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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 しかし、ボールの方は、相手を惑わす術に長ける反面、攻撃能力は乏しいものだった。
 恐らく相手の精神に作用するのであろう煙を出してくるのだが、ジェラルドには少し煙たく感じる程度で、心を惑わされるような事はなかった。
「こいつは余裕だな、てめえの煙なんざ屁でもねえ!」
 ジェラルドは勝利を確信していた。
 しかし、攻撃力こそないものの、相手はかなりの素早さを持っている。真っ正面から向かったところでひらりと身をかわされてしまう。
 ジェラルドの剣が地面を叩いた。
「くそっ、ちょろちょろしやがって!」
 ジェラルドの攻撃は悉く避けられていた。
「はあーっ!」
 ジェラルドは気合いを込めて剣を突き出した。ボールはやはりするりと抜け、ジェラルドは体勢を崩す。
「はあ……、はあ……」
 ジェラルドはボールに翻弄され、すっかり息を切らしていた。
ーーちきしょう、ちっとも当たらねえ……。何か方法はないのか……?ーー
 ジェラルドは頬を伝う汗を拭う。
「な、何だこの魔物の数は!?」
 幻覚と戦っているロビンが叫んだ。
 もちろん、ロビンの周りには魔物など一匹たりともいない。しかし、術中にはまっているロビンには、魔物がまるで一群を率いるほどに増えたらしかった。
 そちらはかなり危険な状態だった。
 いくら存在しない幻覚を見ているだけとはいえ、これ以上精神に直接的なダメージを受ければ、狂い死にする可能性があった。
ーーまずいな、早くこいつをぶち壊さねえと、あいつら……ーー
 ジェラルドは最悪な結末を予感していた。
 ボールの動きさえ封じてしまえば、簡単に壊すことができる。しかしその上手い方法が見つからない。
 遠距離からエナジーを放つことも考えた。しかし、あれほどまでに素早い動きをする相手に、強力な一撃を見舞うことは不可能であろう。
 かと言って、速さに優れたエナジーでは、単純に威力が足りない。
 ボールを足止めし、その後に強烈な攻撃が必要だった。
「火力で押すのも、範囲も無理か……」
 ジェラルドは、万策つきてしまったように思えた。
「いや、待てよ? 小技なら何とか当てられるなら……?」
 ジェラルドの中に、一つ策が浮かびあがった。
「見切ったぞ、このボール野郎!」
 ジェラルドは得意げに笑いながら、ボールに指を指した。そしてその策を実行する。
『ファイア・クロス!』
 ジェラルドはエナジーを発動し、無数の小さな火の玉を放った。
 火の玉はまるで、蜘蛛の子を散らすように数え切れないほど撃ち出された。これならばさしもの素早いボールとてかわすことはできないであろう。
 しかし同時に、このエナジーの威力は、ボールを破壊できるほどのものではない。
 ボールはなす術なく火の玉を受けたがやはり、目立ったダメージは見られない。
「ふん、どうやら、避けることは無理みたいだな……!」
 有効打は与えられていないが、ジェラルドは何か思惑があるかのように、口元をつり上げていた。
「くらえ! 『ファイア・クロス!』」
 ジェラルドは無数の火の玉を撃ち出した。しかし、狙いはボールではなく、その上空である。
「広がれ!」
 ジェラルドは火の玉を放ちながら、扇状に手を動かした。やがて火の玉を全て出し終える。
 ボールはジェラルドのしたことを理解できない様子で、その場にただ浮かんでいた。
 しかし次の瞬間、ボールはジェラルドの策にはまることになった。
 ジェラルドの打ち上げた無数の火の玉は、ボールを囲むようにゆっくりと降下していく。火の玉はまるで、大量の粒を斜面から転がしたように次々と降り注ぎ、ボールの進路を完全に塞いだ。
 ボールの動きを完全に止める事ができ、ジェラルドはその好機に乗じてエナジーを撃ち出した。
『フレア・フォース!』
 かつて、アンガラ大陸東方の地にて修得した、強烈な衝撃を撃ち出す力に、ジェラルドは炎のエナジーを加えて放った。
 炎を纏い、赤く輝く火球と化した一撃は、火の玉の壁を貫き、見事にボールに的中した。
 衝撃によって吹き飛ばされたボールであったが、この一撃によって壊れる事はなかった。
 飛ばされた後に木の幹に激突し、そのまま気絶したかのように地に転がって動かなくなった。
「この攻撃を耐えたか。全く、随分と頑丈なものだな……」
 ジェラルドは地に転がったボールを掴み上げた。掴んだ感触としては、硬さは皆無であり、ぐにゃぐにゃと弾力が強かった。
「……気持ちのわりぃボールだな。見た目も感触も……」
「すまない、みんなっ……!」
 ふと、ロビンの死を覚悟したような声がした。
 ボールの放つ幻惑の煙にやられ、存在しない敵と戦い続けた結果、どうやら彼らは負けてしまったようだった。
「やれやれ……」
 ジェラルドは面倒そうに頭を掻く。
「こいつも捕まえたことだし、奴らの目を覚まさせてやるか……」
 かくして、ジェラルドの人知れぬ戦いは終わったのだった。