大地の初恋 回想編
「オレくえねえわ。」
朝起きたら
大輝が真っ赤になってて
自分のフレンチトーストを
譲ってくれた日。
あの日から大輝はよく
頭をぶつけるようになった。
ボーッとして
壁にゴンと打つ。
頭を打っているのに
微妙に嬉しそうで、
とうとう頭を打ちすぎて
おかしくなったんじゃないかと思った。
あとで結局すずめが彼女になったと
親父から聞かされた。
親父は嬉しそうだった。
俺は…なんとも言えない気持ちだった。
すずめは最初の頃は
あまりうちには来なかったが、
大輝が大学に入った頃から
よくうちに出入りするようになった。
俺はすずめが来るたび、
ゲームに付き合わせたし、
すずめも、よしやろう!
とノッてきた。
「あああ、大地に勝てない!」
悔しがるすずめの姿が面白くて
いろんなゲームに付き合わせた。
面白い女。
でも大輝はモテるのに、
なんですずめなんだ、とも思っていた。
女らしさを感じない。
ところが俺が中学に上がった頃、
体調が悪くて部活を休んで
家に帰ったことがあった。