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トラウマスイッチ

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「あの…こちらは
馬村さんのお宅でしょうか?」


仕事が休みの昼下がり、
買い物から帰ってきたすずめに
声をかける女性がいた。


大輝は仕事で留守だった。


「? はい、そうですけど…」


どこかで見たことある顔だった。


「すずめさんですか?」

女性に尋ねられ、
あ!と思わず言いそうになる。


「もしかして大輝のお母さんですか?」


大輝はお父さんにそっくりだけど、
その女性も、どことなく大輝に似ていた。


「はい…大輝の母です。」

「すみません…突然来て…
結婚式にも出ないで…」


大輝の母と名乗る人は
そう話し始めた。


「いえ、あっ、あのっ…
立ち話もなんなので、
 とりあえずうち入りませんか?
今日大輝…くんは仕事ですけど。」


と促すと、ホッとしたような
残念そうな複雑な顔をされた。



「あの、私、大輝くんの嫁のすずめです。
私こそ挨拶もしないですみません。」


とりあえずリビングに通して
紅茶を入れながら話し始める。


大輝の母は悲しそうな顔をしながら、

「仕方ないです。
私、大輝が小さいときに
会社の上司と駆け落ちしてしまって…」


「あ、なんかそれらしい話は
ちょっと聞いています。」


「大輝は私をきっと恨んでるでしょうね。」


大輝の母は、
寂しそうに俯いたままだった。


結婚式の前の打ち合わせの時に、
お母さんには言わないのかと
大輝にちょっと聞いてみたけれど、

母は所在がわからない

と言われていたのだ。



「どうしてここが?」

すずめが訊ねると、

「馬村と...元主人ですね。
 連絡はとっていたんです。
 子どもの様子を聞いていて。」

「それで大輝が結婚することを
聞かされていたんです。
この住所も教えてもらいました。
あの人は、私にずっと
 子どもたちに会ってやってほしいと
言ってたから…。」


「そうなんですね....」

「でもあれ以来会ってないし、
 居場所も知らないと
 大輝くんからは聞いてますけど...」


「別れてから大輝に
 会ったことはありません。」


「なんで...。」

大輝の母は無言だった。

「私が言うことじゃないかもですが、
お義兄さんはともかく、
まだ小さかった大輝や大地には
お母さんが必要だったと思います。」

大輝の母はそのまま、
すずめが話すのを黙って聞いていた。

「私が大輝と出会った時、
 高校一年生でしたけど、
大輝はすごく女の人が嫌いみたいで、
女の人に冷たかったし、
多くは語らなかったけど
色々とすごく傷ついているようでした。」


すずめは昔、
大輝にお母さんのことを尋ねて
冷たい言葉を放たれたことを
思い出した。


すると大輝の母がポツリポツリと語り始めた。


「その話は大輝が高校生の頃
聞いていました。」

「あの人...主人は優しいから、
 別れる時も私を責めたりしなかったし、
自分が不甲斐ないせいで、
私をつなぎとめることもできなかった
 と言っていました。」

「だけど子ども達には私が必要だからと言って
 せめて子どもたちには
会ってやってくれ、
と言われていました。」


お義父さんが会わせなかったんじゃ
なかったんだ...。


「じゃあなぜ?」

素朴な疑問だった。

お母さんが会いに来てくれていれば、
大輝もちょっと違ったかもしれない。


「主人と別れて
ついていったはずの上司が、
子どもを嫌がって…
連れていくのも、会うのも…。」


「そんなっ…」


だからって...。


「そうですよね、ひどいですよね。
でもその時は、そうやって
強く引っ張ってくれる人が
自分には必要と思っちゃって…。
 この人の言うことに間違いはない
 って勘違いしていたんです。」

「優しくてなんでもいいよいいよ
と言う主人が頼りなく見えたんです。」


すずめには全然理解ができなかった。


「駆け落ちも、あの人に強く
行かないでくれとか
 そばにいてくれと言われていたら
出ていかなかったかもしれません。」


「そんな!」


作品名:トラウマスイッチ 作家名:りんりん