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甘くない恋の味

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「ごちそうさん、また来るよ。
「ありがとうございましたー。

団子を食べ終え店を後にする。
団蔵は店を出た後も、娘がせかせか働く姿を眺めていた。

「おい団蔵。帰るぞー。
「…、うん。
「あぁ?何してんだ、能高速号置いてくんじゃねえ!

父に言われて馬がいたことを思い出した。
慌てて愛馬の手綱を握ると、彼は不機嫌そうに息を吐いた。

「しっかりしろよ。それでも馬借の親方の息子か!
「ごめん…父ちゃん……。
「明日から学校なんだ。勉強はちゃんとするんだぞ。

空返事をして、最後にもう一度団子屋を振り返った。
彼女の姿は見えなかった。



団子屋の奥にある窓から、団蔵の後姿が離れていくのを見送る少女。
完全に姿が見えなくなったところで

「はぁー、緊張したー。

声色が少年のものに変わり、膝から地面に崩れ落ちてぺたんと尻餅をついた。
凛々しい眉がハの字に下がり、一気に冷や汗が浮かび上がった。

「まさか団蔵が来るなんて…。

団子屋の娘は、庄左ヱ門が女装して化けた姿だったのだ。
何故そんなことをしていたかというと

「でも上出来だったぞ。名前を呼ばれても反応しなかったのははなまる。
「鉢屋三郎先輩…。

女装した庄左ヱ門の後ろに、老人が一人ともう一人男が立っていた。
団子屋の男のように装っているが、その声音はいつも聞いている人のものだ。
庄左ヱ門の所属する学級委員長委員会の上級生で、五年生でありながら変装の達人で有名な鉢屋三郎である。

「たまにはこういう訓練もいいだろ?
「いきなり『変化の論』の実践訓練だなんて…。一気にハードル上げすぎです!

三郎は庄左ヱ門に自身の変身術を継がせようと少しずつ練習や訓練を実施している。
今回は忍術学園の休みを利用して、学園長の知り合いの団子屋に頼んで『変化の論』について実践形式で練習を行っていた。

「この団子屋は街からも忍術学園からも近い位置にある。それで忍術学園の生徒がよく来るらしいんだ。だからここで働いていると、誰かしら知り合いに会う可能性が高い。そこで自分を知る人が訪れても心を乱すことなく、変装した人物のまま働いていられるか、が今回の訓練のテーマというわけだ。
「ずいぶん説明くさいセリフですね…。
「なーに、この世界ではよくあることじゃないか。話を戻すよ。どんなに姿形を真似ても、元の自分が少しでも表に出てしまうとたちまち変装とばれてしまう。如何に変装した者になりきれるかで変装術の技術に差が出る。その点では山田先生の伝子さんは完璧だよね。
「でもまだまだです。女装だということがバレるんじゃないかと思って、着物の中は冷や汗でびしょびしょですし、何度もお茶や団子を置く手が震えました。
「もちろん、私もいきなり百点満点を取れとは言わないよ。かなり減点箇所は多いけど、初めてにしては十分合格点だ。この調子でがんばるんだよ。
「はい、ありがとうございます!

庄左ヱ門がお辞儀をして顔を上げた時には、三郎は既に別人に変装していた。
彼のクラスメイトで普段から変装している不破雷蔵のものだ。

「そうだ、庄左ヱ門。
「何でしょう?
「今日のことは明日、団蔵には話すのかい?
「話すつもりですが、どうしてそんなことを鉢屋先輩が聞くんですか?
「いや、なんとなく、ね…。
「……はぁ。



「あの様子からだと、団蔵は女の子になった庄左ヱ門のこと…。
作品名:甘くない恋の味 作家名:KeI