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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 魔物との戦闘は、ロビン達の一方的な攻撃により、有利に見えたが、その実逆であった。
 余計なダメージを負わないよう、一撃でしとめてきたが、魔物の数はなかなか減らず、二人は疲弊し始めてしまったのだ。
 修行の成果か、強敵揃いの魔物も楽に倒せていたが、如何せん数が多く、そろそろ敵から攻撃をもらうようになった。
「くそ、倒しても倒してもきりがないぜ……!」
 ジェラルドの体は、掠り傷が目立ち始めていた。
「一体あと、どれくらいいるっていうんだ……?」
 ロビンは向かってくる魔物を蹴散らしながらも、息を切らしていた。
 そうこうしている間にも、魔物の数は止まることを知らず、その数をどんどん増やしていく。
「くそ、また新手か……!」
 ロビンは魔物へと剣を振る。しかし、疲労のためか、これまでのような力は出せず、打ち損じてしまう。
「ぐあっ!」
 ロビンは魔物から返しの手を食らってしまった。肩口からぼとぼとと血が流れ落ちる。
 ロビンが怯んだ隙を突き、魔物はさらなる追撃を加えようとする。
『スパイア!』
 ロビンは指先から土の槍を作り出し、追撃しようとしていた魔物を貫き通した。
 魔物は事切れ、霧散していった。
「くうう……」
 ひとまず襲いかかる魔物を倒したが、ロビンは肩口の傷に顔をしかめた。
 傷口は思いの外深く、出血が激しい。すぐに止血しなければ危険な状態であった。
 しかし、状況はそのような猶予のあるものではなかった。
「ロビン、大丈夫か!?」
 ジェラルドが駆け寄ってきた。
「来るな、ジェラルド!」
 ロビンの制止も虚しく、ジェラルドは背後に迫っていた魔物により、背中に爪を立てられた。
「うおおっ………!」
「ジェラルド!」
 ジェラルドは地に膝を付いてしまった。
 ロビンははっ、と気が付いた。
 辺りはいつの間にか、数百、あるいは数千の軍勢を率いるような数の魔物に抱囲され、赤く、不気味に輝く魔物の眼光は虫の大群のように蠢いていた。
 二人は共に手負いである。ただでさえ強力な魔物を討つなど、とても不可能な事だった。
「くそが……! アリンコみてえに群れやがって……」
 ジェラルドは恨めしそうに、魔物大群を睨み付けた。
「くっ、もうどうすることもできないのか……」
 ロビンに諦念の感情が浮かんだ。
 スターマジシャンを討つ以前に、島の瘴気にやられ、その上数多の魔物を相手取り、体力を大幅に消費してしまった。仮にこの魔物の軍勢を退けてスターマジシャンの元にたどり着いたとしても、万に一つも勝ち目はない。
 ウェイアードを救うことはできなかった。ロビン達はここでこの大量の魔物に食らいつくされ、早晩世界は全て魔界と化すであろう。
「すまない、みんな……!」
 ロビンは覚悟を決めた瞬間、魔物の軍勢は一斉に襲いかかってきた。
 全て終わる、そう思っていたときだった。
「おーい、いつまでバカやってるつもりだお前ら?」
 聞き慣れた声がロビン達の耳に響いた。
 まだ変声前の声が特徴的であり、それによって彼をより少女のように思えてしまう。
「その声は……!?」
「揃いもそろって何やってんだ、バカやろうどもが!」
 この声の持ち主ならば、絶対に口にしないであろう言葉づかいが再び響くと、魔物の軍勢は一瞬にして消えてなくなった。まるで、もともとそこに存在していなかったかのようであった。
 更に、ロビンには気付いたことがあった。
「血が、止まっている?」
 出血が止まっているどころか、切られたはずの皮膚、さらには衣服にも傷どころか、汚れすらもなかった。
「あんなにジンジンしてた背中がちっとも痛くねえ……? おい、イワン、どういうことだ、姿を見せろ!」
 イワンの声は呆れたようになった。
「イワンはお前だろうが……」
「何を言って……?」
 不意にざくっ、と音がした。同時にイワンの姿が明らかとなる。
 しかし、そこにいたイワンは、ロビンの知る彼と違っていた。
 赤い髪をしており、背も高い。地面には先ほど、彼が突き刺したと思われる謎のボールが転がり、彼が持つ刀は、漆黒の刀身を持っていた。
「お前、イワンじゃ、ないのか?」
 赤髪のイワンはまた、呆れたように溜め息をつく。
「だからそう言ってるだろ……」
 イワンではない、と言う少年は、確かにイワンと違って大柄で、赤い髪をしている。しかし、ロビンには彼をイワンであるとしか考えられなかった。
「うあっ、くっ……!」
 突然ジェラルドは頭を抱え、苦しみだした。
「どうした、まさか傷が開い……!?」
 ロビンは全てが突然の出来事に、言葉を失ってしまう。
 今度はジェラルドの方が変化し、逆立った赤い髪が金髪になり、身長がロビンよりも低くなったのだ。
「ジェラルドが、小さくなっただと!?」
 赤髪のイワンはまたしても溜め息をつく。
「全く厄介なのに引っかかったものだな……。ボク……、いや、オレがジェラルドでそこにいるのがイワンだ」
 ロビンの頭は混乱しきっていた。赤髪のイワンが何を言っているのか全く分からない。
 赤髪のイワンが持つ、刀に貫かれた謎のボールが霧散した。その時だった。
「うぐっ!」
 突然、ロビンは頭に衝撃を感じ、目を堅く閉じた。そしてゆっくりと目を開くと、再び明らかとなった風景に愕然とする。
「な、なんだここは……!?」
 ロビンの視界に映ったもの、それは毒々しい花も、木も茂っておらず、瘴気に満ちた霧もない。
「何もない……? そんな、確かにオレは樹海にいたはず……。それに、魔物の群は……?」
 そこは、ただの木が生い茂る林道であり、魔物の気配も全く感じない。
 本当に何もない、ただの藪でしかなかった。
 そして赤い髪をしていたイワンは、今ははっきりと、ジェラルドの姿をしている。
「ジェラルド? じゃあ今まで一緒に戦ってたのって……」
 ロビンは小柄になったジェラルドを見る。
「ぐっ! ……っは! ボクは今まで何を……!?」
「イワン!」
 毒霧漂う中、倒れてしまったはずのイワンがそこにいた。
「……やれやれ、これで元通りか。全く、厄介だったぜ。操られた振りをするのはよ……」
 ジェラルドは溜め息をつき、剣を納めた。
「操られた振り、だって? ジェラルド、一体どういう事なんだ。教えてくれ」
 ロビンは訊ねた。どうやらジェラルドだけは、この異変に巻き込まれていなかったらしいのが、彼の態度から見て取れたのだ。
「はあ、やれやれ……」
 ジェラルドは面倒そうに溜め息をつき、頭を掻いていた。
「やっぱ言わなきゃだめか? もう問題は解決したんだから、早いとこスターマジシャンを探した方がいいと思うんだけどな……」
「スターマジシャンが関わっているのなら、根本的な解決にはなっていません。ジェラルド、話してください」
 イワンも事態の説明を求めた。
 イワンにも訊ねられ、ジェラルドは渋々話し始めた。
「仕方ねえな、じゃあ手短に済ますぞ……」
 ジェラルドは、これまで起こっていた全てを話す。
「ここには何もありゃしなかった。オレ達がここに来た時からずっとな。もっとも、お前らには、ここがもの凄いところに見えてたようだけどな……」