刀剣男子たちと花の仮名の女審神者1 花の名前
やっぱり、妖に限りなく寄っているとはいえ、神様ということなんだろうか。
その夜、床の中で審神者は眠れぬ頭で考えていた。
教えもしない二つの花の名。
桔梗、そして蓮。
それとも、たまたま偶然なのだろうか。
自分にとって特別な名。
気にしすぎだろうとは思う。
けれど
「…まさか、よりによって蓮なんてね」
皮肉すぎて思わず声が出た。
「…?」
少しおいてから、言葉にならない声が襖越しに響き、思わずびくりとして体を固くした。
寝ぼけ半分の声で聞き取りにくかったが、どうにか”まだ寝ないの”まで判別できた。
答えぬ方が吉と黙ったまま布団を口元まで上げた。
近侍にしてずいぶん経つが、光忠の寝ぼけた声というのも珍しいな、と思う。
何となくくすぐったいようなおかしいような暖かさが胸元にこみ上げ、ひとりでに顔に笑みが浮かんだ。
仮とはいえ、よりによって蓮という名とはいえ、名前で呼んでもらえることは嬉しい。
体がゆっくりと解れ、少しだけ幸せな気持ちのまま審神者は目を閉じた。
外では障子越しに蛍がゆっくりと舞い、蓮華の花が新たなつぼみを花開かせようとしていた。
作品名:刀剣男子たちと花の仮名の女審神者1 花の名前 作家名:股引二号