美しく羽ばたいて
「ぎゃぁぁ、かわいい~ちっさーい!」
退院して、ゆゆかちゃんとカメちゃん、
ツルちゃん&犬飼くん夫妻、
そして猿丸くんがお祝いに来てくれた。
「名前!名前なんてゆーの?」
「最初女の子だったら
ひばりでいいんじゃないのって
言ってたんだけど…」
「すずめにひばりって
漫才師か!!」
みんなが突っ込む。
「だけど生まれたとき、
一生懸命新しい世界に
羽ばたこうとしてるように見えた
って大輝が言うから」
「美しいに羽で、
ミウにしようって。」
「わーお、馬村、
意外にロマンチスト!!」
「オマエ!オレが決めたって
言うなって言ったろーが!!」
大輝が顔を真っ赤にして
みんなの分の紅茶を運んできた。
「あれ?そーだっけ?
ごめん、ごめん、テヘヘ。」
「テヘヘじゃねぇ!!」
大輝がすずめの両頬をつねる。
「まぁまぁ、いいじゃないの。
ひばりより全然素敵!!」
「うん、カワイイ!
馬村美羽ちゃーん、
かわいいねぇ!」
小さく柔らかい生き物に
みんなメロメロだった。
ふにゃあっと美羽が泣き出した。
「与謝野、俺抱っこしていい?」
猿丸が名乗り出る。
「あっ猿丸ズルイ!!」
「何言ってんだよ。
こんなかで唯一経験者だぞ?」
猿丸は学生の時に
当時付き合っていた彼女と
できちゃった結婚をしていて、
3歳になる女の子がいた。
「なによ、デキ婚のくせに。」
「そうよ、このエテ公。」
「ケダモノ。」
女三人から散々言われる。
「ひどくね?!」
と言いながらも、
美羽をうまくあやしていた。
さすがに抱っこが上手だ。
「オレ、猿丸の精神力
尊敬するわ…」
「俺も…」
大輝と犬飼はつぶやいた。
いろんなお祝いを置いて
みんな帰っていった。
猿丸は自分の娘が使ったという
おもちゃやベビー服を
いっぱいくれた。
また生まれたらどうすんだよ、
というと、そん時は返してもらうから、
という猿丸に、
また女どもは
「ケチケチすんな!」
「そうだ、エテ公。」
「キモ。」
と罵声を浴びせていて
ギャーギャー言い合っていた。
あれはあれでいいらしい。
それを見ながら犬飼が黙り込む。
「学?どうかした?」
「モニカ…」
「当ててあげよっか?」
『赤ちゃん いいなぁって。』
声が揃ってしまった。
「今すぐは無理だけど、
私達もそろそろ考えようか?」
「えっホントに?」
「うん、かわいかったね。」
犬飼とツルは
猿丸とカメに気づかれないよう
手を繋ぎながら帰った。