タイムスリップ (1)
「与謝野さん、
足元気をつけてね。」
職場の引越しで、
すずめは月曜の朝から
ビルの五階を荷物をもって、
行ったり来たりしていた。
運動が得意なすずめも、
さすがにこの往復はくたびれる。
「あとちょっとで
休憩いれるから。」
書類の入った箱を持って、
男性社員はひょいひょいと動く。
それをみてすずめは、
足手まといになりたくないと、
ちょっと無理をしていた。
階段の途中で休憩すると、
狭いので邪魔になる。
1回荷物を置いたが、
長くは休んでいられないと、
箱を再び持ち上げた途端、
グラっとバランスを崩して、
箱ごとすずめは階段から落ちた。
あ…これは高校生の私?
大輝もいる…
ゆゆかちゃんだ。
あーカメちゃん達と
運動会楽しかったなぁ。
落ちる短い時間の間に
思い出が次々と
フラッシュバックして
そのまま意識が遠のいていった。
ズキン!
頭が疼いて
痛みで目が覚めた。
「あれ?」
すずめは自分の部屋の
ベッドの上に横になっていた。
「どうやって家に帰ったんだっけ?」
ズキン!
「痛っ!」
思わず頭を押さえると、
大きなたんこぶができていた。
「あー。そうだ。
職場の階段から落ちたんだ。」
誰かが運んでくれたに違いない。
心配してるだろうから
職場に電話しないと…
と思ったが近くに自分のスマホがない。
「職場のロッカーに
置きっぱなしだ…」
すずめは部屋を出て、
「おじさん?いないの?」
とキッチンのほうに向かった。
キッチンで諭吉が
鼻歌を歌いながら
すずめ用のごはんを作っていた。
「おじさん、電話借りていい?」
すずめが後ろから声をかけると、
「うわあ!だっ誰?」
諭吉は強盗でも見るかのように
驚愕した顔をした。
「誰って…何言ってるの?」
すずめは、諭吉のあまりのビビリように
自分の方がビックリした。
「すずめ…?」
「え?まさか顔もぶつけて
グシャグシャとか?」
諭吉の自分を認識してない口ぶりに、
すずめは慌てて洗面所の鏡で
自分の顔を確認した。
「なんだ。なんもなってないじゃん。」
ホッとしてキッチンに戻ると、
諭吉がまだ青い顔をしている。
「姉さんに隠し子?イヤイヤ…」
何かおかしなことをブツブツ言っている。
「変なおじさん。
ねぇ、電話借りていい?
職場に電話したいんだけど
スマホを置いて帰ったみたいで。」
「スマホ?職場って…ていうか誰?」
「さっきから何言ってんの?
すずめじゃん。変なおじさん。」
わけがわからない。
「すずめは今学校に行ってて…
変な冗談やめてもらえます?」
「は?おじさんこそ冗談やめてよ。
学校なんてとっくに卒業してるし。」
ふとカレンダーを見ると、
6年前の日付になっていた。
すずめは自分の目を疑った。
バッとカレンダーを確認して、
諭吉をもう一度見る。
「そう言えば、おじさんが
少しだけ若いような…」
「ナニコレ?!
おじさん聞くけど、今西暦何年?」
「え…20○○年の5月?」
すずめはサーーーーーッと
青くなった。
高2だ!
そう言えば、週末大輝と観た映画が
タイムスリップものだったっけ。
ていうか、ホントに起こるの?
こんなことってない!
なんで?どうやって?
ていうか、どうやったら元に戻るの?
パニックになってる大人のすずめを見て、
諭吉はそっと尋ねた。
「あのう…ホントにすずめ?
声は確かに同じだけど…
顔がなんか大人っぽいような…
信じ難いけどもしかして
タイムスリップとか言わないよね?」
「おじさ~~ん!!!
ホントにそうなのかなぁっ?
