くちびる
柔らかかったなぁ。
あの日沖縄で、
お互いの気持ちを確かめて
キスをしてから、
すずめは馬村の唇の感触を反芻していた。
学校でどんな風にして顔を合わせようとか、
恥ずかしいとかいう気持ちよりも先に、
新学期が始まったクラスで、
馬村の唇をつい凝視して
ボーッとしてしまう。
「アンタ!ヨダレ!!」
ゆゆかちゃんに言われてハッとした。
ヤバイ、ヤバイ、私は変態かっ!!
事情のわからないクラスメートは、
与謝野はまた食べ物のことで
も考えてるんだろう、と思っているが、
ゆゆかは騙せない。
「アンタねぇ、馬村くんとキスしたからって
思い出しすぎ!キモ!!」
「えっ!なんでゆゆかちゃん、
私と馬村がキスしたってわかるの?!」
すずめは真っ赤になって動揺した。
「えっ。そりゃぁその…
アンタの顔、バレバレなのよ!!」
一部始終を見てたとは言えない。
だけどすずめは、
「そんなに顔に出てるの?!」
「ていうかそれでわかっちゃう
ゆゆかちゃんってスゴイ。」
と妙に感心している。
同じ頃馬村は、すずめの視線が
自分の唇に集中してることを感じて、
女子に触られてもいないのに
ずっと真っ赤になっていた。
「馬村、熱あるんじゃねえの?
顔赤いんだけど。」
猿丸が気づいて心配する。
「は?いや…大丈夫だけど…」
「けど?」
「何でもない。」
夏休みの沖縄で、
すずめに好きだと言われて
嬉しすぎて思わずキスをしてしまった。
だってそうだろ?
ずっと好きで、二度も告白して、
でも結局すずめは獅子尾のことが
忘れられないんだと思って、
自ら覚悟して、あの時手を離したんだ。
オレより獅子尾を選んだから
東京に帰ったと思っていたのに。
それがすぐ戻ってきて、
自分に飛びついてきて、
東京行って気持ち清算したから
俺に告白って、なんだそりゃ!!
理性もなんもかも吹っ飛んだわ!
いつもアイツは俺の想像のナナメを行く。
それでキスして恥ずかしがるならわかるが
東京帰ってきてからずっと唇凝視って、
俺をどうしたいんだよ!
唇の感触を反芻しているのは
馬村も同じだった。
自分の唇にすずめの視線を感じると
触れた感触がよみがえって
まだ触れてる気分になる。
ヤバイ、このままアイツの視線を
気にしすぎてると、
学校だろうがなんだろうが
止まらなくなる気がする。
ハァ…マジで帰ろうかな。
「猿丸!俺やっぱり帰るわ。
先生に言っといて。」
「お?おぉ、わかった。気ィつけてな!」
この衝動みたいなのは
どうやったら止まるんだ。
好きな気持ちが止まらない。
あふれる。
今までどうやって抑えてたんだっけ?
とにかくアイツから離れないと
アイツを大事にできない。
そんな気がして
すずめには何も言わず早退した。
自分がそういうふうになるなんて、
初めてのことで
馬村はどうしていいかわからなかった。
馬村が教室にいないことに気づいて、
すずめは猿丸から
馬村が早退したことを知らされる。
メールをしてみるも
「何でもない。心配するな。」
というぶっきらぼうな返事のみ。
「お見舞いに行っちゃえばぁ?
それでなんもかんも越えちゃいなよ。」
とカメちゃんとツルちゃんが
舌を出してニヤニヤしている。
「はっ?!ないよっありえないっ!
そんなつもりもないしっ。」
「すずめちゃんにはそんな気なくても
馬村だって男なんだしさぁ。
わかんないよ?」
ちょっと、それはまだ、心の準備が…
ていうか未知の世界すぎて想像できない。
でもキスは…嬉しかったなぁ。
いやいや、でも馬村は
熱出して帰ったんだし。
嫌…かもしれないし。
あーーーーっ。
一人で考えるのやめっ!
とりあえず行こう!馬村んち。
すずめはそう決意して、
カメちゃん達と早々に別れた。
ピンポーン!
誰も出てこない。
一応馬村に電話してみる。
出ない…
はっ!もしや具合悪すぎて
倒れてるとか?
ドアノブに手をかけると、
玄関のドアが無用心にも開いた。
「馬村?いる?」
大地…はまだ学校だよね?
馬村のおじさんも仕事だろうし…
「馬村ぁ?」と言いながら
ソロリソロリ歩いて
馬村の部屋があるだろう
二階へあがる。
こ、これって不法侵入かなぁ?
ていうか、馬村の部屋がわかんない。
リビングまでしか入ったことないし。
そんなことを思ってると
ゴソゴソっという物音が
リビングからした。
「馬村?いるの?大丈夫?」
リビングに入っておそるおそる声をかけると
いた。ソファに寝転ぶ馬村が。
「馬村?」声をかけるが寝ているみたい。
キレーだなぁ。
いわゆるイケメンだろう馬村の寝顔の
美しさにしばらく見とれていた。
なんで馬村は私なんだろう。
ゆゆかちゃんならわかるけど。
やっぱりマニアックな趣味なのかな?
