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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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第76章 大海の主


 突如、周辺が激しく振動し始めた。
「な、何だ! この揺れは!?」
 地震は非常に強く、立っていることもままならない。
「……うふふふ……」
 イワンとジェラルドが、突然の揺れに翻弄されていると、今度は狂ったような笑い声が聞こえた。
「この声、まさかシレーネ!」
 胸をめった刺しにされ、とうに事切れていると思われていたシレーネが、まだ生きていたのだ。
「……あん、た達は、もう、終わりよ。あたし、が、死ぬ、ことで、こ、の、島を形、作って、いた、魔力が、消滅する……。あんた、達も、全員、巻き添えよ……!」
「何だって!?」
「くっ、シレーネ!」
「アハハハハ……!」
 シレーネは狂った笑い声を上げ、今度こそ息絶えた。その瞬間、肉体は全て消滅する。
「まずいぞ! イワン、早く脱出しよう!」
「ええ! アネモスオーブは、確かロビンが持っていましたね。ジェラルドはロビンを担いでください。早くこの洞窟内から出なければ!」
「ああ、分かった!」
 二人はロビンを連れ、急いで部屋を出た。後は海水の水溜まりの上にできた、自然の橋を渡るだけである。
 しかし一足遅く、激しい揺れに耐えきれず、岩の橋は崩れ落ちてしまった。
「そんな、道が!?」
「なんてこった……。仕方がない、イワン、『テレポート』だ!」
「ですが、『テレポート』は……」
「いいから早くするんだ! アネモスオーブは時間がかかっちまう」
 イワンの姉、ハモの言葉がイワンを躊躇わせる。それは、アネモスの秘技、『テレポート』の致命的な弱点である。
 アネモスオーブは、それを持つ者全てに『テレポート』の力を与えるが、出発点と到達点の道一つを一往復することしかできない性質があった。
 つまり、到達点であるこの島を離れることにより、出発点であるハイディアへの道は閉ざされてしまう事になる。
 加えて、イワン達はアネモスオーブでここまで転送された事により、今いる位置を特定できていない。
 エナジー、『テレポート』を使うためには、到達点のみならず自らの位置を把握できていないと成功しない。この条件が満たされていないと、どこへ飛ばされるか分からない危険があった。下手をすれば、異次元に飛ばされる可能性もある。
「ともかく『テレポート』は危険です! 使うことはできません」
「バカか! このまま行ったら、オレ達間違いなく海の藻屑だぞ!? どこへ飛ばされようが、使えばまだ生き残れるかも知れねえんだろ? 頼む、イワン! 『テレポート』を使ってくれ!」
 ジェラルドの言う通り、このままここでもたもたしていては、洞窟の、島の崩壊に巻き込まれて海の底に沈む。『テレポート』を使い、運良くどこかの大陸に運ばれれば、その位置を特定してハイディアまで行くこともできる。
「……分かりました。一か八か、やってみましょう! ジェラルド、ボクに触れてください」
 ジェラルドはイワンの背に手を当てた。
 イワンはエナジーを、ラピスラズリの指輪に込め、指輪に封じられた力を解放する。
『テレ……』
 イワンが詠唱した瞬間、足場が崩壊してしまった。
「うわああ……!」
 イワン達は海に落ちた。水は心臓が麻痺しそうなほど冷たい。
「冷たっ!? って、うわあああ! 水だ!」
 ロビンは冷水の中に突然落とされ、そのあまりの冷たさに目を覚ました。そして、金づちの性でパニックに陥ってしまう。
「落ち着け、暴れるな!」
 ジェラルドは立ち泳ぎしつつ、暴れるロビンをしっかり押さえる。
「ぷはっ! 二人とも、大丈夫ですか!? このままでは洞窟もろとも沈められてしまいます! もう余計なことは考えません、急いで『テレポート』しましょう!」
 イワンは水中から顔を出し、ジェラルド達に向かって泳いだ。
「悪い、オレもそっちに行く! こら、ロビン、暴れるなって言ってるだろ!」
 ロビンが慌てふためくせいで、ジェラルドはなかなか水中を移動することができなかった。
「もう……、ちょっと……」
 イワンの手とジェラルドの手が、あと少しの距離で交わろうとしていた。その時である。
「うわっ!? 何かがボクの足を!? や、やめっ、がぼぼぼ……!」
 何かがイワンの足を取り、無理矢理水中に引き込んだのだ。
「イワン!」
 イワンは水泡を残し、完全に水の中に沈んでしまった。
「くそっ、ロビン、息を大きく吸え。潜るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! むむ、無理だよ、そそ、そんなこと!」
「イワンを見殺しにするつもりか! いいから早くしろ!」
 ジェラルドはロビンの鼻をつまみ、口を開かせる。
「いいな、それじゃあ行くぞ!」
 ロビンがやむ無く大きく息を吸い込んだのを確認すると、ジェラルドも息を吸い、イワンが沈んだ辺りへ潜り込んだ。
 水中に潜ると、そこにはなんと、巨大な水竜がいた。
 水色の長魚のような胴体を持ち、水で視界が悪いが、ひらひらと、美しいほどの背鰭を揺らしている。
 頭部には、左右に大きな鰓があり、頭頂部には、髪のような水に揺れる長い鰭を持っている。
 イワンを水中へと引きずり込んだのは、この水竜の仕業であるとすぐに分かった。きっと活性化した魔物の一種であり、海に落ちた自分達を、その鋭い牙が見え隠れする口で食らうつもりなのだろう、とジェラルドは思った。
ーーちきしょう! これまでか……ーー
 ジェラルドが死を覚悟していると、不意に手を引かれた。
 ロビンではない。ロビンなら、水への恐怖のためか、ジェラルドの腕の中でぐったりしている。
ーーイワン!?ーー
 ジェラルドは驚き、思わず口を開きそうになった。
 イワンはジェラルドの腕を持ち、何やら身振り手振りで意思を伝えてきた。
 水竜を指差し、ジェラルドの手を引く。どうやら一緒に来てほしいようだった。
ーーちっ、何だってんだ……ーー
 ジェラルドはイワンのように、明確な身振りはせず、ただ頷いた。もちろん、この時は助かる道があることなど知る由もなかった。
 ジェラルドはイワンに手を引かれ、水竜の目の前までやって来た。すると水竜は、彼らを食すのではなく、口から人が入れそうなほどの大きな泡を出し、三人を包み込んだ。
「はあ! な、何だこりゃ!?」
 泡の中は空気があり、地上と同じく息ができる。
「ボクもまだ、信じきれてはいないのですが、どうやらあのドラゴンは、ボクらを助けるつもりのようなのです」
「助けるつもりって、イワン。この状況、どう見ても食われる寸前だろ?」
「ボクらを食べるつもりなら、ボクを引きずり込んだときに、もう丸飲みしていますよ。それにあのドラコン、魔物にしては綺麗ですし、禍々しい感じがしません」
 ジェラルドは今、それに気が付いた。
 魔物は獲物を狩る事しか考えず、それが魔物をかなり獰猛な印象を与えている。
 その上魔物には、近付くことさえも躊躇うような雰囲気を持っている。血の臭いや、毒々しい容姿がそれに当たる。
「確かに、魔物にしちゃあ随分と小綺麗だな……」
「今は信じてみましょう。洞窟が崩壊し始めたせいで、水面は荒波です。泳いで逃げるなんて、人の力じゃ、とても……」
「ぶはっ! もう駄目だ! ……って、あれ、息ができるぞ?」
 ロビンは復活した。