なんで?どうやったら戻るの?」
泣きながらすずめは
諭吉に訴えた。
「ブッ。」
「なんで笑うの~~?」
「ああ、ごめん。
信じられないけど、
あまりにすずめが変わらないから
信じられないほうが嘘っていうか。
おかしくなってしまったよ。」
「君はいくつのすずめなの?」
諭吉に聞かれ、
「22です。」とすずめは答えた。
「6年後か…。
そんなことってあるんだね。
とにかく元に戻る方法を
考えないとなぁ。」
諭吉は困って頭を掻いた。
「はっ!6年後のすずめと
今のすずめが入れ替わったり
してるんじゃないだろーね?」
「そんなのわかんないよ。
気がついたらここで寝てたし。」
諭吉が慌てて学校に電話すると、
「は?今日は風邪でお休みすると
連絡いただいてたんですが、
違うんですか?」
と先生に言われ、諭吉は
「あっそうでした。自宅の方にいます。
すみません、勘違いしてました。」
と笑って誤魔化し、電話を切ったが、
顔は笑っていなかった。
「どうなってるんだ…
すずめはどこに行ったんだ!
ホントに入れ替わったのか?」
諭吉もどうしていいかわからず
オイオイ泣き出してしまった。
おじさんは頼りにならないな…
すずめがそう思いながら
途方にくれていると、
ピンポーンとチャイムが鳴った。
「こんな時に…」
諭吉が我に返って、顔を整え、
なんとか表に出ると、
高校生の大輝が立っていた。
「ま、馬村くん!
どどどどどうしたのかな?」
「? 先生に言われて
プリント届けに来たんスけど…
アイツ、風邪大丈夫ですか?」
「えっ風邪?ああ!風邪ね。
うん、大丈夫。あっでも
明日も学校行けないかも…」
「えっそんなに悪いんですか?
メールも返ってこないし…」
高校生の大輝は本気で
心配してるようだが、
諭吉は明らかに挙動不審だ。
「いやっ悪いってことは…
ピンピンしてんだけど
学校には行けないっていうか…」
「?お見舞いしてもいいですか?」
「えっ見舞い?
いや、そう、うつるから!
やめた方がいいよ、うん。」
玄関ですったもんだしてると、
ひょこっと6年後のすずめが
顔を出した。
「おじさん、二人で考えても
わかんないから、
大輝の力借りたほうがいいんじゃない?」
「わーーーっ!すずめ!
出てくるんじゃない!」
「は?」
急にすずめに名前で呼ばれて
高校生の大輝は真っ赤になった。
が、声は同じだが
そこにいるのは
少しだけ大人っぽいすずめだった。
「…オマエ…誰…?」
少年大輝は呆然とした。
足元気をつけてね。」
職場の引越しで、
すずめは月曜の朝から
ビルの五階を荷物をもって、
行ったり来たりしていた。
運動が得意なすずめも、
さすがにこの往復はくたびれる。
「あとちょっとで
休憩いれるから。」
書類の入った箱を持って、
男性社員はひょいひょいと動く。
それをみてすずめは、
足手まといになりたくないと、
ちょっと無理をしていた。
階段の途中で休憩すると、
狭いので邪魔になる。
1回荷物を置いたが、
長くは休んでいられないと、
箱を再び持ち上げた途端、
グラっとバランスを崩して、
箱ごとすずめは階段から落ちた。
あ…これは高校生の私?
大輝もいる…
ゆゆかちゃんだ。
あーカメちゃん達と
運動会楽しかったなぁ。
落ちる短い時間の間に
思い出が次々と
フラッシュバックして
そのまま意識が遠のいていった。
ズキン!
頭が疼いて
痛みで目が覚めた。
「あれ?」
すずめは自分の部屋の
ベッドの上に横になっていた。
「どうやって家に帰ったんだっけ?」
ズキン!
「痛っ!」
思わず頭を押さえると、
大きなたんこぶができていた。
「あー。そうだ。
職場の階段から落ちたんだ。」
誰かが運んでくれたに違いない。
心配してるだろうから
職場に電話しないと…
と思ったが近くに自分のスマホがない。
「職場のロッカーに
置きっぱなしだ…」
すずめは部屋を出て、
「おじさん?いないの?」
とキッチンのほうに向かった。
キッチンで諭吉が
鼻歌を歌いながら
すずめ用のごはんを作っていた。
「おじさん、電話借りていい?」
すずめが後ろから声をかけると、
「うわあ!だっ誰?」
諭吉は強盗でも見るかのように
驚愕した顔をした。
「誰って…何言ってるの?」
すずめは、諭吉のあまりのビビリように
自分の方がビックリした。
「すずめ…?」
「え?まさか顔もぶつけて
グシャグシャとか?」
諭吉の自分を認識してない口ぶりに、
すずめは慌てて洗面所の鏡で
自分の顔を確認した。
「なんだ。なんもなってないじゃん。」
ホッとしてキッチンに戻ると、
諭吉がまだ青い顔をしている。
「姉さんに隠し子?イヤイヤ…」
何かおかしなことをブツブツ言っている。
「変なおじさん。
ねぇ、電話借りていい?
