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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第一話「ラピス・フィロソフォラム」

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#0 序章



 ここは何処だろう。
太陽は身を焦がし、血のような赤が見覚えのある町並を一緒くたに染め上げる。

足元には何もない。 途惑うが、まるで不可視の床があるように、何事も無く身体は自分を支えていた。 真正面には町唯一のランドマーク。 夕日を背にした外観は、まるで教会の燭台、 ―死者に手向ける送り火のように錯覚する。
不穏な気配を纏う、夏の生温い風が顔を撫でた時、少年はこの風景が現実のものではないと感じた。
商業ビルの隙間を縫う少年の足捌きは徐々に速まり、駆け足、やがて全力の疾走に変わっていく。 立ち入れる所には立ち入った。 一中学生が自ら足を踏み入れる場所などここにそう多くは無い。
町往く人の中に少年の奇行を気にかける者は何処にもいない。 今や彼を取り巻く殆どすべては非現実に飲まれてしまった。 この子供にも町の異様を奇妙に思っていられるほどの余裕は無い。 町でまだ行っていないのはあの場所だけだ。

いなくなった親友がいるとすれば、きっとあの場所だ。

いつしか彼は、タワーの展望台真正面に辿り着く。 最早人影など塵程にも伺えず、影と光が視界の殆どを占めていた。 一〇〇メートルも無いその先に、願っていたものが、見えた。 ボブカットの揺れる亜麻色、華奢な背格好。 記憶に残るその姿と、寸分違わぬ出で立ちで。
「    !」
反応は無い。 問い掛けは雑踏に飲まれてしまったのか。 金髪の少年はただ虚空に立ち尽くす。
「どうしてッ、どうして居なくなったんだよ! 休みも一緒に遊ぼうって言ったのに、勝手に居なくなって、勝手に顔も見せなくなって…!」
答えない。 彼らの周囲だけ、どこか別の世界へ切り貼りされた壁があるかのように。
―金髪の少年は何かを手にしている。 彼が気付いた時、雑踏は不意に拡声器にかけられたような騒音に姿を変えた。 耳を押さえても弱まらない爆音。 それどころか加速度的に音響はボリュームを上げていく。 身も心も悲鳴を上げ、立つ事もままならず、苦痛で涙がぼろぼろと溢れ、目も開けられないさまで、それでもなお、彼は親友のもとへ、探し求めた欠片のもとへ。
そして叫んだ。
「帰って来て、顔を見せてよ! 一度っきりでも最後でも良い、俺はお前とまた一緒に笑いたい!」
叫びと轟音も融けて混ざる。 金髪がゆっくりとうねり、
―欠片は此方に振り向いた。 驚くほど穏やかな、初めて見る微笑みを浮かべ。

 …だから、帰って来て。


彼らは赤に飲まれた。