うそついてごめんね
庄左ヱ門は、ため息をつきながら忍術学園の校庭を歩いていた。
(団蔵と一緒に勉強できるの、今年の夏までなんだ………。
それは今朝、一緒に登校していた団蔵から唐突に言われたのだった。
「団蔵。どうしたの?浮かない顔して。
「うん……。
「悩みがあるんだったら聞くよ?
「違うんだ。悩んでるわけじゃなくて…。
「だったら話してよ。その方がすっきりするかもよ。
「じゃあ…庄左ヱ門。このこと、他の誰にも言わないでほしいんだ。
「うん、約束するよ。で、何?
庄左ヱ門からすれば、いつものように相談に乗るくらいの気持ちだった。
しかし団蔵の口から出た言葉は、そういった話ではなかった。
「おれさ、忍術学園辞めるんだ。今学期いっぱいで。
………
…………
……え?
「前に父ちゃんが清八に馬借の親方を継がせようとしたことがあったの知ってる?やっぱり、息子のおれが継ぐべきかなって思ったんだ。あの時は忍者になることしか考えてないって言ったけど、おれを若だんなって慕ってくれる若い衆も大勢いるし。
その話ならなんとなく知っている。その時団蔵が忍術学園に残る意志を父親に伝えたことも。
「別に急ぐ必要はないけど。後になればなるほどみんなと離れるのが辛くなるのかなって思って。だから決めたんだ。
「でも団蔵。忍術学園辞めなくても、卒業したらお父上の後を継げばいいんじゃない?
庄左ヱ門は、遠回しで団蔵を止めようとした。
「それも考えた。でもおれ、庄左ヱ門みたいにたくさんのこと覚えられないだろ?勉強と馬借のことを一緒にはできないんだ。だから…。
「そっか…。
素っ気なく返事をしたけど、本当はすごく辛かった。
忍術学園に入学して同じ一年は組で知り合い、話すと家が近いことや実家の仕事柄会う機会も多かったクラスメイト。
字が汚くて教科の成績は悪いけれども、クラスの総合成績トップの庄左ヱ門と並ぶくらい実技の成績は良くて、教師も含めてクラスのみんなが認めるもう一人の一年は組のリーダー。
その団蔵が、一年は組から、忍術学園からいなくなる。
だが団蔵が悩んで決めた道を今更他人である自分が口出しする権利はない。
ここは友達として見送ってやるのが一番だと思った。
「じゃあがんばれよ。馬借のお仕事。
すると団蔵は目を丸くした。
「え?止めないの、庄ちゃん…。
「団蔵が決めたんだから、ぼくが止める権利はないよ。それに、ぼくとだったら炭の配達とかで会えるだろうし。
「う、うん、そうだよな。
自分から話を切り出した割には動揺している団蔵は不自然だ。
だが庄左ヱ門はそれにすら気が付かないほど気持ちが落ち込んでいたのだ。
(折角仲良くなれたのに、残念…いや、寂しいなあ……。
「あ、おはよう、団蔵君。
「おはようございます。小松田さん。
「…小松田さん、おはようございます。
「庄左ヱ門君もおはよう。
忍術学園に着くと、門から事務員の小松田秀作が顔を出した。
先に歩いていた団蔵が挨拶すると、後ろにいた庄左ヱ門も遅れて挨拶した。
「今日も二人で登校?仲良いんだね。
「ええ、まあ~。
団蔵と小松田の会話が聞こえる。
(仲良く登校できるのも、今日が最後なんだ……。
何気ない会話から、受け入れがたい事実を突きつけられてより一層気持ちが沈んでいく。
だけどそのことを態度に表してはいけない。
庄左ヱ門は気持ちに蓋をして笑顔を作った。
「そうそう。庄左ヱ門君、学園長先生が登校したら部屋に来てくれって仰ってたよ。
「あ、そうなんですか。すぐ行きます!
「え!庄左ヱ門、着替え…。
「庄左ヱ門君!…行っちゃったね。
制服に着替えることなど考えずに、ただ団蔵と小松田から離れたかった。
一緒にいたいのに。
時間が限られているから、もっと話したいのに。
一緒だと辛くて。
話すと泣いてしまいそうで。
気持ちが落ち着くまで、団蔵からは離れていたかった。
(ごめんね…団蔵………。
(団蔵と一緒に勉強できるの、今年の夏までなんだ………。
それは今朝、一緒に登校していた団蔵から唐突に言われたのだった。
「団蔵。どうしたの?浮かない顔して。
「うん……。
「悩みがあるんだったら聞くよ?
