっ」
大きな歓声と、拍手が鳴り響いた。
止まぬ拍手の中、プロイセンからドイツへとマイクが渡される。
結局こうなったかと、ドイツは右手を上げたまま左手で受けとって。
「あー、その。アドリブ演説の得意な兄貴が殆ど俺の言いたい事を言ってくれたので、俺から言うことはそう無いのだが…」
ふっと表情を緩めて、兄と顔を見合わせて。
「これからも…30周年も50周年も、皆で祝って行けたらと…そう思う」
見渡せば、上司と共にいるイギリスやアメリカの姿もあった。
だから…と言葉を接いでいった。
「世界の国々と上司の皆さん、ドイツ連邦の国民達、連邦議会の皆、それから…兄さん」
国々を見、国民を見渡し、後ろに立つ上司他の政府要人を見、そして最後に隣に立つ兄を見た。
兄は、ん?と首を軽く傾げ、柔らかく笑ってくれている。頭に乗った鳥も羽を広げて楽しそうにしていて。
…幸せ、だな。
しみじみと思った。
頑張ろうと思う。自分を信じてくれる…今苦しい状況にある者も多い国民達の為にも、強い国になりたいと…いや、色々なことをちゃんと出来るような国になりたいと、心から思った。
だから、告げる。
「俺はまだまだ未熟な国で、きっとこれからも多くの助けを必要としてしまう。だが、少しでも立派な国になれるよう努力してゆくつもりだ。だから、その…上手く言えんが、これからも宜しく頼む」
再びの、落雷の如き拍手が起こった。
アメリカが上司と共にはしゃいで、イギリスが紳士らしく上品に手を打っている。
ロシアは目をしならせての笑顔で、フランスは全く仕方ないなぁといった小さな呆れの表情で、イタリア兄弟が上司の両隣に立って。
後ろでは政府の要人達が、静かな笑顔で。
拍手が止まぬ中、音が起こっていく。
東西ドイツ統一の象徴ともいえる曲、ベートーヴェンの交響曲第九番だ。
歓喜と喝采の曲の中、そろそろだるくなってきた腕を、兄弟は尚も下ろさなかった。
歩み出た上司に、ドイツからマイクが渡る。
ようやく腕を下げて彼女に場を譲り、下がることとなった兄弟の姿に誰かが叫んだ。
ただ一言、『万歳』と。
言葉が、皆の口から続いていく。
記念の日を祝う叫びが、老いも若きも、壁を知るも知らぬも、続いていく。
ここからまた始動するのだと、意気の咆哮を青空に響かせていくように。

―万歳、ドイツ連邦、統一ドイツ万歳―

声の止まぬ中、兄弟は顔を見合わせて。
本当に幸せそうに、笑いあった。