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愛を伝える。after

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視界が歪む。
嗚呼、なんてことだ。
ポタリと白いテーブルクロスに染みがついた。
私は顔を上げられずに俯いて、テーブルクロスに染みを増やしてしまう。

呆気に取られているフランシスさんの顔が浮かぶ。
突然泣き出すなんて。
それとも敏い彼ならわかっただろうか、昨日自分がイギリスさんと居たことを思い出して。

「キクちゃん…もしかして、イギリスになんか言われた?」
「そ、そんなわけ…ありません。」

イギリスさんはお優しい人だ。
だからこそ苦しい。いつも自分に笑顔で接してくれるイギリスさんを憎いと思ってしまうから。
それでも昨日見た、フランシスさんとイギリスさんの仲睦まじい姿が思い出されると胸が焦げ付く。

「あの人は、イギリスさんは…お優しいから・・・。」

フランシスさんは黙ったまま、何も言わない。
醜く嫉妬した私に呆れかえっているのかもしれない。
大人のお遊びさえまともに出来ない私を子供だと笑っているのかもしれない。

「だから、私は…」
「ねぇ。」

その声に肩が揺れる。
驚くほど冷たい声。一瞬フランシスさんの声だと思えなかった。

「キクはさぁ、あいつのことを思って泣いてるの?」
「…え?」
「キクの心の中は、あいつが巣食ってるの?」
「フランシスさん?」

「キクはイギリスのことが愛しいの?」

いつも穏やかでときに妖しく笑うフランシスさんの笑顔が、奇妙に歪んでる。

「ああ、そっかぁ。今日一日キクの元気が無かったのは、あいつのことを思ってたから、か。」

一人納得したように言うフランシスさんに、私は否というタイミングを逃した。
フランシスさんが茫然とした私を見て歪んだ笑顔のまま続ける。

「でも、駄目だよ、あいつは。いつもキクを見てる気持ち悪い変態だし。紳士の皮かぶったただの獣だ。あんなのに捕まったら最後きっとキクは骨も残らずしゃぶられる。」
「…フランシスさん。」
「ああ、勿論他の奴らも問題外だよ。誰もキクのことをわかっちゃいない。俺以外の男はね。」

フランシスさんの強い視線に私は息を飲んだ。

「キクもキクだ。もし他の男を思ってるのなら俺の誘いに乗るなよ。期待させて、浮足立ってる俺を嘲笑って楽しかった?」
「そ、そんなこと…。」
「いつだって必死なんだ。初めてキクを抱いたときは馬鹿みたいに舞い上がった。今なら死んでも良いと思うくらい嬉しくて…『キクは俺のものだっ』てそう思った。」

「そんなこと、あるわけ無いのに。」

手を握りしめ唇を噛むフランシスさんに私はどう言ったら伝わるのか悩んだ。
この、表現しようのない喜びを!

「昨日、」
「え?」
「昨日、貴方から約束をキャンセルされて、当てもなく街をぶらぶらしていたんです。」
「・・・。」
「そしたら、あるお店に貴方とイギリスさんが居るのが見えて…お二人が親密そうにお話しされているのを見て…。」
「私はてっきり、貴方とイギリスさんもそういう関係なのかと…。」



「・・・はぁ??」

たっぷり間を空けてフランシスさんが声を上げた。
「俺と、イギリスが?止めてよ、なんで?どうフィルターかけたらそう見えるわけ??」
「…腐男子フィルターです。」
「そ、そっか。って、それは無いから。」
そこまで言ってフランシスさんはピタリと動きを止めた。

「・・・都合の良いこと言っていい?」
「ええ、どうぞ。」
「イギリスに嫉妬して、元気が無かった…とか?」
当てられるとわかっていても、どうにも恥ずかしい。
私は小さく頷く。
「うっそ…マジで?」
「実にすみません。」
「嫌、ちょっと待って・・・嬉しくて言葉が出ない。」

はぁ、とフランシスさんが息を吐いた。
そして私を熱い視線で見る。
それはむず痒くて居心地が悪くて、そして、なんとも言えない歓喜に満ち溢れてる。

「ねぇ、キクちゃん聞いてくれる?」
「はい。」
「俺は、キクちゃんが好きだよ。そして、君にとって俺を唯一の人にして欲しい。」
「…貴方にとって私を唯一の人にしてくれるのなら。」
「そんなの、出会ったときからそうだよ。」
「御冗談を。」
「本当だって、軽くあしらわれたあの瞬間から俺は君に惚れたんだ。」
「それは、知りませんでした。」

「言ったでしょう、『貴方に愛を囁くことを許されたのならば、きっと天にも昇る気持ちになれる』ってね。」
「今、まさにそうだ。だから、ねぇ、美しい人。俺を拒否しないで。」

手を取られて、その甲に口づけられた。
何時ぞやのように。

「そういえば、私は愛を伝えるのはまた今度にしてくださいと言いましたっけ?」
「そうだったね。」
「あの頃はまさか、こんなに貴方に惚れるとは思いませんでした。」

「何年経っても、この枯れた身には愛の言葉は心臓に悪いですね。」

優しく微笑むフランシスさんの手を握り、ふつつか者ですがよろしくお願いいたします、と頭を下げた。


















「あ、そういえば昨日キクちゃんとの約束を破ったのはね…。」
言いかけて、止めた。
あいつの想いをわざわざ伝えるのもおかしな話だ。
「どうしました?」
「んー俺が言うのはルール違反かなぁ、って。」
「?」
首をかしげる恋人に俺は誤魔化すように笑った。


作品名:愛を伝える。after 作家名:阿古屋珠