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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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第74章 超鉄壁の魔封じ


 ジェラルドにより、スターマジシャンの罠が看破され、罠にはまっていたロビンとイワンも元に戻った。
 スターマジシャンにより造られた島は、幻惑から解放されると、まるで何もない場所であった。
 あるものといえば、毒気など全く感じられない木々が立ち並ぶだけであった。精神を操られていた時に見えていた、毒々しい色の花も咲いていない。
 魔物も存在しないことから、どうやらスターマジシャンは幻術によって、ロビン達を同士討ちさせようというつもりのようだった。
 全てのまやかしを打ち破り、ロビン達はこの島の中心にある、スターマジシャン本人が潜むと思われる洞窟に攻め込んでいた。
 そこは天井にいくつもの鍾乳石が形成された鍾乳洞であり、天井からぽつぽつとこぼれ落ちる水滴が地を水に浸していた。
 絶壁の下にできた水溜まりは、島の地下に溜まる海水であり、水面からは岩が切り立っている。
「ここに、スターマジシャンがいるのか……?」
 ロビンの声は少し震え気味である。
「どうしたロビン、声が変だぜ。まだスターマジシャンのまやかしから目が覚めきってねえのか?」
「いや、ジェラルド。そうじゃなくてな……」
 ロビンは足下に注意しながら歩みを進めようとしていたが、絶壁の下の水を見て背筋が凍るような気がしていた。
「そういえば、ロビンは水が大の苦手でしたよね」
 イワンは思い出したように言う。
「まだ入り口だ。ここでやり合う羽目にはならねえだろ」
 鍾乳洞の奥へと繋がる橋のような絶壁は、まだまだ先がある。この先に行けば、必ずやスターマジシャンに会うことができるであろう。
 突然、イワンの表情が険しくなった。
「二人とも、分かりますか? この先から禍々しい力を感じます……」
 イワンが感じ取った力とは、ウェイアードを包む瘴気と似たようなものである。
 暗黒錬金術の礎であるこの場所は、瘴気の源とも言える暗黒の力に満ちていた。
「ああ、勘の鈍いオレでも分かるぐらい胸くそ悪いな……。これは、間違いなくこの奥にいやがるな……」
 ジェラルドは顔をしかめる。
「行きましょう! ウェイアードのため、そして崩壊させられたギアナ村の民の仇を討つためにも!」
 イワンは断崖絶壁の橋を駆け出した。
「待て、イワン! いきなり突っ込むな、また何か罠があるかもしれないだろ!」
 そう言いながらも、ジェラルドも後を追って駆けだしてしまう。
「ま、待ってくれよ!」
 ロビンは足が竦んで走ることなどできなかった。ロビンは足下に細心の注意を払いながら二人に付いていくのだった。
「ここは……」
 イワンとほぼ同時にジェラルド、二人にかなり遅れてロビンが、洞窟の更に奥へと足を踏み入れた。
 洞窟の奥は、いくつかの石柱の上で、妖しい光を放つ謎の玉に照らされており、最深部には禍々しい装飾の祭壇が造られていた。
「趣味のわりい所だな……。むかむかしてくるぜ……」
 ジェラルドは胸をさする。
「おい見ろよ、二人とも。あそこに浮かんでるあれ!」
 ロビンは祭壇の方を指さした。二人もほぼ同時に、その先にあるものを認識できた。
 祭壇の上には、水色に輝く球体がゆらゆらと浮遊している。
 祭壇の周りには瘴気に似た、黒い霧が満ちており、浮遊する球体はきれいな水色ではなく、黒の混ざった汚れた青色をしていた。
