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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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パトレイバー~blue sky~

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SKY BLUE

初出1990透樹通信vol.7,8
加筆修正2002.4.2
再加筆 2005/05/14

「ああっ!」
「野明っ!」
あたしの意識はそこでぷっつりと途絶えたのだった。

「はい。始末書。記入の仕方わかっているね?」
後藤隊長の間延びした声にあたしははいとだけ答えて書類を受け取った。
あたしは泉野明。特車二課第二小隊に所属している。
パトレイバー、イングラムの一号機パイロット。あたしはイングラムにアルフォンスと名付けている。ちなみに二号機は太田さん。パトレイバーとは土木作業用に開発されたレイバーの総称からきてる。警察のレイバー、パトロールレイバーということでパトレイバー。人型で心理的効果も狙った新型機種。
そのあたしは今とぉっても暗い。
「まぁまぁ。失敗は誰に出もあるよ」
相変わらず昼行灯の声を背中に聞きながら隊長室のドアを閉める。
はぁ―――――――――――。
あたしは、つい昨日、お仕事ミスってしまった。幸い、太田さんがなんとかしてくれたけど・・・。でも、やっぱり・・・。
「野明? のあっ!」
「ん? なぁんだ。遊馬いたの・・・」
彼はこのパトレイバーイングラムを開発した篠原重工の御曹司。どういうわけかしらないけど、この第二小隊に所属。加えて一号機の指揮車担当。あたしのパートナーでもある。
「いたの、じゃない。何か言われたか?」
「別に、ないよ」
「あっそ・・・」
あたしと遊馬はそのまま黙っててくてくとオフィスに向かった。
カチャ。
オフィスに入って椅子に座る。何気ないふりをしていてもどこか頼りなくしてしまっているんだろう。太田さんがどでかい声を張り上げる。
「なんだなんだ。気持ちがたるんどるから始末書なんか喰らうんだ。もっとシャキッとせい。シャキッとっっ!」
「じゃぁ! 太田さんはシャキッとしてるって言うの?!」
おうよ、と太田さんが胸をたたいて威張る。
「・・・の割には、始末書の数、一番多いくせに」
ぼそっと遊馬が言って太田さんの眉が上がる。
「なんだとぉ! しのはらぁ!! 貴様、先輩に向かって・・・!」
「もうっ!」
あたしは立ち上がるとバンとデスクをたたく。
「始末書喰らったのあたしなんだからねー!!」
二人ともあたしの剣幕に口を閉ざす。それを見届けてあたしは再び座るとデスクに向かった。ペンを走らせながらあたしの思考は昨日へと逆戻りしていた。

「野明っ! 奴は火器を持っているぞ。気をつけろっ!!」
「OK。 遊馬」
あたしは通信機器を通じての遊馬からの指示を受けて正面モニターを見た。ここは街中じゃなくてただの広場だから公共物さえ壊さなければかなり動ける。相手の弾切れの時がチャンス。
「よし 。その調子だ」
「言うほど楽じゃないんだぞ」
いつもの如く冷静に指示を出す遊馬に文句を言う。
「安心しろ。あれじゃぁ、奴の弾は6発しか出ない」
「・・・ということは・・・。1、2、3、4、5・・・あと一発だ」
あと一発でケリが付く。緊張感がみなぎる。
「よぉし、いくぞ! ・・・え? やだ」
あたしはモニターを凝視した。ちっこいものがちょこちょこ動いている。
どうした、と遊馬が聞き返してくる。
「遊馬ぁ。犬がいる。これじゃぁ、うかつに動けないよぉ」
半泣きの声であたしは訴える。
あたしはイングラムを立ち止まらせた。そうじゃなくて動くことが出来なかった。下手に動いたらあんなちっこいやわい犬なんて巻き込んじゃう。
「野明! 逃げろ!」
とまどっていると唐突に遊馬の声が飛び込んでくる。
「んなこと言ったって! あぁ!!」
奴の弾がこっちに飛んでくる。かろうじて直撃を避けたもののあたしのアルフォンスはバランスを失って、そのまま隣の公共物へ・・・。
遊馬の名を呼ぶ声を最後にあたしは意識をぷっつりと途絶えさせ、気がついたときには全て終わっていた。と言ってもものの一分近くしか気絶してなかったみたいだけど。
「遊馬、奴は?」
アルフォンスから降りたあたしは遊馬に問いかけた。
幸いアルフォンスは大した傷を負っていない。それだけでもほっと胸をなで下ろす。なんといってもあたしの大事な大事なアルフォンスちゃんだもん。
「太田がやっつけた。それよりもお前、始末書モンだぞ。これだけぶっ壊わせば・・・」
遊馬が無惨にもぶっ壊れた公共物を見上げて言う。
「ん。覚悟してるよ。・・・! それよりも遊馬っ! ワンちゃんは?!」
あたしははっと思い出して遊馬を問いつめる。
「犬? ああ、あの犬のことか。やっこさんの弾に巻き込まれて。今、ひろみちゃんが介抱している」
「無事だと良いんだけどね」
ああ、と淡々と遊馬が答える。
祈るような気持ちもむなしく結局犬は傷が深くて死んでしまったのだった・・・。

