二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

甘くない恋の味

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 
「団蔵。仕事も終わったし、団子でも食って帰るか。
「うん。父ちゃんのおごりでね!

ある忍術学園の休校日。
団蔵は実家の加藤村に帰り、馬借の仕事の手伝いをしていた。
父と二人での配達を済ませ、帰り道に茶店に寄ることになった。

「おう。あそこだ。ここの団子がうまいんだ。若い衆と一緒だと団子十本はおかわりしやがって…。
「こんにちはー!
「て、聞けよコラ!

父が自分と息子の愛馬をつないでいる間に団蔵は先に暖簾を潜っていた。

「いらっしゃいませー。
「ぇ…?

店の中で卓に茶を運んでいた女の子が振り返った。
ここで働いている娘だとわかったが、その顔にはよく知る友人の面影があった。

「庄ちゃん?
「…はい?

思わず口から出たクラスメイトの名前に、彼女は当然ながら首を傾げた。
大きな眼、整った眉、丸みのある顔の輪郭。
腰の辺りで結わえたサラサラの黒髪や頬と唇をほんのり染める紅など、全体はどう見ても可憐な少女なのだが顔の一部ずつは団蔵と同じクラスの黒木庄左ヱ門と似たところがある。

「いや、ごめん。知り合いに似てたから…。
「そうですか。

彼女はにこりと笑った。
その笑顔も何故か庄左ヱ門と重なった。

「おーい、お客さんかい?
「あ、はい!では空いてるところにどうぞ。

奥からの声に答えて彼女は行ってしまった。
団蔵はその後ろ姿をぽーっと見ていた。

「団蔵!父ちゃん置いて、先に行くなよ。
「あーごめーん。ねえ父ちゃん。さっきの女の子、庄左ヱ門に似てなかった?
「へ?庄左ヱ門て、黒木屋さんとこの団蔵の同級生のことか?
「うん。父ちゃんこの店よく来てるんでしょ?見たことないの?
「うーん、この団子屋に女の子なんていたかなぁ。父ちゃんは知らないぞ。最近雇われたんじゃないか?

追いついた父と席に着いて、団蔵は先程の女の子の話をした。
加藤村と庄左ヱ門の実家で炭屋の黒木屋は、炭の配達の依頼も多くお互い家族ぐるみで付き合いがある。
短い休みの間しか学校のことを聞けず、なかなかクラスメイトを覚えられない父でも庄左ヱ門のことはすぐにわかった。

「庄左ヱ門君は男らしい顔付きだろ?女の子が似てたなんて…あ、でも。
「でも、何…?
「お茶をどうぞ。お団子、何人前にしますか?

例の女の子が団蔵達のいる卓に湯呑を二つ置いた。
お茶の香りと少女の声が二人を引き付ける。

「あ!あー、えーと…。父ちゃん、どうする?
「ああ。お団子二人前で。ほおー、確かに庄左ヱ門君と似てるところあるなー。
「ふふ、男に間違われたことはないですが、たまに言われます。男みたいな顔だって。
「そ…そうなんだ。

彼女は注文を届けにまた店奥に姿を消した。

「父ちゃん!女の子に向かって男の子に似てるなんて言っちゃ駄目だろー!
「お…そういうもんか?
「そういうもんなの。失礼だろ、おれが焦って損した。それで、さっき父ちゃん、何言おうとしたの?

話題をお茶が来る前に戻す。

「ん?あぁ、大したことない。庄左ヱ門君の母ちゃんのことだ。
「庄左ヱ門の母ちゃん?
「団蔵はまだ会ったことないかもしれないな。庄左ヱ門君のご両親は庄左ヱ門君にそっくりでな。父ちゃんはもちろん、母ちゃんもそっくりなんだ。母ちゃんにそっくりなら女の子に見えることもあんのかなーと思っただけだ。
「…。

団蔵は庄左ヱ門の両親と会っている。
以前トフンタケ城とスッポンタケ城の動きを調査しに一年は組で国境のタケタケ砦に行き、庄左ヱ門達が捕らえられていた庄左ヱ門の両親と乱太郎の父を助け出した時に、初めて二人の顔を見た。
確かに庄左ヱ門はこの両親以外からは産まれないだろうと納得できるくらい両親と似ていた。
特に母親は凛々しい目元だが、紛れもなく女性の顔立ちだった。
そして庄左ヱ門もその顔立ちを遺伝している。

(庄左ヱ門て、女の子に見えてもおかしくないのかな…。
作品名:甘くない恋の味 作家名:KeI