二人の歩き方
2人で歩いていく
---------
次の日、ツル、カメ、ゆゆかが
教室で待ち構えてて 、
「忘れないうちに
もっかいメイクさせて~」
とお願いされた。
ゆゆかは昨日の話を聞いて
プロの技術を知りたいらしかった。
「え…」
でも馬村は嫌そうだったしなぁ。
とチラと馬村のほうを見ると
知らんぷりしてる。
「ね?すずめちゃん!」
「それとも私には教えられないってわけ?」
ゆゆかにいつものようにすごまれると弱い。
その後に続くセリフが、
「もう宿題見せてあげないから。」
になるのがわかってるから。
「お願いします…」
結局また3人に好き放題されてしまった。
その後も毎日練習台になって
もう1週間になる。
1年生の教室では、
馬村に新しい彼女ができたとか、
それがすごい美人だとかいう
噂が流れていた。
元のすずめと同一人物とは
誰も思ってないらしかった。
おかげで、一途だとかで
馬村のことを
キャーキャーいってる子も、
「なんだ、結局顔か。」
とその熱が冷め、
思いがけず馬村のモテ期が終了した。
「キャーキャー言われなくなって
よかったね」
「よくない。」
馬村がブスッとしている。
「え?やっぱり言われたかったの?」
意外だ。
「違うわ!」
「オマエがモテてんだろーがよ。」
「は?」
身に覚えがない。
馬村曰く、
クラスの男子が
「与謝野がかわいくなった。」
と言ってるのを聞いてしまったらしい。
こうやって歩いてると
チラチラ男に見られてるのを
コイツは気づいてないのか?
「メイクの練習台って
いつまで続くんだよ。」
「あ、飽きるまで?」
「なんだよ、それ。」
馬村、不機嫌だなぁ。
「大輝」
「なんだよ。」
ふいに下の名前で呼ばれて赤くなる。
「大輝 大輝 大輝 大輝 大輝」
名前を何度も呼びながら
にじりにじりと馬村に近づくすずめ。
馬村はさっと顔を手で隠したが
唇の端が上に上がって
ニヤケそうになってるのを
こらえてるのがわかる。
「大輝? だーいき!」
ギッと軽く睨まれたかと思うと
真顔で「すずめ。」と呼ばれた。
「えっ。」
「すずめ。」もう一度。
じっと目をみて、また「す…」
という形に口が開く。
「わーーーーっ!待って!
これ恥ずかしい!!!」
すずめも真っ赤になった。
「面白がるからだ。バーカ。」
「行くぞ。」
すずめの頭をくしゃっとして、
ごくごく自然に手をつないだ。
やっぱりこわれものを持つように
優しく。
でも恋人のフリをしてたころより
ずっと自然に。
幸せにしたいとか
してもらってるとかじゃなくて
こうやってずっと
温かさを感じあっていければいい。
そんな風に思いながら歩いた。