輝ける王国の物語
「ここ、ハーブがいっぱい生えてるでしょ。集めて来るように頼まれたんだけど、数が多いから人手があると助かるなあって」
少女はにっこりと微笑んだ。ルメノスからの依頼に時間の指定はなかった。暗くなるまでにエルドリンに着けば問題ないだろう。それに、またモンスターに襲われるようなことになるとも限らない。少女一人でこの場に残していくのは危険だと少年は考えた。まだまだ危なっかしい自分の剣技でも、少女の護衛ぐらいなら役に立てるはずだ。
「いいですよ」
「わ~ありがとう。助かるっ」
満面の笑みを浮かべる少女。そうそう、と言いながら腰に括り付けていた鞄を下ろし、中から草を取り出した。
「この黄緑のセイジってやつと。薬草は葉と根と幹と全部ね」
見本に、と少年に一つづつ渡す。少年が受け取ったのを確認すると。
「あっ、大事なこと言うの忘れてた」
少女は胸の前で手を合わせた。
「あたし、ミトンっていうの。よろしくね」
軽く手を挙げる。どうやら挨拶のつもりらしい。これだけ話し込んでいて、自己紹介を忘れていたことを少年も思い出した。
「僕はパールっていいます。よろしくお願いします」
他人行儀かな、と思いながら少年--パールは村を出てから初めて、自分の名を名乗ることになった。