無自覚距離
「ぞわぞわってどういうことなの?」
「別に目が合うくらいどうってことなくないか」
横で聞いていた山口と日向が口を挟む。けれど、影山にその言葉を拾う余裕はないみたいで。
「お前、そういうの得意そうだろ!」
月島のTシャツの胸ぐらを両手で掴みながら言い放った。
「無茶言わないでよ意味わかんないから」
迫られた月島に逃げ場はなく、叫び返すしかなかった。
どうして鈍感な人間ばかりが周りに集まるのだろうと月島は泣きたくなる。そもそも、影山の行動と感情がどんな理由かなんて普通の人にはすぐに分かるはずだ。
「そのくらい僕を巻き込まないで自分で何とかしなよ!」
馬鹿に付ける薬なんてないし、恋の病を扱う病院だってあるはずがない。
必死に縋り付く影山を引っぺがして、月島は部室を後にする。出る間際に、縁下に別に意味でお疲れと労われたのは気のせいだったことにしたかった。