そんなことを馬村の寝顔を
みつめながら思っていたら、
馬村の目が急にパチッと開いた。
「あ、起きた?」
しばらくボーッとしてた馬村だが、
「おまっ!なっなんでここに?!」
とびっくりしながらも、
顔がみるみる赤くなっていく。
わたし、今触れたかな?
「具合悪くなって帰ったって聞いたから
様子見に来たんだけど。大丈夫?」
「心配するなってメールしただろ?」
「いや、そうだけど…」
「とりあえず今日はヤバイから。もう帰れよ。」
「えっヤバイ?!そんなにキツイの?
なんか買ってこようか?
あっベッドで寝たほうがいいんじゃない?」
「ベッドはヤバイんだって!!」
「??」
「いいから!」
グイグイ押されて玄関の方まで
連れていかれる。
「うつるから!」
真っ赤になって必死に訴える馬村の
やっぱり唇を見てしまう。
「オマエ、それやめろよ。
なんなんだよ、今日。
じっと見すぎなんだよ!」
そう言って馬村は唇を
手の甲で隠した。
「えっ見てたの、気づいてたの?」
「気づくわ!!」
「だって、キス、
気持ちよかったなぁとおもって…」
「!!お前そういうこと言うなよ!」
「だっていつも思ってること言えって
馬村が言うじゃんか!」
「いっ、言ったけど!…あーーーっもう!!」
ふいに腕をつかまれ、すずめは
馬村のほうに引き寄せられたかと思うと
唇を塞がれた。
引っ張る力とは裏腹に、
優しく、唇が言葉を発してないのに
好きと言ってるみたいで、
やっぱり気持ちいい。
少し離れたかと思うと、また触れた。
そしてギュッと抱きしめられた。
「好きだ。止まらねぇ。
でも自分が自分じゃないみたいで
抑えられないんだ。変に煽るなよ。」
そう必死に訴える馬村は、
耳まで真っ赤になっていた。
愛おしい。
すずめはそんな気持ちがわいてきて、
馬村の背中に腕を回し、抱きしめ返す。
「馬村。私もだよ。
馬村のこと好きって自覚したら、
自分が自分じゃないみたいで変なんだよ。」
ちょっと体を離して
目と目が合うと、
あの日沖縄で、
お互いの気持ちを確かめて
キスをしてから、
すずめは馬村の唇の感触を反芻していた。
学校でどんな風にして顔を合わせようとか、
恥ずかしいとかいう気持ちよりも先に、
新学期が始まったクラスで、
馬村の唇をつい凝視して
ボーッとしてしまう。
「アンタ!ヨダレ!!」
ゆゆかちゃんに言われてハッとした。
ヤバイ、ヤバイ、私は変態かっ!!
事情のわからないクラスメートは、
与謝野はまた食べ物のことで
も考えてるんだろう、と思っているが、
ゆゆかは騙せない。
「アンタねぇ、馬村くんとキスしたからって
思い出しすぎ!キモ!!」
「えっ!なんでゆゆかちゃん、
私と馬村がキスしたってわかるの?!」
すずめは真っ赤になって動揺した。
「えっ。そりゃぁその…
アンタの顔、バレバレなのよ!!」
一部始終を見てたとは言えない。
だけどすずめは、
「そんなに顔に出てるの?!」
「ていうかそれでわかっちゃう
ゆゆかちゃんってスゴイ。」
と妙に感心している。
同じ頃馬村は、すずめの視線が
自分の唇に集中してることを感じて、
女子に触られてもいないのに
ずっと真っ赤になっていた。
「馬村、熱あるんじゃねえの?
顔赤いんだけど。」
猿丸が気づいて心配する。
「は?いや…大丈夫だけど…」
「けど?」
「何でもない。」
夏休みの沖縄で、
すずめに好きだと言われて
嬉しすぎて思わずキスをしてしまった。
だってそうだろ?
ずっと好きで、二度も告白して、
でも結局すずめは獅子尾のことが
忘れられないんだと思って、
自ら覚悟して、あの時手を離したんだ。
オレより獅子尾を選んだから
東京に帰ったと思っていたのに。
それがすぐ戻ってきて、
自分に飛びついてきて、
東京行って気持ち清算したから
俺に告白って、なんだそりゃ!!
理性もなんもかも吹っ飛んだわ!
いつもアイツは俺の想像のナナメを行く。
それでキスして恥ずかしがるならわかるが
東京帰ってきてからずっと唇凝視って、
俺をどうしたいんだよ!
