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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 ロビン達がアネモスオーブを使い、スターマジシャンの潜むこの島にたどり着いた時から、この島には、魔なる存在は何もなかった。
 ただ一つ、ジェラルドが貫き通した謎のボールを除いて。
    ※※※
 群青色のアネモスオーブによって、ロビン達三人は、魔女によって創り出された島へとやって来た。
 そこは特別広いわけではなく、浜辺に林のある小島であった。
 スターマジシャンなる魔女が、その魔術により創り出した島であるということを考え、どれほど禍々しい所なのか、と全員が考えていた。
 しかし実際に来てみると、そこは拍子抜けするほどに極普通の島であった。
 本当にこのような小島にスターマジシャンがいるのか、ジェラルドに疑問が浮かんでしまった。
 しかし、この島の本当の恐ろしさは、すぐに知らしめられる事になる。
「何て毒々しい樹海なんだ」
 ロビンの発した言葉に、ジェラルドは驚いた。ロビンの目の前に広がっているのは、何の変哲もない藪である。毒々しくもなければ、樹海と言えるほど入り組んでもいない。
「何言ってんだよロビン、どこが毒々しいってんだよ?」
 ジェラルドは苦笑した。
「全くだぜ。そこら中、いかにも毒持ってる、っつってるような花が咲いてるしよ。それにこの花の花粉、瘴気と同じような花粉降り撒いてんのか、空が暗いぜ……」
 ジェラルドから苦笑は消えた。
 イワンまでもおかしな事を言い出し、おまけに口調がまるでジェラルドのようになっていた。
「お前ら、さっきから一体何を言って……」
 ふと、ジェラルドの視界に、謎の物体が藪の中を動いたのが映った。
ーー何だありゃ?ーー
 ジェラルドは更に目を凝らしてみた。
 そこにあったものは、灰色に白の模様があるボールであった。それがこちらの様子を調べているかのように浮遊し、妙な煙を上げていた。
 謎のボールの柄から、以前、スターマジシャンと対峙した時、彼女が武器として使用していたボールとよく似て見えた。
 ジェラルドはすぐに分かった。あのボールがロビンとイワンの意識を乱し、この島を恐ろしいものに見せているのだ、と。
ーーオレにしか、あれは見えてないのか?ーー
 どうやら灰色のボールのまやかしは、ジェラルドに効いていないようだった。ボール自体も気付いていないようで、更にロビン達にはボールを捉えることができていないようだった。
 ボールは姿を隠すようにこちらを窺っていた。無闇に壊そうと近付けば、まやかしが効いていないことに気付かれ、逃げられてしまう可能性があった。
 そこで、ジェラルドは一芝居打つことにした。
 まやかしを受けたように見せかけ、ボールが油断した所で一気に叩く芝居である。
「どうしたイワン。ここは確かにすげえ所だが、もうオレ達に退路はないんだ。怖じ気づいてないで行こうぜ!」
 イワンが言った。完全にジェラルドになりきっているようだった。
「……すみません、今行きます」
 ジェラルドも術にはまった振りをして、イワンとして振る舞うのだった。
 すっかり術に惑わされ、おかしな言動をするロビンとイワンについて行きながら、ジェラルドは灰色のボールに気付かれないよう、十分注意しながら進んでいた。
 ボールはジェラルド達から、少し離れた所より、浮遊しながら後を付けて彼らの様子を窺っていた。
 ボールの動き自体は、今は緩慢である。突然振り返って壊してしまおうかとも思った。
 しかし、最初にボールを発見した時、ボールはもの凄い早さで陰から陰へと移動していた。ゆっくりと、ロビンを操りながら浮遊しているが、ジェラルドが振り向いた瞬間、蜻蛉のように身を翻す可能性もある。
ーーくそ、一体どうしたものか……ーー
 ジェラルドはなかなか手出しできずもどかしく思っていた。
「ゲホ……、ゲホ……。 ああ、ちきしょう! 喉がイガイガしやがるぜ……」
 イワンは、まるで有害な粉塵でも吸い込んでしまったかのように、何度も咳払いした。
「あまり深く息をするな。この霧を吸い過ぎると倒れてしまうぞ」
 どうやらロビン達にのみ、瘴気が辺りを支配しているようになっているらしい。
ーーそうだ!ーー
 ジェラルドはふと思い付いた。
「うう……」
 ジェラルドは額に手を当て、その場に膝を付いた。さも目眩で倒れたかのように見せつけたのである。
「イワン!」
 ジェラルドをイワンと認識しているロビンは、何の違和感もなく、崩れ落ちるジェラルドを抱き止めた。
「……すみません、急に目眩が……」
 少々演技が急過ぎた。おまけにかなり下手な演技である。ロビン達は騙せても、謎のボールに悟られているのではないか。思いながら、ジェラルドは後目に映るそれを見る。
 ボールは宙をゆらゆらと浮かぶだけであった。ひょっとしたら、人の言葉を理解できないのかもしれない。
 ひとまずジェラルドは、この行動をボールを怪しませることなく済んだようであった。
「ロビン、敵だ!」
 イワンが指を指して叫ぶ。もちろんその先には何もいない。いるとすれば、ジェラルドらをつけてきたボールだけである。
「……まずいな。分かるな、ジェラルド? オレ達、どうやら囲まれたらしい」
 これは少々危険な状況であった。
 幻覚を見ている二人は、存在しない敵と戦い、その末に同士討ちさせられてしまう可能性があった。
ーーこれは、早いとこ二人を元に戻さなきゃな……ーー
「イワン」
 ロビンがジェラルドに呼びかける。
「さすがに君を庇いながら、この数を相手するのは無理だ。どこでもいいからここを離れるんだ」
 ロビンに見えている敵とやらは、かなりの数がいるらしかった。
「悔しいですが、その通りですね……。分かりました、ボクは下がります」
 ジェラルドにちょうどいい機会が巡ってきた。二人から離れることで、ボールを破壊する機会を探ることができる。
 ジェラルドは近くの茂みに身を隠した。するとどうしたことか、ボールが後に付いて来てしまった。
 まさかジェラルドが幻術にかかっていないことが、ボールには初めから分かっていたのか。ジェラルドの脳裏に浮かぶ。
 休む振りをしながら、ジェラルドは地に転がり、目元を隠して指の隙間から様子をうかがった。
 眼があるわけではないが、ボールはまっすぐにこちらを見ているように思えた。やはり演技は通用していなかったか。
 仕方ない、とジェラルドはゆっくりと起き上がり、もうバレているかと思われたが、最低限の演技をした。
「うぅ……、頭が……」
 ジェラルドはあたかも頭痛を感じているように額に手を当て、指の間からタイミングを窺う。そしてさり気なくボールとの間合いを詰めた。
「今だ!」
 ジェラルドは演技を止め、一気にボールにつかみかかろうとした。
 しかし、やはりと言うべきか、ボールはジェラルドの脇をするりと抜けていき、ジェラルドの背後を取った。
「ちっ!」
 ジェラルドは振り返り、剣を抜いた。
「やっぱり全てお見通しだったってかい? なら上等だ。こっからは小細工抜きだ。お前をぶち壊す!」
 ジェラルドとボールの格闘が始まった。
 ボールは想像以上に素早く、ジェラルドの大振りの一撃は掠りもしない。