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刀剣男子たちと花の仮名の女審神者1 花の名前

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そうこうそするうちに、2人の刀男子たちは考え込んでしまう。
「うーん、中々決まらならないな」
「そうだねぇ…どうしようか、あるじ?」
歌仙の問いかけに審神者は半眼で答えを返す。
少し遊びすぎたかと、紫がかった青い瞳が苦笑する。
金色の瞳が楽しそうな表情でそれに答える。
なんだかんだと言いながら自分を魚に楽しむ2人を横目で見ながら、審神者はまあいいかとあきらめの境地に入っていた。
穏やかな空気が流れる中
「そうだ、桔梗はどうだい?」
ふいに、燭台切が名前を挙げた。
僅かに審神者の肩が揺れた。
その様子に気がつかぬ風の歌仙がいや、と首をかしげる。
「桔梗…というには少し清楚さが足りないのではないかい?」
「あなたたち…さっきからなにげに失礼なことばかり言ってるって気がついてる?」
審神者のため息もどこ吹く風と、2人の刀たちは続ける。
「こうなったら、端から試して行こうか」
「そうだね。順番に呼んでみよう」
「て、聞きなさいよ!」
「鬼百合殿」
「しかも、ちょっと待ってそこから?」
「鬼百合さん」
「だから、なんでそこからなの!」
主の抗議は当然のように無視される。
「違うかな」
「うん、こうして呼んでみるとちょっと違うね」
「れんげ殿」「れんげさん」
「うーん…」
「ダメかな」
「桔梗殿」「桔梗さん」
再びわずかに審神者の肩が揺れた。
それに気がついたのかつかぬのか、2人は困ったような顔で顔を見合わせた。
「違うかな」「可憐さの辺りがね」
「聞こえてるわよ」
言いながら、審神者はふらりと池の淵へと足を運んだ。
2人の刀の化身達は黙ってその様子を見守る。
口を開かなければそこそこ見栄えはする。
そう言ってぽこりと殴られたのは歌仙にとって新鮮な驚きだったのだが。
本当に、こうして黙っていれば雅に揺れる花とも見まごうばかりなに。
池には咲き残った桃色した花のつぼみが水面に色を添えていた。
凛として美しく水辺に映える…花の名は。
ふと言葉が浮かんだ。
「睡蓮」
声を上げたのは燭台切の方だった。
歌仙は僅かに目を見張り、審神者は驚いたように振り返った。
2人でそれぞれの方角から、静かに正座する眼帯姿を見つめる。
「睡蓮の花はどうかな?」
一拍おいて、呟くようにして歌仙も口を開いた。
「睡蓮…蓮の花…蓮華…いっそのこと…蓮(レン)というのはどうかな」
「なるほど、蓮華と睡蓮の両方を取って蓮さんか…いや、蓮ちゃんの方がいいかな?」
「ちゃんって…燭台切…」
審神者はがくりと肩を落とした。
「もういいわ、それで」
力が抜けたようにひらひらと降られた片手に、燭台切が微苦笑する。
「ようやっと決まったね」
こちらはやや難しくなっていた表情が一転し、歌仙は華やかな微笑みを浮かべた。
「やれやれ、ほっとしたよ」
2人の刀の付喪神たちは、居住まいを正した。
「今日から仮の名はレンちゃん、だね。あるじ殿」
燭台切の深みある優しげな声が柔らかく告げる。
「よろしく、レン殿」
穏やかで落ち着いた歌仙の声が続いた。
はいはい、と審神者たる主、今日からレンという仮名を神から与えられた彼女は苦笑しながらうなずいた。


いつの間にか、つぼみだったはずの睡蓮の花が静かに花開いていた。