ジュリエットの幸せ
「え…何これ…」
ゆゆかは呆然とする。
気づけば入口からステージまで
赤い絨毯が敷いてあった。
「これって…結婚式?!」
「ゆゆか…お前綺麗だなぁ。」
入口にゆゆかの父が立っていた。
「お父さん!」
「お前の友達がな、
お前に結婚式を
プレゼントしたいって
私達のとこに来てな。」
「は?!」
「私達も娘の晴れ姿を
見れないのは寂しいから
計画に乗らせてもらったよ。
親のわがままと思って
許してくれ。」
「~~~~~」
ゆゆかは言葉が出ない。
「Ohゆゆかちゃん。
泣くと化粧崩れるから
もうちょっと我慢して?
はい、ベール。」
つぼみに長いベールを付けられる。
そしてシュルっと紐を解くと
ジュリエット仕様の
上着がとれて、
真っ白なドレスになった。
ジャーン!!
どこでどう鳴らしているのか、
パイプオルガンの音が鳴る。
「さ、いこうか。」
ゆゆかの父が腕をだす。
「ここまでされて、式しないとか
空気の読めないこと
できないじゃない…」
ゆゆかは目に涙を滲ませながら
父の腕を取り歩き出した。
一歩一歩ゆっくりと。
歩く度に
現実を受け入れていく。
土牛のところまで来る。
「何なのよ、その格好。」
「ロミオだよ。」
「では、只今より
皆川土牛、猫田ゆゆかの
結婚式をとりおこないます。」
犬飼くんがとりしきる。
人前式?
「なおこれより、誓いの言葉は
ロミオとジュリエットの
セリフでお願いします。」
「は?」
「どういうこと?」
『お前達、許さないぞ!』
突然、剣?のようなものを
犬飼が持って
二人の前に立ちはだかる。
「犬飼くん?!なんで?」
そういや高校の時の文化祭で
犬飼くんはこういう役だったっけ。
『ジュリエットは渡さない!
僕たちはお互いの名を捨て
永遠の愛を誓うのだ。』
土牛も腰に差した剣らしきものを抜き、
台詞を言いながら犬飼の剣に当てる。
「え…ノリノリ?」
土牛は、犬飼のセリフを受けて
高校の時の劇のセリフを
しゃべり出す。
『クッここはひとまず引く!』
犬飼退場。
「何この茶番…」
ゆゆかがキョトンとしていると、
土牛が、
『あなたへの思いが溢れて、
気が付いたらここに来ていた。』
と劇の台詞を言い出した。
「その台詞…あの時の劇の…」