チャージ
大輝はすずめの後ろから
ついて部屋に入った。
「遅いから少しだけな。」
部屋に入ると
さっき脱いだパジャマが
散らかっていた。
「あっさっき急いで
着替えたから…」
すずめは恥ずかしくなって
パジャマをとりあえず
布団の中に押し込む。
「大輝、今学校帰り?」
「うん。」
「遅いね…」
「オマエも疲れてるな。」
「うん…怒られてばっかりで
ちょっと凹んでた。」
「そっか…」
「でも今回復した。」
すずめが笑う。
大輝は部屋のドアの外を
キョロキョロと見渡す。
「大輝?どうかした?」
「いや、オマエのおじさんが
いないかと思って…」
「は?」「んっ」
そう言って戻ると
大輝はすずめに
キスをした。
「高速充電。」
と言って
ニヤリと笑った。
「はぁ、これで明日から
また頑張れる。」
すずめの肩に頭を乗せて
大輝が言った。
「なんかあった?」
「実験うまくいかなくて
イライラしてた。」
「学生も大変だね。」
「社会人もな。」
「でもオレは早く社会に出たいよ。」
「そう?」
「そしたらたぶん
オマエのおじさんも…」
「えっ 何?」
「なんでもねえ。
じゃあ、遅いから帰る。」
「えっ、うん…」
うんと言いながらも離れがたく
すずめは大輝の裾をつかむ。
「また会いに来るし。」
大輝はそう言って
自分の裾を掴んだ
すずめの手を握り、
「会いたかったら
素直にメールしろよ。」
と加えた。
「いいの?」
「ダメな理由があんのかよ。」
「いや、忙しいかなと。」
「忙しくて消耗するから
会ってチャージ
するんじゃねえの?」
「そうか!」
そんな風に考えたことなかった。
「私、大輝と付き合ってて
よかったなぁ。」
ボソッとすずめが言う。
大輝はまた顔が赤くなり、
「ヤメロ。帰れなくなる。」
と顔を隠した。
顔が笑うのを止められない。
「じゃあな。おやすみ。」
「おやすみ。」
そう言ってまたキスをして、
すずめの部屋を出、
「お邪魔しました。」
と小さく言って
大輝は帰っていった。
「はーい。」
と諭吉も小さく返事をして、
「馬村くんの卒業まで
あと2年か…
それまで充電だけで
もってくれるかな…」
とつぶやいた。