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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第二話「ホープ・ダイヤモンド」

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「エリゼベータはまだやっとるん」
 「…ああなっては、しばらくはそのままでしょうね」
彼女は見知らぬ生徒達とひと悶着起こしていた。 厳密には見知らぬ生徒、ではない。 廊下越しに見た魔術部員達。 一人は金髪緑眼。 遠目ながら、恐らくファッションではない無駄に太い眉毛に目が行く。 髪もボサボサで不良っぽくあまり近づきたくない雰囲気だ。 もう一人はプラチナブロンドと言った薄い金髪に紫眼。 大きな瞳だが目元はそうはっきりしておらず、むしろ眠たそうに見える。 最後の一人は茶髪とも金髪ともつかぬ微妙な髪色だが、髪よりも血の様に赤い眼が印象的だ。 声を荒げているのは赤眼の魔術部員が主で、他の二人は一歩後ろ、呆れているというか、茫然と見ているというか、それとも揉め事に無関心なのか。 あまり口も挟まずに、最低限荒っぽい暴力だけ抑えるつもりらしい。 喧し過ぎて何を言っているのかも良く聞き取れないが、どうも赤眼の魔術部員とエリゼベータは前から相当な不仲だったという事は分かった。
 「―何をするか判らないのに、渡せるわけが無いでしょう!?」
 「そうかい。 じゃあもう、おいら知らないから。 泣き付いたって知らないからね!」
最後に耳に入ったのは意外と建設的にも思える口げんかだった。 紫眼のものと思しき携帯の着信音。 それに気づき小さな画面を三人で食い入るように見つめた後、魔術部員達はあれだけの騒ぎを起こしておいて
何事も無かったと言わんばかりにそそくさと退散していった。
 「ホンット… グリーフシードは確保出来てよかったです」
煮え滾った怒りを抑えているつもりだろうが、彼女の語り口は明らかに激情が混じっている。 何か不味い事でも言ったのか、ローデリヒは眼鏡を直しながら視線を態とらしくエリゼベータに向けた。 一旦口を吃らせ、再度口を開く。
 「グリーフシードは魔力の源です。 あれが尽きるとソウルジェム… その卵型をした宝石をそう呼ぶのですが、その、ソウルジェムの持ち主は、祈りを力に転換できず、魔法が使えなくなってしまう」
 「魔法って、あの、ゲームとか映画とかに出る様な。 物凄い力が出たり、傷があっという間に治ったり、炎とか光とか、そういうものを操るような?」
 「ええ、私達、魔法少年や魔法少女のそれは、出来る事はかなり限られてはいますが」
 「そしてグリーフシードは、魔法少年たちの力の源、と」
 「ええ、最近はそれを落とす魔女に遭う事自体減っていますし。被害が減るのは良い事ですが、魔女を狩らねばならない、私達の首が回らなくなっては困ります」
 「魔女… 俺達が今朝遭ったのも魔女だったのかな」
 「ええ、 …ええ?」
 「もしかしたら、その、今朝の魔女も、大事なグリーフシードを落としてた。 かも知れない、って」
 「「ええ!?!?」」
思いもしなかった掘り出し物。 と、多大なミス。 町や町の人々にとっての呪いの宝石も、彼らにとっては
ホープダイヤモンド… 希望の金剛石だった。
魔法少年達は慌てて駆け出した。

 夏の夕暮れ、ときわ中のセーラー姿の長い影をよそに、中学校の接する大通りから、僅か一本奥まった道。
たった道一本の違いで、町並みは変わり、煌びやかな電光看板の裏、古びた貸しビルやシャッター商店街、人気のない、廃墟同然のトタン住宅が所狭しと立ち並ぶ、陰気な世界へと早変わりしてしまう。

 《反応は―消えた。 恐らく貴様の予想通りだ。 報酬は… これの様だな、これから目標に向かう》
奇妙に硬質な口調。 だが声はまだあどけなさが残る。 第二次性徴期前後の少年だろう。
電話ボックスの中、機種落ちして長く経つであろう折畳み式の携帯を懐に入れ、パーカーを目深に被る少年は、電話帳の間に挟まった茶封筒を手に取った。 万札が数十枚。 子供の小遣いの範疇を大きく超える巨額だ。
 「あれは、いや」
 「彼らは何があろうと、誰であろうと。 許して、なるものか」
まばらな街灯が幾つか灯る黄昏。 短い金髪の影、その口元は苦々しく、苦悩の感情を僅かに零していた。