唇の感触を反芻しているのは
馬村も同じだった。
自分の唇にすずめの視線を感じると
触れた感触がよみがえって
まだ触れてる気分になる。
ヤバイ、このままアイツの視線を
気にしすぎてると、
学校だろうがなんだろうが
止まらなくなる気がする。
ハァ…マジで帰ろうかな。
「猿丸!俺やっぱり帰るわ。
先生に言っといて。」
「お?おぉ、わかった。気ィつけてな!」
この衝動みたいなのは
どうやったら止まるんだ。
好きな気持ちが止まらない。
あふれる。
今までどうやって抑えてたんだっけ?
とにかくアイツから離れないと
アイツを大事にできない。
そんな気がして
すずめには何も言わず早退した。
自分がそういうふうになるなんて、
初めてのことで
馬村はどうしていいかわからなかった。
馬村が教室にいないことに気づいて、
すずめは猿丸から
馬村が早退したことを知らされる。
メールをしてみるも
「何でもない。心配するな。」
というぶっきらぼうな返事のみ。
「お見舞いに行っちゃえばぁ?
それでなんもかんも越えちゃいなよ。」
とカメちゃんとツルちゃんが
舌を出してニヤニヤしている。
「はっ?!ないよっありえないっ!
そんなつもりもないしっ。」
「すずめちゃんにはそんな気なくても
馬村だって男なんだしさぁ。
わかんないよ?」
ちょっと、それはまだ、心の準備が…
ていうか未知の世界すぎて想像できない。
でもキスは…嬉しかったなぁ。
いやいや、でも馬村は
熱出して帰ったんだし。
嫌…かもしれないし。
あーーーーっ。
一人で考えるのやめっ!
とりあえず行こう!馬村んち。
すずめはそう決意して、
カメちゃん達と早々に別れた。
ピンポーン!
誰も出てこない。
一応馬村に電話してみる。
出ない…
はっ!もしや具合悪すぎて
倒れてるとか?
ドアノブに手をかけると、
玄関のドアが無用心にも開いた。
「馬村?いる?」
大地…はまだ学校だよね?
馬村のおじさんも仕事だろうし…
「馬村ぁ?」と言いながら
ソロリソロリ歩いて
馬村の部屋があるだろう
二階へあがる。
こ、これって不法侵入かなぁ?
ていうか、馬村の部屋がわかんない。
リビングまでしか入ったことないし。
そんなことを思ってると
ゴソゴソっという物音が
リビングからした。
「馬村?いるの?大丈夫?」
リビングに入っておそるおそる声をかけると
いた。ソファに寝転ぶ馬村が。
「馬村?」声をかけるが寝ているみたい。
キレーだなぁ。
いわゆるイケメンだろう馬村の寝顔の
美しさにしばらく見とれていた。
なんで馬村は私なんだろう。
ゆゆかちゃんならわかるけど。
やっぱりマニアックな趣味なのかな?
そんなことを馬村の寝顔を
みつめながら思っていたら、
馬村の目が急にパチッと開いた。
「あ、起きた?」
しばらくボーッとしてた馬村だが、
「おまっ!なっなんでここに?!」
とびっくりしながらも、
顔がみるみる赤くなっていく。
わたし、今触れたかな?
「具合悪くなって帰ったって聞いたから
様子見に来たんだけど。大丈夫?」
「心配するなってメールしただろ?」
「いや、そうだけど…」
「とりあえず今日はヤバイから。もう帰れよ。」
「えっヤバイ?!そんなにキツイの?
なんか買ってこようか?
あっベッドで寝たほうがいいんじゃない?」
「ベッドはヤバイんだって!!」
「??」
「いいから!」
グイグイ押されて玄関の方まで
連れていかれる。
「うつるから!」
真っ赤になって必死に訴える馬村の
やっぱり唇を見てしまう。
「オマエ、それやめろよ。
なんなんだよ、今日。
じっと見すぎなんだよ!」
そう言って馬村は唇を
手の甲で隠した。
「えっ見てたの、気づいてたの?」
「気づくわ!!」
「だって、キス、
気持ちよかったなぁとおもって…」
「!!お前そういうこと言うなよ!」
「だっていつも思ってること言えって
馬村が言うじゃんか!」
「いっ、言ったけど!…あーーーっもう!!」
ふいに腕をつかまれ、すずめは
馬村のほうに引き寄せられたかと思うと
唇を塞がれた。
引っ張る力とは裏腹に、
優しく、唇が言葉を発してないのに
好きと言ってるみたいで、
やっぱり気持ちいい。
少し離れたかと思うと、また触れた。
そしてギュッと抱きしめられた。
「好きだ。止まらねぇ。
でも自分が自分じゃないみたいで
抑えられないんだ。変に煽るなよ。」
そう必死に訴える馬村は、
耳まで真っ赤になっていた。
愛おしい。
すずめはそんな気持ちがわいてきて、
馬村の背中に腕を回し、抱きしめ返す。
「馬村。私もだよ。
馬村のこと好きって自覚したら、
自分が自分じゃないみたいで変なんだよ。」
ちょっと体を離して
目と目が合うと、