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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 イワンの亡骸を抱きながら、ロビンは固く目を閉じた。四色の光線がロビンを貫き、そして塵も残さずに消されんとしていた。
 光線が迫り来たその時だった。
 ジェラルドがロビン達に覆い被さり、四方向から来る光線を全て受け止めたのである。
「ジ、ジェラルド……?」
 四本の光線を受けたというのに、ジェラルドには怪我どころか掠り傷一つ無かった。
「……ったく、いつまでもバカやってんじゃねえよ!」
 言うとジェラルドは、ダークサイドソードを手に、前方にいるシレーネに向かって駆け出した。
「うおら!」
 ジェラルドが剣を降り下ろすと、シレーネはいとも簡単に切断された。しかし、斬られたというのに、血の一滴も流れない。
 一方で、斬られたシレーネは思いもよらぬ反応を見せた。
 肌が水に変化し、シレーネという型から離れた水はバシャッ、と地面に落ちた。
 左右、後方に立っていたシレーネの分身も、それぞれ砂、火の粉、空気になって消えていった。
「何が、どうなって……?」
 瞬間、ロビンの頭に衝撃が走った。この洞窟の外で、まやかしから解放された時のようである。
「いてて……、くそ、またまやかしか……!?」
 ほぼ同時に、死んだようになっていたイワンも目を覚ました。
「はっ! ボクは一体何を!?」
 二人が正気を取り戻したことにより、ジェラルドは少し安堵したような顔を見せる。
「やれやれ……」
 ジェラルドは振り返り、どこへともなく叫んだ。
「やい、スターマジシャン! ここまで来られておいて、まだ騙しっこ決め込むつもりか!? さては、臆病風に吹かれたな? この臆病魔女が!」
 ジェラルドの半ば挑発的な叫びは、洞窟内に響き渡った。
「どうした、オレが恐いのか!?」
 ジェラルドは尚も相手を煽る。
「マインボール!」
 突如、ジェラルドの頭上から、巨大な光球が降ってきた。それは、ジェラルドと接触すると爆発を起こした。
「ジェラルド!」
 ロビンとイワンは叫ぶ。
「オーホホホ……!」
 高笑いと共に、光球が降った後すぐ、空中に群青色の物体が地に降りた。
 群青色のローブを身に纏い、つばの広い三角帽子からプラチナ色のウェーブヘアーを垂らす、本物のスターマジシャン、シレーネがついに姿を現した。
 シレーネは浮遊し、濁ったエレメンタルスターの前まで移動する。
「どうやら、外でのあたしのイリュージョンを見破ったのはまぐれじゃなかったようだけど、あたしには人を騙す魔法しか使えないとでも思ったのかしら? 哀れねぇ……」
 爆発を起こす球によって、粉々に砕け散ったと思われるジェラルドに向けて、シレーネは哀れむような目を向ける。
 しかし、次第に晴れていく爆煙に人影が現れるにつれて、シレーネの顔は驚きに満たされた。
「な、何ですって!?」
「ジェラルド!」
 ジェラルドは、あれほどの爆発に巻き込まれたというのに、平気な顔で立っていた。
「不意を付かれたのには驚いたが……」
 ジェラルドは肩に手を置き、腕を回しながらコキコキと首を捻る。
「……全然効かねえな。痛くも痒くもねえぜ」
 ジェラルドは現に傷一つ負っていない。この言葉は痩せ我慢でもなんでもなかった。
「なんで、どうしてあたしの魔術が通用しないの……?」
 シレーネは、これまでに遭ったことのない敵を相手に、少し混乱していた。
 まやかしはともかくとして、爆発に巻き込む魔法までも無効果されてしまったのだ。シレーネの攻め手は、いきなり封じられてしまったようなものだった。
「ロビン、イワン! いつまでふぬけてるつもりだ!? さっさと立て、とくにもイワン、お前絶対にあいつを倒すんじゃなかったのか!」
 ロビン達ははっ、となって腰を上げた。そして武器を取り、ジェラルドに歩み寄って隣に並ぶ。
「すまない、ジェラルド。ようやく目が覚めた」
「ジェラルドがいれば、まやかしももう怖くありません。今度こそ逃がしませんよ!」
 ジェラルドのおかげで、形勢は完全にロビン達に向いていた。
「観念しろ、スターマジシャン!」
 ロビンはエクスカリバーを構え、その切っ先をシレーネへと向ける。
「ふうぅああああ……!」
 対するシレーネは、気合いを込めながら魔力を増幅させていた。シレーネの体から、青く白いオーラが煙のように立ち込める。
「奴め、何をするつもりだ?」
 ジェラルドが呟くと、シレーネは魔力増幅を止めた。そして青白いオーラを纏ったまま、恐ろしい笑みを見せた。
「……どうかしら? これがあたしの全力よ。この魔力でマインボールを撃ったら、さすがのあんたも粉々でしょう?」
 言うとシレーネは間髪入れずに、両手を合わせて、ため込んだ魔力を先程よりも巨大な球体に変化させ始めた。
「あいつめ……」
「圧倒的なパワーです……! この洞窟ごと崩壊させるくらいに!」
「ロビン、イワン。下がってろ」
 ジェラルドは一歩前に進み、二人の前に立ちはだかった。
「ジェラルド!?」
「いくらなんでも無理ですよ!」
 ジェラルドは振り向かない。
「辞世の句、は詠めたかしら? さあ、消えなさい!」
 シレーネは球体を一気に膨脹させた。それは天井まで到達するほどの大きさである。
「ハイパー・マインボール!」
 シレーネは、青白く光る巨大な球体を解き放った。
 ジェラルドは迫り来る光球を前に、目の前で腕を交差させて防御の姿勢に入った。
「くそっ! ジェラルドぉー!」
 ロビンの叫び声は、ジェラルドにぶつかった瞬間に発生した、魔法球の爆発音にかき消された。
「っく!」
 ロビンは、爆発が巻き起こす砂塵に、目を固く閉じる。
 爆風はすぐに収まった。ロビンはゆっくりと目を開く。
 視線の先はまだ砂埃が立っていた。ジェラルドの姿も、シレーネも確認できない。
 やがて砂埃は薄まっていった。それにより、ようやく人影を見ることができた。
 最初に見えたのは、口許に薄笑いを浮かべるシレーネであった。
「ジ、ジェラルド、まさか……!?」
 ロビンは全身の血の気が引いていく感じがした。さしものジェラルドでも、あれほど巨大で圧倒的な魔法球の前では、髪の毛一本残さず消し飛ばされてしまったのか、という最悪の予感が頭を過ったのだ。
「うふふ……、バカな子ねぇ」
 シレーネは笑い続けていた。
「くそーっ! よくもジェラルドを!」
 ロビンは剣を片手に、シレーネへ飛び込もうとした。その時だった。
「……うおおおっ!」
 土煙をその身で払いながら、ジェラルドが拳を振り上げてシレーネへと突撃した。
「なぁっ!?」
 シレーネは驚きのあまり、硬直してしまった。
 その隙を付くように、ジェラルドは勢いに任せて、シレーネの顔面を思い切り殴り付けた。シレーネはきりもみ状に吹き飛ばされる。
 ジェラルドの動きは止まらない。すぐさま剣を抜き、剣に秘めたる力を解放する。
「アケロングリーフ!」
 ジェラルドのダークサイドソードが黒き光を放ち、空間に暗黒の剣の形をしたエネルギー体が出現した。それが地に突き刺さると、闇の力を放ちながら沈んでいき、漆黒の爆発を起こした。
 シレーネの姿は再び、砂埃の中に消え去った。
「どうだ、こんちきしょうが!」