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続々・香り

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大輝は就職してすぐ
一人暮らしを始めた。

食品の研究を行っていて、
職場に泊まり込みもよくある。

すずめとはなかなか会えないので、
休みの前の日は、
大輝のマンションに
すずめが泊まりにくるのが
通例になっていた。

すずめは大輝から
マンションの鍵をもらっていたが、
やっぱり訪れる時には
チャイムを押してしまう。

ピンポーン。

「勝手に入っていいって
 言っただろ?」

ドアを開けて大輝は
少し残念そうに言う。

「いやまだなんとなく…」

大輝は、
そう言って躊躇うすずめの腕をとり、
家の中に引き込んで
すぐに抱きしめた。

「一週間ぶりだな。」

「大輝、忙しかったもんね。」

シャワーを浴びた後なのか、
大輝からあの石けんの匂いが
いつもより少し強くした。


しばらく会えなくても、
仕事が大変でも、
この大輝の匂いを感じると、
自分が自分のとこに戻ってきた、
そういう感覚になる。

「大輝、一人暮らしでも
 あの石けん使ってるの?」

変わらない香りに安心しつつも、
ふと疑問に思ってすずめは尋ねた。

「……オマエがあの石けんが
 オレの匂いとか言うから
 変えられねえんだよ。」

「えっごめん。
 あれ、その辺で
 売ってないんだよね?」

「実家からもらってるから
 それは別にいいんだけどな。」

「おじさんのお気に入りなんだ?」

「元々は母親が気に入って
 使ってたものらしい。」

「え…」

すずめはそれを聞いて
少し切なくなった。

自分がこの香りで
大輝のことを想うように、

大輝のお父さんは、
この石けんの香りで
別れた大輝のお母さんを
想っているのだろうか。

「大輝のお父さん、お母さんのこと
 まだ好きなのかな…。」

「さあな。聞いたことねえけど。」

大輝は抱きしめた腕をゆるめ、

「メシは?」

と話を逸らした。

まだ母親のことは
タブーらしかった。

「まだだよ。おじさんに
 おかずもらってきたんだけど。
 一緒に食べよう?」

作品名:続々・香り 作家名:りんりん