「あれは間違いなくマーキュリースター……。ではここにスターマジシャンが!」
「うふふ……、お呼びかしら?」
 どこからか、女の声がしたかと思うと、祭壇の前に何者かが現れた。
 その者は、群青色に金の丸い模様の付いたローブを身に纏い、同色の三角帽子を被って、毛先がカールしたプラチナ色の髪を垂らしていた。
 この女こそ、スターマジシャン本人に相違なかった。
「お前がスターマジシャンだな?」
 ロビンは訊ねる。
「うふふ……、その通り。あたしこそがデュラハン様の側近。スターマジシャン、シレーネよ!」
 シレーネは名乗り、高慢そうな笑みを浮かべた。
『エレク・サークル!』
 突如として、辺りが青い閃光に包まれた。
 イワンがエナジーを発動し、バチバチと弾ける電気の光輪を身に纏ったのだ。
「スターマジシャン! ギアナ村の人々の仇、覚悟!」
 イワンは同時に脇差しを抜き放ち、シレーネに向かって突進した。
「待て、イワン! そんないきなり突っ込むな!」
 仇敵とついに邂逅を果たし、その敵を討たんとする事しか意識にないイワンに、ロビンの叫びは届くはずもなかった。
「やあああ……!」
 イワンは刀身に電撃を込め、シレーネを脳天から真っ二つにすべく、刀を振り下ろした。
 しかし手応えはなく、シレーネの姿はゆらり、と煙のように消えてしまった。
「うふふ……」
 シレーネの笑い声が背後から聞こえた。
「そこですか!」
 イワンは、身に纏う電気の光輪の一部を尖らせ、それを撃ち出した。
 しかしこれもシレーネには届かず、電撃が着弾した地面を焦がすのみだった。
「くっ、一体どこに……!?」
 振り返る間もなく、イワンは神経までも凍らせるような、恐ろしく冷たいものを首筋に感じる。
「涼しい顔してずいぶんせっかちねぇ、ボ・ウ・ヤ?」
 シレーネはイワンの側面に並び立ち、右手でイワンの顔を自らの顔に寄せ、左手指先から氷柱を作り出し、イワンの首筋に突きつけていた。
 イワンは、驚きのあまりに、エナジーを止めて立ち尽くしていた。握力も失い、刀がからからと音を立てて地面に転がる。
「ふふ……」
 シレーネは指先の氷柱を放り捨て、イワンから手を離すと、浮かぶエレメンタルスターの前まで瞬間移動した。
 支えを失い、驚きのあまりに腰を抜かしたイワンは、その場に倒れ込んでしまう。
「イワン!」
 シレーネが離れた隙を狙い、ロビンは駆け寄った。
「イワン、しっかりしろ。おい!」
 ロビンはイワンを揺さぶるが、イワンは一切反応を示さない。まるで意思を持たない人形のようである。
「気を完全に失って? いや、これは……?」
 ロビンはイワンの手首に指先を当て、脈をはかった。同時にイワンの鼻先に耳を向け、呼吸を調べる。
「そんな、バカな……!?」
 息をしていない。おまけに脈は非常に弱くなっている。
 がくっ、とイワンはロビンの腕に崩れ落ちた。
「イワン!」
 イワンはそのまま動かなくなった。
 シレーネに隙を付かれた時、イワンは氷柱を突き付けられていたが、それはイワンの喉を貫くような事はなかった。
 となれば、別の要因によって絶命してしまったのか。
「うふふ……」
 シレーネは笑い続けている。
「貴様、よくもイワンを!」
 ロビンは怒鳴り声をあげた。
「うふふ……、まあ、安心なさい。あなた達もすぐにその子の所へ送ってあげるわ!」
 シレーネは自らの目の前で、右人差し指を立て、魔法を発動させた。その瞬間、シレーネの姿が分裂する。
「な、に……!?」
 ロビンは四方を囲まれてしまった。
「アハハハ! 死になさい!」
 分身したシレーネは、四方向から笑い声をあげ、それぞれ黄、赤、紫、青のエレメンタルと思われる色の光線を放った。
「くそっ……!」
 最早なす術はない、ロビンは死を覚悟する。