「違うんだ。悩んでるわけじゃなくて…。
「だったら話してよ。その方がすっきりするかもよ。
「じゃあ…庄左ヱ門。このこと、他の誰にも言わないでほしいんだ。
「うん、約束するよ。で、何?
庄左ヱ門からすれば、いつものように相談に乗るくらいの気持ちだった。
しかし団蔵の口から出た言葉は、そういった話ではなかった。
「おれさ、忍術学園辞めるんだ。今学期いっぱいで。
………
…………
……え?
「前に父ちゃんが清八に馬借の親方を継がせようとしたことがあったの知ってる?やっぱり、息子のおれが継ぐべきかなって思ったんだ。あの時は忍者になることしか考えてないって言ったけど、おれを若だんなって慕ってくれる若い衆も大勢いるし。
その話ならなんとなく知っている。その時団蔵が忍術学園に残る意志を父親に伝えたことも。
「別に急ぐ必要はないけど。後になればなるほどみんなと離れるのが辛くなるのかなって思って。だから決めたんだ。
「でも団蔵。忍術学園辞めなくても、卒業したらお父上の後を継げばいいんじゃない?
庄左ヱ門は、遠回しで団蔵を止めようとした。
「それも考えた。でもおれ、庄左ヱ門みたいにたくさんのこと覚えられないだろ?勉強と馬借のことを一緒にはできないんだ。だから…。
「そっか…。
素っ気なく返事をしたけど、本当はすごく辛かった。
忍術学園に入学して同じ一年は組で知り合い、話すと家が近いことや実家の仕事柄会う機会も多かったクラスメイト。
字が汚くて教科の成績は悪いけれども、クラスの総合成績トップの庄左ヱ門と並ぶくらい実技の成績は良くて、教師も含めてクラスのみんなが認めるもう一人の一年は組のリーダー。
その団蔵が、一年は組から、忍術学園からいなくなる。
だが団蔵が悩んで決めた道を今更他人である自分が口出しする権利はない。
ここは友達として見送ってやるのが一番だと思った。
「じゃあがんばれよ。馬借のお仕事。
すると団蔵は目を丸くした。
「え?止めないの、庄ちゃん…。
「団蔵が決めたんだから、ぼくが止める権利はないよ。それに、ぼくとだったら炭の配達とかで会えるだろうし。
「う、うん、そうだよな。
自分から話を切り出した割には動揺している団蔵は不自然だ。
だが庄左ヱ門はそれにすら気が付かないほど気持ちが落ち込んでいたのだ。
(折角仲良くなれたのに、残念…いや、寂しいなあ……。
「あ、おはよう、団蔵君。
「おはようございます。小松田さん。
「…小松田さん、おはようございます。
「庄左ヱ門君もおはよう。
忍術学園に着くと、門から事務員の小松田秀作が顔を出した。
先に歩いていた団蔵が挨拶すると、後ろにいた庄左ヱ門も遅れて挨拶した。
「今日も二人で登校?仲良いんだね。
「ええ、まあ~。
団蔵と小松田の会話が聞こえる。
(仲良く登校できるのも、今日が最後なんだ……。
何気ない会話から、受け入れがたい事実を突きつけられてより一層気持ちが沈んでいく。
だけどそのことを態度に表してはいけない。
庄左ヱ門は気持ちに蓋をして笑顔を作った。
「そうそう。庄左ヱ門君、学園長先生が登校したら部屋に来てくれって仰ってたよ。
「あ、そうなんですか。すぐ行きます!
「え!庄左ヱ門、着替え…。
「庄左ヱ門君!…行っちゃったね。
制服に着替えることなど考えずに、ただ団蔵と小松田から離れたかった。
一緒にいたいのに。
時間が限られているから、もっと話したいのに。
一緒だと辛くて。
話すと泣いてしまいそうで。
気持ちが落ち着くまで、団蔵からは離れていたかった。
(ごめんね…団蔵………。