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刀剣男子たちと花の仮名の女審神者 短編詰め合わせ1

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審神者の帰還




敵の襲撃事件の後、本丸は元の平和を取り戻した。
けれど、代わりにとでもいうように、あるべきはずの存在が消えた。
それはまるで、熱を失ってしまったような冷え冷えとした世界。
刀剣男子たちは誰もがみな、胸の中にあった何かがすっぽりと抜けてしまったような喪失感を覚えていた。
毎日当たり前に上っていた太陽の光が上らなくなってしまったような不安感、言い知れぬ虚無感が本丸を支配する。
それでも誰も取り乱す者はなく、消える間際の主の言葉を信じ、ただひたすら日々の雑務を黙々とこなしていた。

『必ず、帰ってくるから』

そんな状態が一体何日続いたのか。

死んだように静まり返っていた天守閣内の装置の群れ。
その一つにかすかな明かりが点った。続いて、あるかなきかの小さな稼働音が響く。
側にいなければ分かるはずのない変化。
そんな小さな音に誰が気づいたわけでもない。
なのに、微かな明かりが点ったのとほぼ同時に、誰もがそれを感じ取った。
間違いのない確かな知らせに顔を上げ動作を止め、そして呆然とした後、一人、また一人と確たる足取りで歩み始めた。

静まり返っていた天守閣内に復活の声を上げたのち、息を吹き返した装置はゆっくりと何かを吐き出した。
薄暗闇の中、一筋の光を差し込ませながらゲートが開く。
生み出されるようにしてゆっくりと、柔らかなラインを描く人影が現れ出でた。
その人物は長い髪を揺すると、片手の一振りでゲートを閉じる。
周囲を見回した後、特に感動した様子もなく、当たり前のように天守閣の階段を下りて行く。
階段を降り切ると、外につながる扉を開けた。
一気に差し込んだまぶしい光に目を慣らし、天守閣と本丸をつなぐ広場へ続く門を開けた。
木の軋む低い音と共に、重い扉が開いて行く。
地面の上に、ちらりと色が移った。
それは見る間に鮮やかな光景を見せて行く。
門が開ききるのと同時に、目を見開ような光景が広がっていた。
眼前にあったのは、狭い間を埋め尽くすようにして、整然と整列し膝をついて迎える一同の姿。
低く朗朗と響く声が大音声で告げる。
「主が本殿にご帰還なされた!」
思わず知らず、ひゅっと息をのんだ音はすぐさま続いた大合唱にかき消される。
「お帰りなさいませ!」
言葉と同時に彼らが一斉に顔を上げた。
嬉しそうな顔感極まった顔何かをこらえるような顔今にも泣きだしそうな顔。
どれもみな主の帰還を待ち続けた刀の化身達の心情を何よりも雄弁に語っていた。
「…っ」
彼らの主たるその人は、こみ上げた熱い塊をくっと飲み込んだ。
今にも吹き出しそうな涙を押し込め、精いっぱい笑顔を作って見せる。
「…長く留守にしてごめんなさい」
何とか上ずらずに済んだ声はいつもより少し張りが足りなかったか。
自らを鼓舞し、主たる審神者はすうっと息を吸い込んだ。
そうして
「ただいま!」
一気にためこんだものを吐き出した。
その顔には先ほどとは違う、輝かんばかりの嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。