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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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第73章 幻惑の罠


 ウェイアード、大イースト海北部に、漆黒の霧に包まれた謎の島があった。
 毒々しい色をした花が咲き乱れ、上空は木々の葉と瘴気により、まるで見渡すことができない。
 この島は、遠い昔からある、自然の生み出したものではない。
 魔王デュラハンがしもべ、スターマジシャン、シレーネの魔術によって生み出された、超自然の島である。
 シレーネは、海上にこのような島を作り上げることにより、エレメンタルの灯台に代わる礎を築き上げた。
 大海の上に築くことで、海に宿る、無尽蔵ともいえる水のエレメンタルを、無駄なく取り込むことを可能にしていた。
 真っ黒な砂で満たされた暗黒の浜辺に、群青色をした球体が姿を現した。そしてその球体は、三つの光の球を放つ。
 虹色に光る、エナジーの輝きに包まれながら、三つの球体は人の姿を成していく。それぞれ無造作な金髪に碧眼を持つ少年、大柄な噴火した火山のような頭をした少年、そして小柄で幼い、一見少女のようにも見える少年の姿が露わとなった。
「ふう、ここがスターマジシャンがいる所か……」
 ロビンは両手を見て、エナジーの輝きが消えたのを確認する。そして毒々しい樹海に目をやった。
「趣味の悪い所だな……、いかにも毒がある、つってるような花ばっか咲いてるしよ」
 ジェラルドはその風景に顔をしかめる。
「長くこの島の空気を吸っていては、間違いなく体がおかしくなりますね……」
 イワンは、瘴気のせいで、昼にもかかわらず暗い空を見上げた。
 ふと、ロビン達をハイディアの地から送ってくれた群青の球が、ロビンの手元に吸い寄せられるようにやってきた。
 ロビンの手元に入った球は、あちこちがひび割れており、少し力を込めれば、いとも簡単に崩れ去ってしまいそうである。
「アネモスオーブが……」
「こりゃ、もう一回使ったら、間違いなく壊れるな……」
 退路はほぼ断たれたようなものだった。もしも再び球の力を解き放ち、ハイディアに戻れば、スターマジシャンを止めることはできなくなる。
 この島の辺りの海域は漆黒の霧に包まれているだけでなく、岩礁が突き出ている。ただでさえ視界が悪いというのに、船で来ようものなら海の藻屑と化してしまう。
 空にしても同様である。暗闇に包まれた空を進んでも、この島を見つけることは不可能であろう。
 また、エナジーで来ようとしても、スターマジシャンの正確な位置を特定できないことには、『テレポート』も使えない。
「もう、前に進むしかないな」
 ロビンは決意を込めて言った。帰るときは、スターマジシャンの首を携えなくてはならない。
「そうだな、よし、急ごうぜ!」
「ええ、行きましょう! それに、早くに決着を付けなくては、ボクらまで瘴気にやられます。急いでスターマジシャンを探しましょう!」
 三人顔を合わせ頷くと、毒々しい樹海へと足を踏み入れた。
 樹海は入り来る者を拒むように、とても一筋縄ではいかないものだった。
 そこら中に咲く花は、世界を覆っている瘴気と同じ成分を持つ花粉を振りまいており、ロビン達に脱力感を与える。
 高い木々が生い茂っており、それが空気の流れを滞らせ、樹海の中を瘴気で満たしている。必然的に、少なからずロビン達へダメージを与えていた。
「げほ……、ごほ……! ああ、ちきしょう! 喉がイガイガしやがるぜ……」
 ジェラルドは何度も咳払いした。
「あまり息を吸いすぎるな。浅い呼吸を意識するんだ」
 ロビンは二人に注意を促した。
 ロビンには予測していたことがあった。この島がどうしてこのような風体をしているのかという事である。
 ウェイアード全体を覆う瘴気を生み出したのは、スターマジシャンである。あの魔女の手に掛かれば、瘴気に満ちた島を作り出すことは、可能であろうことだった。
 更に、このように毒に侵された空気を振り撒くことにより、侵入者の体力を削り、中心部にたどり着く前に倒れさせる目的を想像できた。
 まさに、この島そのものが敵である。スターマジシャンは、ロビン達が攻めて来ることを読み、このような姑息な手段で、彼らを消耗させようとしているのだった。
 ロビンの考えは、見事に的中していた。
「うう……」
「イワン!」
 ロビンは、前に倒れ込みそうになったイワンを、抱き止めた。
「おいおい、大丈夫かよ?」
「……すみません、急に目眩が」
 戦闘能力が上昇したとはいえ、もとより体力のないイワンが、真っ先に瘴気の影響を受けてしまったのだ。
「ちょっとどこかで休もう、オレ達まで倒れちゃまずい……」
 しかし、ロビンは言うものの、辺りを見渡して安全と思える場所がない。どこもかしこも瘴気を振り撒く木々や花ばかりである。
「一体どうしたら……」
「ロビン、敵だ!」
 ジェラルドが叫び、彼が指さす方を向くと、そこには魔の瘴気で活性化した魔物がこちらに近付いてきていた。
「くそっ、こんな時に……!」
 魔物の気配は、前方のみにとどまらなかった。
 ロビンはイワンを抱えたまま、ジェラルドと背中合わせになり、顔だけを向けて耳打ちする。
「ジェラルド、分かるな? オレ達いつの間にか奴らに囲まれてたようだ」
 瘴気の影響で体に少なからず不調を来しており、気が付くのが遅れてしまった。
 魔物は四方からぞろぞろと集まってきており、その数はおそらく十を超えていた。
「……グルルルル……!」
「シャアァァ!」
 巨大な熊の姿をした魔物が、地の底から響くようなうなり声を上げ、大きな山猫の魔物は牙を剥き、威嚇してくる。
 逃げ場はない。戦うより他に道はなかった。
「やるしかない。イワン、ここはオレ達が何とかする。どこかに隠れててくれ」
「……こんな時にお役に立てず、すみません……」
「気にすんな、体力を回復することだけを考えな」
 ジェラルドの言葉に頷くと、イワンは近くの茂みの中へと身を隠した。
 イワンが隠れたのを確認すると、二人は剣を抜き放った。
「ジェラルド、オレ達も体力に余裕はない。無理に奴らを全滅させようとするなよ」
「分かってるよ、こいつら相当強い。何とか切り抜けるぞ!」
「ああ、いくぞ!」
 ロビンとジェラルドは、それぞれ向いている方向へ攻めた。
 次々に襲いかかってくる魔物を、二人は斬り捨てていく。
 超兵糧丸によって力を増した二人は、これまでの修行の成果も相まって、強敵の群と互角に渡り合う事ができた。
「グギャアア……!」
 ロビンの一閃により、巨大な熊の魔物は地に崩れ、霧散していく。
「キシャアァ!」
 ロビンの背後から山猫の魔物が爪を立て、襲いかかってきた。
 ロビンは攻撃を読み、体を翻し、爪による一撃を逃れる。
「甘い!」
 ロビンは、攻撃を外し、大きな隙をさらす魔物の首に剣を突き刺した。どす黒い血が宙を舞う。
「おらよ!」
 ジェラルドは全力を込めて剣を振るう。ジェラルドは魔物の体を真っ二つに割った。
「キューイ!」
 鳥型の魔物が空中から急下降し、ジェラルドをその矛先のような嘴で、貫き通そうとした。
「うざってえんだよ!」
 ジェラルドは魔物の嘴を寸での所で掴み、一気に上へ曲げることにより首を折った。