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GILIV-LT01. Abandoned ground

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 ジャウロ達みたいに、強いわけでもないしさ。言えば、一瞬複雑な感情を垣間見せ、
ジャウロはどうだろうなと苦笑した。
「何のために力が欲しいのかって、昨日ノアに言われて、ずっと考えてたんだけど、やっと分かった。俺は、」
 言葉はそこで途切れた。ジャウロが振り向く。ノアとセキが、少しあせった様子で走ってくるのが見えた。
「どうしたんだ?」
「オーカーとユニーがいないんです」
 セキが、剣を背に背負いながら、応えを返す。見ればノアも帯剣していた。
「何だって?」
「近くを軽く探してみたが、見つからない。後は森しかないが……」
「……もしかして、父さんと母さんの墓に行ったのかも」
 呟いたアンバーに、ジャウロが問う。
「近いのか?」
「いや、遠くはないけど、森を抜けた先の丘にある。森は……」
 そこまで言って、アンバーが青ざめた表情でジャウロを見返した。かたかたと指が震える。
「昨日俺が襲われたところから、近い……!」
 聞いた三人が表情を固くする。
「……急ごう。案内してくれ、アンバー」
「うん!」
 ジャウロの言葉に頷き、アンバーは森へと駆け出した。


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「右が父さんで、左が母さん」
「ほ〜」
 まだ新しい石碑の前で、オーカーが花を添えながらそう紹介した。
「父さん、母さん、この子は新しい友達。ユニーだよ」
「ユニだ! よろしくな! オーカーのぱぱ、まま!」
 ひょいと手を上げ墓に挨拶するユニーに目を細め、オーカーは目を閉じる。
 短く祈りを捧げ終えると、ユニーが傍らでかわいらしく首をかしげた。
「なんのハナシをしたんだ?」
「うん、兄ちゃんと久しぶりにケンカしちゃったよーって」
 困ったように笑い、オーカーが表情を沈ませる。
「どうしたら、仲直りできるかなって……」
「なんていってた?」
「うーん、何も」
 無邪気な質問に、あわせるようにオーカーもいらえを返す。
ユニーは、しばらく考え込んだ後、オーカーに笑った。
「そうか。きっとイマは、ねてるんだな」
「そーだね」
 その幼い応えに苦笑し、オーカーは寂しげに微笑む。
「もう、ずーっと、寝てるんだ……」
 石碑以外に何もない小さな丘に、柔らかく風が通り抜けた。
 しばらく暖かな日差しの中、二人はたたずんでいたが、やがてオーカーは立ち上がり、ユニーに笑いかけた。
「帰ろうか」
 小さな手をとり、歩き出す。
「おひるはスープか?」
「そうだね、ごめんなさいって言って、兄ちゃんに作ってもらおっか」
 途端、ぱあっと明るくなる顔。ぴょこぴょこと耳を揺らし、ユニーはご機嫌な様子で歌いだす。
「わーい! スープ♪ スープ♪」
「たった二人の兄弟だもんね、離れるなんて、だめだよね」
 独り言のようにそう呟き、オーカーが少しだけ表情を和らげる。ユニーがにっこりと応えを返した。
「うん! なかよしのほうがいいぞ。ジャウロとシャオルもなかよしだった!」
「そっか……」
 過去形になってしまった兄妹に少しだけ心を痛ませて、オーカーは小さな手を握り返した。
 森へ入り、少し歩いたところで、ユニーの足が止まる。
「どうしたの?」
 問えば、彼女なりの精一杯の険しい目で、ユニーが茂みの向こうを睨み付け、唸る。
「オーカ、なにかくる。わるいもの。たくさん!」
「え?」
 慌てて茂みを見返すが、何者も現れる様子はない。ただ静かに、木々が並んで沈黙するのみだ。
「何かって……」
 言いかけた途端、近くの大木がみしりと音を立て、次の瞬間粉々に四散した。


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「あらぁ、」
 森の奥。静謐な深緑とは対照的な真っ赤なドレスを身に纏い、女は大岩の上に足を組み座っていた。
同じく真っ赤な紅を歪ませ、微笑む。
「誰かが私のかわいいペットちゃんの狩り場に入ってきたみたいねえ」
 言ってするりと岩を撫でた。岩は、巨大な禍だった。しゅうしゅうと吐きだす瘴気は既に周囲を冒し始めており、
地面をどす黒く染めている。
「今度のコたちは昨日のベベちゃんより手強いわよォ? さあ、どこまで逃げられるかしら?」
 くすくすと笑い声が響く。呼応するように、巨大な蜘蛛の禍が唸り声を上げ、腕を振り上げた。


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「オーカー! ユニー!!」
 花の添えられた石碑を背に、ジャウロが叫ぶ。
「オーカー! ……家までの道は、さっき通った一本だけだ。まさか森の中に入ったなんて……」
 膝をつくアンバーに、ジャウロが大丈夫、と肩を叩く。
「大丈夫。森のほうは先にノアとセキが手分けして探してくれている。……俺達も行こう」
「……うん!」
 ぐ、と表情を締め、アンバーが立ち上がる。そうだ、弟を守ってやれるのは、もうこの自分しか居ないのだ。
その時、遥か森の奥で、低い轟音が聞こえてきた。続いて、引き裂くような人外の叫び。
「禍の声だ……オーカー!」
「アンバー、待て! 一人で行っては危険だ!」
 駆け出すアンバーを追い、ジャウロもまた森の中へと消えてゆく。
 あざ笑うかのようなつむじ風が木々を揺らし、木の葉を散らした。


to be continued.