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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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「……お前、今まで息止めてたのか? 良く続いたなぁ」
 ジェラルドは呆れたように言う。
「いやぁ、本当に水が怖くて。必死に我慢してたんだよ」
 ロビンは辺りを見て、驚愕する。
 妙な泡に包まれていることに、気付いていないのか、ロビンはまだ完全に水中にいるような気がして、訳が分からなくなっていた。
「うわ! やっぱり水の中!? でも、息はできるし……。もしかして、オレ達死んじゃったのか!?」
「落ち着けよ、まだ死んじゃいねえよ。と言っても、これからどうなるか分かったもんじゃねえがな……」
 三人を泡に包んだ水竜は、こちらを凝視していた。
 この泡のお陰で、彼らは溺れずに済んでいるものの、その目を見ても、何を考えているのか分からなかった。
 もしかすると、この水竜の食性は、獲物を泡に捕らえ、弱ってきたところを一気に平らげるのやもしれない。
 水竜の意図を、あれこれ考えている内に、洞窟は完全に崩壊し、沈んでくる岩石の大きさが増した。
 地盤が沈み、洞窟内に海水が流れ込んでいた穴が、水竜でも通れそうなほどに広がった。その瞬間を待っていたかのように、水竜はロビン達を包んだ泡を、頭でうまく転がし、自らの背中の上に乗せた。
 そして海の中を、魚のような速さで進み始める。
 しばらくの間、海中を進んだ後、水竜は水面上に体を出し、ロビン達を包んでいた泡を消した。
 泡が消えると、ロビン達は水竜に跨がるような格好になった。
 水竜の背から、遥か遠くの島が、徐々に崩壊が進み、ついには全てが海に沈んでいくのが見えた。
 ロビン達は、謎の水竜によって命を救われた。
「はあ……、一時は死ぬかと思ったぜ……」
「本当、怖かったなぁ、水……」
「このドラゴンがいなければ、ボク達、間違いなく死んでいましたね……。彼に感謝しなくてはなりませんね」
 ジェラルドだけでなく、イワンもロビンもすっかり安心しきっていた。
 それから更に、ロビン達は海の上を、水竜に乗ることで進み、ついにアンガラ大陸の浜辺にたどり着いた。
 ロビン達は水竜から降りる。
「ありがとう。助かったよ」
 ロビンが礼を言うと、水竜に変化が起き始めた。
 全身を青く輝かせ、その姿を光の球に変えた。そして光の球は砂浜の上に移動し、中から人型のものが露わになっていく。
「な、何だ!?」
 ロビン達三人は、皆驚いた。
 青い光の中から出現した人物は、異形の風貌をしていた。
 水色の服に身を包んでおり、手首、足首からは鰭が生えている。更に耳があるべきところに、先の水竜のような鰓があり、頭部にあった長い鰭は青白い髪になり、白く丸い帽子を被っていた。
「ふあああ……」
 人間の青年風の姿となった、水竜とおぼしき者は、背伸びをし、肩を押さえて首をコキコキと鳴らす。
「お、お前、何だ!?」
 ジェラルドは率直に訊ねた。
「っんん……」
 青年はジェラルドの問いなど、どこ吹く風とばかりに、体を捻って運動を続けている。
「ジェラルド、さすがにその言い方はストレート過ぎますよ!」
 イワンはジェラルドに注意した。
「うっ……。ま、まあ、そうか、な?」
 ジェラルドは咳払いをし、改めて訊ねる。
「お前は一体何者なんだ?」
 しかし、たいして変わっていなかった。
「ジェラルド!」
「だってよぉ、イワン。これ以外になにかいい言い方があるってのか?」
「何をもめてん、オレの事知らへんの当たり前やろ?」
 青年は口を開いた。なかなか独特な話し方で、発音の仕方も二人とは異なっている。
「すみません、えっと、水竜さん?」
「構へん、構へん、謝ることない。何せオレは大海竜やからな、懐の大きさはこの海と同じや!」
 青年は背後に広がる海を指し、高らかに宣言する。
 青年自身により、彼が何者なのかが告げられた。しかし、言っていることは良く分からない。
「たい、かいりゅう? と言うことは、やっぱりオレ達を助けてくれたのって……」
 ロビンは、にわかには信じがたかったが、どうやらロビン達を救ってくれた命の恩人は、この青年らしい。
「せや、オレが自分ら乗っけて運んだったんや。なんせ自分らは、オレを解放してくれた恩人やからな」
 ロビン達は、助けられたと思いきや、青年の事を救っていたらしい。しかし、やはりどういうことか分からない。
 順を追って、青年から話を聞く必要があった。
「あの、大海竜さん?」
 イワンがおずおずと訊ねる。
「うん? ああ、せや、まだ名前言っとらんかったな、すまん。オレは、アズールいうんや。天界のガーディアン・オブ・ゴッデスっちゅう、まあ、平たく言えば女神の守護者やな。そんなもんやっとる。まあ、よろしゅう頼むわ!」
 異形の青年は、アズールと名乗り、彼が担う役目を言った。
「アズール……」
 スターマジシャンの作り出した島の崩壊から救われ、この場で人の姿となったかと思えば、アズールは天界の者でもあった。
 おまけに女神の守護者だとも言う。ロビン達はいよいよ、混乱してきた。
「なんや、みんなして難しい顔しくさって、いきなり色々言い過ぎたか? しゃあないなぁ、一個ずつゆっくり話したるから、しっかり聞いてや?」
 アズールは、その独特な言葉で、自らの過去、役割等、これまでの事を話し始めた。
 大海竜アズールは、その二つ名の通り、ウェイアードの海を統べる、天界において最大級の水の力を持つ存在であった。
 アズールの本来の姿は、ロビン達を救った時の、水竜の姿であり、今取っている姿は仮の人型である。仮の姿の上、人と同じ体躯となるには、少々力の制御が難しく、腕や足に鰭が残っているのはその為だった。
 天界で一二を争うほどの水の力を持つ彼は、ガーディアン・オブ・ゴッデスと呼ばれる守護者の役目を担っていた。
 守護者は彼を含めて三人いる。しかしその全てが、約十五年前に、ある者の襲撃により敗れていた。
「奴はごっつ強かった。オレらでもまるで歯が立たんほどな……」
「アズール、君の言ってるのって、ひょっとして……」
「知っとるようやな。せや、デュラハンや」
 デュラハンの来襲により、完膚なきまでに打ちのめされた女神の守護者達は、その後デュラハンの手下の力の一部とされていた。
 デュラハンと戦ったとされる女神の存在を、ロビンは一つだけ知っていた。
 故にロビンは、その女神の名を口にする。
「じゃあ、君が守護する女神様ってのは、イリスの事だな?」
 アズールは目を見開いて驚いていた。
「いや、そうやけど、驚いたわ。イリス様を呼び捨てにできるなんて。オレの仲間にもおるけど、呼び捨てなんて恐れ多い事、オレやったら絶対できひんわ……」
 アズールにとって、いや、天界にいる者にとってイリスは、最高の敬意を払わなければならない存在だった。
 イリスは天界で唯一、大悪魔デュラハンと善戦し、刺し違えたとはいえ封印に追い込むことができたのだ。天界の者のみならず、彼女の存在を知る者ならば、最高の神として崇めるのも無理はない。
 しかし、ロビン達はイリスが本来の姿を取り戻す前、イズモ村で育った少女、リョウカを依代にしていた時から共に旅してきた。それ故にイリスを最高位の女神としてではなく、大切な仲間として見ていた。