-Everlasting bride-
「居るんだろ?!開けてくれ!」
「荒北!お願いッショ」
同時に独特の口調の奴の声もした。東堂の唯一無二の好敵手、巻島だろう。さすがに開けない訳にも行かず、重たい体を引きずり玄関に向かう。長いこと開けていないような錆びついた金属音を開錠の音を知らせると同時に新開が割り込むように入ってきた。その後ろには涙を潤ませた顔でこちらの覗く巻島の姿も見える。
「何ィ…」
「届け物だぜ」
「届け物ォ…?」
不機嫌そうな顔をすれば巻島が新開の前を割り込み、こちらに小さな何かを手渡してきた。
「これ…あの…東堂から…、ショォ…」
震える巻島の手からオレの手に渡ったのは、あの日東堂に贈ったシルバーリングだった。贈った時より少し黒ずんでいる。
「燃えずに残ったのォ?…東堂の返事なのかネ。ごめんネ、ありがとォ巻島」
「あ、荒北ッ…」
ひきつった笑顔で謝礼をいうと巻島は申し訳なさそうに話を切り出してきた。
「…東堂が…脱管される直前にな、」
許せなかった。
あの時傍に行けなかった自分を責め立ててやりたかった。
東堂は最期、涙を流し指輪を嵌められた手を挙げたそうだ。管を外された直後も自発的に心臓を動かし最期に僅かに目を開け何かを探すように眼球を動かした後、大きく深呼吸をし亡くなった。それが、たとえ神経反射による行動だと分かっていても
これが認められずにいるだろうか….。
新開は「尽八…最後の最後までおめさんの事探してたんじゃないかな」と言ってのけた。
その言葉がさらにオレに後悔の自念を残す。
新開は目を赤くしながら微笑みこう告げた。
「嬉しそうにちょっと指輪を見たよ」と。
それを聞いたオレは始めて、東堂の居ない世界に涙を流したのだった。
-Please be an eternal bride.-
訳《永遠の花嫁でいてください》
作品名:-Everlasting bride- 作家名:小鳥遊 天音