職場に電話したいんだけど
スマホを置いて帰ったみたいで。」
「スマホ?職場って…ていうか誰?」
「さっきから何言ってんの?
すずめじゃん。変なおじさん。」
わけがわからない。
「すずめは今学校に行ってて…
変な冗談やめてもらえます?」
「は?おじさんこそ冗談やめてよ。
学校なんてとっくに卒業してるし。」
ふとカレンダーを見ると、
6年前の日付になっていた。
すずめは自分の目を疑った。
バッとカレンダーを確認して、
諭吉をもう一度見る。
「そう言えば、おじさんが
少しだけ若いような…」
「ナニコレ?!
おじさん聞くけど、今西暦何年?」
「え…20○○年の5月?」
すずめはサーーーーーッと
青くなった。
高2だ!
そう言えば、週末大輝と観た映画が
タイムスリップものだったっけ。
ていうか、ホントに起こるの?
こんなことってない!
なんで?どうやって?
ていうか、どうやったら元に戻るの?
パニックになってる大人のすずめを見て、
諭吉はそっと尋ねた。
「あのう…ホントにすずめ?
声は確かに同じだけど…
顔がなんか大人っぽいような…
信じ難いけどもしかして
タイムスリップとか言わないよね?」
「おじさ~~ん!!!
ホントにそうなのかなぁっ?
なんで?どうやったら戻るの?」
泣きながらすずめは
諭吉に訴えた。
「ブッ。」
「なんで笑うの~~?」
「ああ、ごめん。
信じられないけど、
あまりにすずめが変わらないから
信じられないほうが嘘っていうか。
おかしくなってしまったよ。」
「君はいくつのすずめなの?」
諭吉に聞かれ、
「22です。」とすずめは答えた。
「6年後か…。
そんなことってあるんだね。
とにかく元に戻る方法を
考えないとなぁ。」
諭吉は困って頭を掻いた。
「はっ!6年後のすずめと
今のすずめが入れ替わったり
してるんじゃないだろーね?」
「そんなのわかんないよ。
気がついたらここで寝てたし。」
諭吉が慌てて学校に電話すると、
「は?今日は風邪でお休みすると
連絡いただいてたんですが、
違うんですか?」
と先生に言われ、諭吉は
「あっそうでした。自宅の方にいます。
すみません、勘違いしてました。」
と笑って誤魔化し、電話を切ったが、
顔は笑っていなかった。
「どうなってるんだ…
すずめはどこに行ったんだ!
ホントに入れ替わったのか?」
諭吉もどうしていいかわからず
オイオイ泣き出してしまった。
おじさんは頼りにならないな…
すずめがそう思いながら
途方にくれていると、
ピンポーンとチャイムが鳴った。
「こんな時に…」
諭吉が我に返って、顔を整え、
なんとか表に出ると、
高校生の大輝が立っていた。
「ま、馬村くん!
どどどどどうしたのかな?」
「? 先生に言われて
プリント届けに来たんスけど…
アイツ、風邪大丈夫ですか?」
「えっ風邪?ああ!風邪ね。
うん、大丈夫。あっでも
明日も学校行けないかも…」
「えっそんなに悪いんですか?
メールも返ってこないし…」
高校生の大輝は本気で
心配してるようだが、
諭吉は明らかに挙動不審だ。
「いやっ悪いってことは…
ピンピンしてんだけど
学校には行けないっていうか…」
「?お見舞いしてもいいですか?」
「えっ見舞い?
いや、そう、うつるから!
やめた方がいいよ、うん。」
玄関ですったもんだしてると、
ひょこっと6年後のすずめが
顔を出した。
「おじさん、二人で考えても
わかんないから、
大輝の力借りたほうがいいんじゃない?」
「わーーーっ!すずめ!
出てくるんじゃない!」
「は?」
急にすずめに名前で呼ばれて
高校生の大輝は真っ赤になった。
が、声は同じだが
そこにいるのは
少しだけ大人っぽいすずめだった。
「…オマエ…誰…?」
少年大輝は呆然とした。
作品名:タイムスリップ (1) 作家名:りんりん