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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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パトレイバー~blue sky~

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「それじゃ、明日映画につきあってやる。昼十二時ジャスト、ハチ公前。文句があるなら明日ゆっくり聞いてやる」
「ちょ、ちょっと遊馬ぁ! あたしはまだ・・・!」
返事してないっての。
遊馬は言うだけ言ってオフィスの方に戻っていった。
やっぱ、遊馬の言うとおりなのかな? アルフォンス。
あたしはアルフォンスに向かって呟いた。

「ふぅ。やっと。書き終わった。明日、提出しに行こ」
寮で始末書をなんとか書き上げるとあたしはそのままふとんにもぐりこんで深い眠りに落ちていった。

それはあたしが小学生の頃の風景だった。
はやしたてる声が一人の男の子にまとわりつく。
その子はクラスのガキ大将を筆頭にしたグループにいじめられていた。
その子は抵抗することなく、じっと我慢していた。大きな瞳に涙を一生懸命堪えて。
ぱぁん!
何かがあたしの中ではじけた。
あたしは無我夢中でその子の前にたちふさがった。両手を思いっきり広げる。
『やめなさいよ!』
それだけ言うので精一杯だった。
それでも気迫がモノを言ったのかそのグループは面白くなさそうに立ち去っていった。彼らが立ち去るとあたしは足ががくがくとふるえ、地面にぺたんと座り込んでしまった。
『ありがとう』
その子は泥で汚れた顔でにこっとはにかむようにして笑って言った。
あぁ、やってよかったんだな、と思った。
彼の手の中で何かがくぅんと鳴いたのを聞いてあたしはびっくりして彼の腕の中を見た。子犬だった。彼はこの子犬を守ろうとしていたのだ。
『その子犬・・・どうするの?』
不安そうにあたしが問いかけると彼は困ったような顔をした。
『捨てられていたんだ。でも、僕の家では飼えなくて・・・・』
『あたしが飼ってあげる!!』
彼の困った顔を見ていたあたしはとっさに叫んでいた。
あたしはその子犬のつぶらな瞳にもう魅せられていて、何が何でも飼いたかった。
そしてあたしは子犬---アルフォンス---を得、彼、晄君と友達になった。
あたし達は毎日遊んだ。まるでアルフォンスと同じ子犬のように転がって遊んでいた。楽しかった。
あたしが晄君と遊ぶことでいじめはなくなっていた。
彼のどこか申し訳ないような笑顔からはじけるような笑顔に変わっていったのにそう時間はかからなかった。
そんなある日、突然、彼は消えてしまった。
教室でまだ来ない晄君を待っていると先生がやってきた。
その女の先生は目に涙を浮かべていた。
嫌なことが起きる。聞きたくない。そう思っていたけれど、耳をふさぐわけには行かなかった。
ついに宣告が下った。
『今日は悲しいお知らせがあります。響晄君が・・・』
その日、あたしはかけがえのない友達を一人失ったのだった。
彼のお葬式はあんまり覚えていない。先生に連れられて並んでお焼香をしただけ。彼が死んだという実感は全然なかった。突然、どこかに引っ越していったような気がしていただけだった。振り返れば、今にも『野明ちゃん』と声をかけてきてくれるような気がしていた。あたしにはまだ「死」というものがどんなものか理解できなかったのだ。それを理解したのはアルフォンスが天寿を全うしたときのこと。
その時、あたしは「死ぬ」ってこういう事だったのだ、とむなしい気持ちを抱いたのだった。そして命の大切さをも知ったのだった。
ふと。場面が変わった。
いつの間にか小学生のあたしは今のあたしに戻っていた。
目の前にはアルフォンスと晄君が立っていた。
『晄君!! アルフォンス!!』
喜んで駆け寄ろうとしたとき、目の前にトラックがつっこんできた。
助ける間もなかった。視界は急にブラックアウト。
『嫌だ!! 死んじゃ嫌だ!!』
そう叫んだ声であたしははっと目を覚ました。
体中汗でびっしょりだ。パジャマ代わりのTシャツがべとべと。気色悪い。夢か、と呟くともそもそとかわりのTシャツに着替える。それからベッドサイドの時計に目をやる。
「まだ、二時五分? あぁ・・・とんでもなくやな夢見ちゃったな・・・」
あたしはそのままふとんに仰向けになって天井を見つめながらぼうぅっと放心していた。

「野明っ! 遅いぞっ」
「ごめん。昨日やな夢見ちゃってさ。寝つかれないでぼーっとしていて気がついたらもう朝で、それから急いで始末書提出しに行って・・・」
だらだらと言い訳するあたしを遊馬が手で制する。
「わかった。わかった。じゃ、何か食べに行くか」
「ファーストフードでしょ」
したり顔であたしは指摘する。
「よくわかったな」
「もちろん。財布の中身は似たようなもんでしょ」
所詮あたしたちはしがない安月給の下っ端の警察官だもん。あたしははたと思い当たって言い出す。
「でもさ、わりかんだったらもうちょっとましなものが食べられると思うけど?」
提案するあたしを遊馬が呆れた顔で見る。
「そのよろよろの足でお前の言うもうちょっとましな店へ行けると思うか? どうせ、朝、食べてないんだろ?」
「あ、わかる?」
あたしは面目ない、とショートカットの頭をぽりぽりかく。タイミング良くお腹が鳴る。
「行くぞ」
遊馬が行ってあたしは遊馬の後を追いかけた。

無事に朝食兼昼食をすませて、映画もきっちりと見てあたしと遊馬は映画館前で立ちつくしていた。
「次、どうする?」
「どうするっていっても・・・。あ、そうだ。動物園行こ。ほら、上野の」
「動物園か・・・。ガキの遠足以来だな。ま、ゲーセンや喫茶店でパンフを読みふけっているよりかはましか・・・」
「でしょ? 久しぶりにかっわいいパンダちゃん達を見に行こう!!」
あたしは声を上げるとくるりと向きを変えた。
あたしの視界に入ったのは割と人通りの少ない道路に小さな子供がとことこと道のど真ん中を歩いている光景だった。そしてその前にお約束通りと言うべきか車が突っ込んでこようとしていた。
あたしは夢中でその子の所へ走った。
キィィィィ!
「気をつけろ!!」
罵声が降りてきた頃、あたしは間一髪で子供を抱き上げ道路の反対側へ転がっていた。子供は何が起こったのかわからずきょとんとしていた。安心したあたしがその子をぎゅっと抱きしめるとその子は大声で泣き出した。あったかい。あたしは心底安心した。
子供がさらに泣く。
「ごめんね。痛かった? 大丈夫かな?」
あたしがその子を立たせてやっていると遊馬が血相を変えて走ってきた。
同時にその子の母親もあわててやってくる。
あたしは遊馬に大丈夫、と片手をあげて明るく答える。
母親が抱き上げると子供は唐突に泣きやむ。やっぱりお母さんのだっこはいいもんだね。
あたしはその光景をほほえましく見守る。
「お怪我はありませんでしたか? ありがとうございました。本当にありがとうございました」
母親が何度も礼を言うのであたしは照れちゃって片手をひらひらさせる。
「いやぁ。大したことないです。ねぇ、僕、今度からは道の真ん中を歩いちゃだめだよ?」
あたしがやんわりと注意するとわかっているのかわからないのかその子供はうん、とくったくなくうなずく。
「アキラ、お礼を言いなさい」
母親が促した。
「うん。ありがとう。おねぇちゃん」