トン。
目の前に湯飲み。暖かい湯気が立ち上っている。
特車二課第二小隊随一の気配りで優しいひろみちゃんがお茶を入れてくれていた。図体が一番大きいのに繊細な心の持ち主のひろみちゃんはこの官舎の近くでトマトを栽培していたりする。
「はい。泉さん。元気出して。お茶です」
「ありがと。ひろみちゃん」
あたしは力無く笑う。
「野明、ちょっと来い」
遊馬があたしを呼ぶ仕草をした。
あたしと遊馬はアルフォンスの見える隊長室の前の手すりにもたれていた。
「なによ?」
「お前、さっきから何を考えている?」
「何って別に・・・」
あたしはアルフォンスをぼんやりと眺めながら答える。
「言ってみなさい。お兄さんが答えてあげよう」
明るい口調で遊馬が言ってあたしはちょこっとだけ笑ってしまう。
「なぁに? カウンセリングでもしてくれるっていうの?」
まぁな、と遊馬が答える。
「フォワードがその調子じゃぁ、バックスの俺にもとばっちりが来るだろうしな」
「そっかぁ。じゃ、お兄さんに聞くよ。あたしってお役に立ててると思う?」
「あん? んなことで悩んでたのか」
「んなことって、遊馬っ。あたしは真剣に・・・!」
思わず遊馬の方に向き直って声を荒げる。
「だってそうだろうが。警察官がお役に立てなくてどうするんだよ。この犯罪ばっかりの世の中に」
「『警察官』じゃなくて、この『あたし』が、だよ」
あたしは遊馬に向かって訂正してやる。
「どっちにしても同じ事だよ。大体、お前以外1号機には乗れないんだし・・・万が一、他の奴が乗り込んでいたとしても太田の暴走をくい止める奴はいないぜ」
でも・・・、とあたしの声は限りなく頼りなくなっていく。
「あの子を守りきれなかったよ・・・。それでもあたしはお役に立っているっていうの? それじゃぁ、あたしは誰のために・・・・何のために・・・」
くどくどくどくどとあたしは遊馬に愚痴る。
「あの子? あぁ・・・犬の事か! それでいつもより多めに悩んでたんだな。一代目アルフォンス(犬)とあの犬がだぶったんだろ。終わってしまったもんだしょうがない。死んだら戻ってこないんだ。うじうじ悩むぐらいならこれから他の奴をしっかり守ってやればいいじゃないか」
「そうだけど・・・」
遊馬のフォローにもすっきりしないあたしの顔を見かねて遊馬が思いついたように言い出した。
「そうだ。野明。お前、明日非番だったな?」
「うん・・・」